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全日本ラリー久万高原:初日は勝田がトップ。コバライネンはレグ離脱に

©Jun Uruno / JN-1クラス首位の勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリス)

全日本ラリー選手権第3戦久万高原ラリーは、4月30日の競技初日を終えた段階でトヨタGRヤリスを駆る勝田範彦/木村裕介がJN-1クラスの首位に立っている。2番手にはシュコダ・ファビアR5の福永修/齊田美早子、3番手にはスバルWRX STIの鎌田卓麻/松本優一という順位だ。

第3戦は、第2戦唐津から約3週間というインターバルで開催された。ラリーは昨年同様、尾根を走るステージは使わず、森の中を駆けるワインディングロードが主体となる。昨年はJN-1クラスで多くの選手がタイヤの摩耗に苦しんでおり、タイヤマネージメントも重要なポイントとなる。競技初日は2SSを3回走行し、それぞれの間にサービスを挟むというスケジュール。SS距離は6SS合計で61.95kmという構成となっている。コースそのものは昨年と同様だが、前日のレッキでは降雨に見舞われ、各選手とも天候の推移をみながらスタートに備えることとなった。競技初日は一転して晴天に恵まれ、路面はところどころに濡れた箇所が残るものの、ほぼドライという状況となった。

また、JN-1クラスはそれまでの戦績に応じて性能調整が加えられるため、今大会における最低重量は下記のようになる。
前戦1位:ヘイキ・コバライネン(シュコダ・ファビアR5)1280kg
前戦2位:奴田原文雄(トヨタGRヤリス)1268kg
前戦3位:勝田範彦(トヨタGRヤリス)1268kg
前戦リタイア:福永修(シュコダ・ファビアR5)1230kg

12台がエントリーしたJN-1クラスは、コバライネンが最初のループで2連続ベストタイムをマーク。今大会も圧倒的なスピードを見せるかと思われたが、SS3でブレーキングが遅れたため、右リヤを土手にヒットしてしまう。これでパンクを喫し、サスペンションにもダメージを負うことに。続くSS4ではフィニッシュ直前の段階でサスペンションが音を上げてしまった。コバライネンはSSフィニッシュ後にマシンを修理してサービスまで戻ろうとしたが、たどり着くことができずにレグ離脱となった。

右リヤサスペンションにダメージを負ったヘイキ・コバライネン(シュコダ・ファビアR5) / Jun Uruno


これでトップに立ったのは、2番手につけていた勝田。SS3、SS4とベストタイムをマークし、2番手につける福永との差を31.1秒まで拡大している。福永も残るSS5、SS6を一番時計でまとめ、わずかながら勝田との差を詰めることに成功、24.6秒差で初日を終えた。3番手にはコンスタントにタイムを並べた鎌田が入るが、その1.5秒背後には、同じくスバルWRX STIの新井敏弘/田中直哉がつける接戦となった。前戦2位に入っている奴田原文雄/東駿吾は2度のギヤボックストラブルに見舞われ、不完全燃焼の1日に。なお、チームはSS2後とSS4後の30分サービスで2回ともギヤボックス交換を行っており、いずれも時間内にマシンを送り出している。

勝田は「今回から255幅のタイヤを使っていますが、かなりフィーリングがいいし、摩耗的にも悪くないですね。2ループ目では、ちょっとプッシュしすぎて危なかったです。2~3回スピンしかける瞬間がありました。それでも今回はSS1から出遅れず、いい走りができました。明日も新品のタイヤが使えるので、1本目でプッシュして、様子を見ながら走るつもりです」と笑顔を見せつつ、後続との差は十分ではないと警戒する。2番手の福永は「最初のループでタイヤを大外ししてしまったのが痛かったです。SS5と6はヘイキ選手がいないから出せたベストタイムですね。自分の中では、もっと行かなければならないと思っています。勝田選手とは少し離れてしまっていますが、もちろんやるだけのことはやります」と、最終日に向けて意気込みを語る。3番手につけている鎌田は「クルマの方は順調で、セットアップもいい方向です。僕らのパッケージなりには上出来かと思います。今日はタイヤを6本使ったので、明日に向けて4本残しています。1ループ目からマックスのスピードを出せている点は、ポジティブですね」と手応えを語っている。

