全日本ラリー選手権第4戦ラリー丹後と同じ日程で行われたJAF中部・近畿ラリー選手権に、三菱エクリプスクロスPHEVが参戦した。チームは三菱自動車の開発部門に所属する社員が有志で立ち上げたもので、完全なプライベート参戦だ。
チーム監督を務める水野豪氏は、「きっかけは、鮫島さん(JN-4クラスに出場中の鮫島大湖)からでした。PHEVはラリー北海道なら勝てる、という話になって。そのほかにも、ランサーエボリューションのホモロゲーションが切れていくなか、ラリーなどで見かけることも減り、仲間内でも寂しい思いをしている。でも出られるクルマがなかなかないと。ご存じのとおり三菱はPHEVに力を入れていますので、せっかく出るならPHEVでやろうというところから話が始まっています。最初は雑談めいたところから話が広がっていき、ドライバーの揚村(悠)君が加わったり、有志が集まってここにいるという感じです」
ラリー参戦の話がスタートしたのは2年ほど前のことだという。
「MMSP(かつて三菱自動車のワークス活動を統括したMMSP GmbH)の社長だった鳥居勲さんが退任される前、個人的に話を伺う機会がありました。個人的に国内のモータースポーツでも将来のことを考えて色々やっていきたいという思いもありましたし、単純に我々も楽しみたいという部分があって、それで少しずつ人が集まっていったかたちですね。今回のエクリプスクロスPHEVは、国内ラリーに出るのは今回が初めてですが、ポテンシャルのあるクルマだと思っています」と、水野氏。
今回クルーを務めるのは揚村悠/笠井開生。ふたりとも神戸大学自動車部のOBで、揚村はラリー初参戦だ。
「初陣です。ペースノートはコ・ドライバーの笠井に教えてもらいながら作っていって、レッキはすこし大変でしたね。ラリーは、ブレーキとタイヤが厳しくなっていく部分以外は、大きな課題なく走り切ることができました。電池については、バッテリーチャージモード(走行中/停車中にかかわらず、エンジンによる発電で駆動用バッテリーを充電可能)を活用して、毎SS電欠(出力制限走行)というような事態には陥らずに走れました」と揚村。最終的に、DE-6クラスの2位でラリーを終えている。
クルマの強みについては「見た目はSUVですが、スポーツカーに乗っている人からしても『想像できない曲り方』だと言っていただくことが多いです。『ここでアクセル踏めるんだ』というくらい、アクセルを踏んでも破綻しない。僕みたいな素人でも安全に走ることができ、なおかつ速いという印象ですね」と、揚村は説明する。ツインモーター4WDと2.4Lエンジンを組み合わせたエクリプスクロスPHEVは、ランサーエボリューションⅩで初採用された三菱独自の車両運動統合制御システムS-AWC(Super All Wheel Control)を採用。モーターによるレスポンスの良さは、姿勢制御技術の理想形とも言えるものだ。
今シーズンのプランはJAF中部・近畿ラリー選手権へのフル参戦とのこと。ランサーエボリューションが販売を終了してから7年が経ち、三菱がモータースポーツの最前線から離れてしばらくが経つが、熱い若手たちがいなくなったわけではない。ラリー北海道への参戦はあくまでも今後に向けた目標とのことだが、将来的にはエクリプスクロスPHEVが北海道のグラベルを疾走する姿を見ることができるかもしれない。