JN-2クラス首位の中平勝也/島津雅彦(トヨタGT86 CS-R3) / RALLY PLUS

JN-2クラスは中平勝也/島津雅彦(トヨタGT86 CS-R3)がトップ。2番手にはトヨタGRスープラのAKIRA/美野友紀。栗原誠次/八塚勝博(日産フェアレディZ)は不出走となり、前戦に続き実質的に2台での争いとなった。首位の中平が6連続ベストタイムでまとめ、リードを拡大。一方のAKIRAはブレーキの違和感に悩まされた部分もありつつ、初日を終えている。

首位の中平は「1ループ目はグリップするかしないか、コーナーに入るまで分からないところがあり、かなりヒヤヒヤしながら走りました。タイヤをスムーズに使って、きれいに曲がることにトライしています。明日は今日のステージの逆走ですが、左ハンドルだと山側で見通しが悪くなるので、ブラインドになる部分には注意しながら走ります」と、初日の走りを振り返った。2番手のAKIRAは、「楽しくは走れましたが、タイムに繋がりませんね。クルマはエンジンの制御など含め、ずいぶん良くなったんですが、それを活かし切れませんでした。まだブレーキを踏んだ時に違和感があって、効く時と効かない時がある。それがちょっとストレスです」と、課題を語っている。

JN-3クラス首位の久保凜太郎/山本磨美(スバルBRZ) / Jun Uruno

前回の唐津ではトップ5が接戦を見せたJN-3クラスは今回も接戦となり、スバルBRZの久保凜太郎/山本磨美が首位に立った。2番手には新型スバルBRZの竹内源樹/木村悟士、3番手には今大会からトヨタGR86を投入した山本悠太/立久井和子、4番手にはトヨタ86の山田啓介/藤井俊樹というオーダーとなった。序盤ラリーをリードした山口清司/丸山晃助(トヨタ86)はSS4でコースアウトを喫し、リタイアとなっている。このJN-3クラスでは、SS1でトヨタ86の平川真子/藤田めぐみが横転。後続の選手にはノーショナルタイムが与えられることとなった。

6SS中3SSでベストタイムをマークした久保は「1ループ目はペース配分がうまくいかず、2ループ目、3ループ目は配分を考えて走りました。3ループ目はぎりぎりタイヤも保ちましたし、竹内選手にやられるかと思ったんですが、なんとか耐えられました」と、コメント。「久保選手が速かったですね」と語る2番手の竹内は、「序盤はウエットや泥を気にしてしまいましたが、勝負権を失ったタイム差ではありませんし、明日は明日で仕切り直しなので、コンスタントに攻めていきます」と淡々。すでに昨年の久万高原で新型BRZを投入しており、データの蓄積というアドバンテージをもって最終日に臨む。一方、このラリーがGR86のほぼシェイクダウンという状態の山本は、「若干トラブルが出たりしましたが、クルマのことは徐々に分かってきました。まだ2.4Lの旨味を出せていませんね。新型のボディ剛性をコーナーなどで活かせていません」と、3番手ながら難しい表情を見せる。

JN-4クラス首位の西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ) / RALLY PLUS

スズキ・スイフトスポーツ3台のバトルとなったJN-4クラスは、西川真太郎/本橋貴司がトップ。2番手に岡田孝一/河本拓哉、3番手に鮫島大湖/船木佐知子という順位になっている。SS1は全車がノーショナルタイムとなったため、実質的に5SSでの戦いとなったが、西川がSS5まで4連続ベストタイムをマーク。SS6では岡田が一矢報いたものの、最終的に西川が16.2秒差のリードを築いて初日を終えた。鮫島はSS3後の段階まで2番手につけていたが、ドライ路面にタイヤが合わない部分もあり、後半岡田に逆転を許してしまった格好だ。

西川は「SS6では調子に乗ってハーフスピンをしてしまいました。新しいセットアップと、クルマと自分の軽量化でバランスが良くなったと思います。今回からホイールを17インチに変更してきましたが、まだまだ使い切れていない感じですね。明日はもうちょっとペースアップして、1位を守りたいです」とコメント。2番手の岡田は「1ループ目でウエットタイヤを履いて失敗してしまいました。SS4はがむしゃらに頑張って、なんとか2番手に上がり、最後はやっとドライタイヤで元気よく走れました」と笑顔を見せた。3番手の鮫島は「セッティングを見直してきた部分が、良い方向に出ています。ドライタイヤで思うようにペースを上げられませんでした。ちょっと足踏みしてしまった感じで、悔しいですね。明日は頑張って集中していきます」と、最終日への意気込みを語った。

JN-5クラス首位の天野智之/井上裕紀子(トヨタGRヤリスRS) / Jun Uruno

JN-5クラスはトヨタGRヤリスRSの天野智之/井上裕紀子がトップ。2番手にはトヨタ・ヤリスCVTの渡部哲成/橋本美咲、3番手には、マツダRX-8の藤原直樹/中嶋健太郎がつけている。藤原はTRDヴィッツチャレンジの2003年チャンピオンで、今年からドライバーとして全日本ラリーに初参戦。このクラスもSS1ではノーショナルタイムが与えられており、5SSでバトルが展開された。ここまで2連勝の天野はSS2〜SS6まで5連続ベストタイムを刻み、2番手の渡部に17.4秒のリードを築いている。

トップを走る天野は「ちょっと自分のミスが多く、コースアウトしかけて右リヤをヒットしてしまいました。一度失速してしまうと再加速に時間がかかるので、ロスが大きいですね。明日は20km以上のステージですが、上り主体ですし、20秒以内では簡単にひっくり返ってしまう差なので、引き続き頑張ります」と、気を引き締める。2番手につける渡部は「ステージごとに、天野選手との差を縮めてきてはいるんですが、まだ先行を許していますね。明日は40kmあるので、1kmあたり0.5秒詰めることができれば、まだ勝機はあると思っています」と、逆転に向けて意気込みを見せる。3番手につけている藤原は、「路肩から掻き出された砂利がかなり出ていたので、最初は慎重に走りました。ドライ仕様に変えてから安定感が出て、抜群にクルマの動きが良くなりました。明日はタイヤをどう保たせるかですね」と、初日を振り返った。

JN-6クラス首位の海老原孝敬/蔭山恵(トヨタ・ヴィッツ) / Jun Uruno

4台がエントリーするJN-6クラスは、トヨタ・ヴィッツCVTの海老原孝敬/蔭山恵が好走を見せて、クラストップに立っている。2番手にはトヨタ・ヤリスCVTの佐藤セルゲイビッチ/保井隆宏、3番手にはマツダ・デミオの中西昌人/有川美知代という順位。4番手には同じくマツダ・デミオの鷲尾俊一/鈴木隆司が続いている。SS1はノーショナルタイムが与えられており、残る5SSを海老原が制している。

開幕戦の新城、第2戦の唐津で連勝している勢いをつなげたい海老原は、「SS2はクルマのバランスが悪かったのですが、セッティングを変えて、すごく良くなりました。明日はドライで走れそうなので、雨の中で難しかった去年よりも楽しめそうです。あとはタイヤの空気圧をどう調整するか考えています」とコメント。2番手の佐藤は「ここまで3戦とも違うコ・ドライバーで、色々と吸収させてもらっています。保井選手のアドバイスやCVTのロス、タイヤなど、それらを共有できた点は大きかったです。長いSSでもクルマの変化を感じながら走りたいです」と、充実の表情を見せた。3番手の中西は、「前半は制御が入ってしまい、エンジンが全然吹けなくなってしまいましたね。途中でセッティングを変えたのが裏目に出てしまったので、明日は思い描いたセッティングになるよう、また変更して挑みたいと思います」と、やや不完全燃焼の様子で初日を振り返った。

競技最終日は21.66kmのロングSSを、サービスを挟んで2度走行する43.32km。昨年はウエット路面での戦いとなったが、今年はドライ路面でのバトルとなりそうだ。長いステージならではのタイヤ、ブレーキのマネージメントも勝敗を分けるファクターと言えるだろう。上り主体のコースは、排気量の小さなクルマではスピードの維持という観点からも難しさが加わる。

久万高原ラリー SS6後結果
1 勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリス) 47:46.2
2 福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビアR5) +24.6
3 鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI) +42.6
4 新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI) +44.1
5 眞貝知志/安藤裕一(トヨタGRヤリス) +1:19.2
6 奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス) +1:59.5

10 久保凜太郎/山本磨美(スバルBRZ) +3:22.4
12 中平勝也/島津雅彦(トヨタGT86 CS-R3) +3:46.9
15 西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ) +4:55.2
16 天野智之/井上裕紀子(トヨタGRヤリスRS) +5:07.8
25 海老原孝敬/蔭山恵(トヨタ・ヴィッツ) +9:11.9



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