WRCサファリ・ラリーケニアのフィニッシュ後に行われたイベントカンファレンスの内容(抜粋)。昨年よりも格段にタフになった今年のサファリを制したトヨタのカッレ・ロバンペラ。周囲ではトラブルが続出するなか、チームがトップ4を独占という快挙を達成したこのイベントを、充足感に満ちた言葉で表現した。
●WRCイベント後記者会見 出席者
1位:カッレ・ロバンペラ=KR(トヨタ・ガズーレーシングWRT、トヨタGRヤリス・ラリー1)
2位:エルフィン・エバンス=EE(トヨタ・ガズーレーシングWRT、トヨタGRヤリス・ラリー1)
3位:勝田貴元=TK(トヨタ・ガズーレーシングWRT、トヨタGRヤリス・ラリー1)
ヤリ‐マティ・ラトバラ=JM(トヨタ・ガズーレーシングWRT、チーム代表)
Q:カッレ、今の気分は。ここまで見事なシーズンを送っているが、ますます調子を上げているのでは
KR:もちろん、シーズンの序盤はとてもいい流れで、今回もかなり特別。すごくタフなラリーだし、すごく有名だ。だから、ここでこのリザルトを収めることができたのは格別だし、チームもトップ4を独占したからね。
Q:今回は、どれくらいタフなチャレンジだったか
KR:昨年よりも格段にタフだったし、このイベントは昨年しか出たことがないので実際はどうなのかはよく分からないが、レッキの段階から昨年に比べても、予想していたよりさえもずっとタフだったのでかなり大変だったが、うまく凌ぎ切ったよ。
Q:最終ステージで、チームと彼らが作った強力なマシンを賞賛していたが、サルディニアの後からここまでの彼らの仕事について何か話したいことはあるか
KR:現状、僕らのマシンが最強で最速なのは明らかと言えると思うし、このような難しい状況のなかでは、常に最速である必要はないが、少なくとも僕らは強かったし、チームの全マシンが、このコンディションの中で大きなトラブルを出さなかったのは本当に素晴らしい。マシンにすごくタフだったし当たりも強いから、走りながらどこかが壊れてもおかしくないと思ってしまうほどだったが、チームのみんなは見事な仕事をしてくれた。今回、このリザルトを収められたことの鍵は、そこにあると思う。
Q:全体として、今回のサファリでの経験をどのように言い表すことができるか
KR:タフだし、このような結果でフィニッシュできた時のやりがいは大きいね。
Q:エルフィン、サファリは昨年とは違っていたがこのリザルトには満足か
EE:もちろん! かなりハッピーだよ。もちろん、もうひとつ上が良かったけれどね。それは残念ながらできなかったけれど、全体としてはハッピーだし何よりもチームのためにもね。カッレも言ったように、この素晴らしいリザルトは、サルディニアからサファリまでの短い期間でチームが迅速に対応してトラブルを解決してくれたおかげ。全車がこのイベントでトラブルなく生き残ったのだから、このリザルトの並びを見るのは本当にうれしいよ。
Q:今回、信じられないほど厳しいステージがいろいろあったが、最も大きな試練だったのは何か
EE:土曜日の午後だと思う。コンディションがとにかく厳しく、視界もすごく悪くて、コンディションを読むのも難しかった。何かがあっても良く見えなかったから、かなり大変だった。正直、そこが生き残るためのポイントだったが、それ以外のことでも最初からタフだったね。
Q:カッレをプッシュするためにどれだけリスクを負うつもりだったか。最終日はトヨタがトップ4を独占していたが
EE:一時は首位も視野に入れていたし、自分たちの考えから外れたくはないという気持ちもあったが、マシンのことも労らなくてはならなかったし、そのあたりのバランスはうまく取れていたと思う。結局、20秒程度の差がついていたということは、ほかの部分で何か差がついていたのだろう。雨が降った最初のステージでカッレが素晴らしいタイムを出した時点でおそらく自分はそのことを受け入れていたと思うし、そこから差を詰めていくのはすごく難しかった。
Q:次戦は、昨年カッレが初めてWRC優勝を飾ったエストニアだが、このイベントに向けてどんな気持ちか。ここまでペースが上がらず運も味方してくれていなかったが、今は自信は高まっているか
EE:なんでもかんでも運が悪かったことにするのはどうかと思うし、自分にも責任はあると思うが、確かにシーズンの序盤は流れをつかめなかった。でも、今はここからのラリーは違う流れになることを楽しみにしているし、エストニアはこのマシンでの初めての高速グラベルラリーだ。もちろん、テストなど準備でやることは山積みだが、自分もそれはかなり楽しんでいる。マシンのフィーリングがいいので、とてもやりやすいし、目指しているのはエストニアのコンディションでマシンがいい動きをするようにプリペアすること。そして、いいリザルトを狙いたいね。
Q:(勝田に)体力的にも精神的にも厳しく、疲労困憊のイベントとなったが、ほかのラリーと比べてどれくらいタフか。シーズンで一番タフなラリーなのだろうか
TK:マシンにとっては間違いなく一番タフなラリーだと思いますし、カッレやエルフィンも言ったように、チームはサルディニア以降、この短い間に見事にマシンを開発してくれました。本当に強いマシンに仕上げてくれたので、大きなトラブルもありませんでした。もちろん、小さなことはあったけれど、それは誰にでも起こるようなもの。ほぼ何もなかったと言っていいと思う。ドライビング面では、フェシュフェシュ(細かい砂)のセクションはドライバーにとっても本当に難しい路面で、コ・ドライバーでさえ何も見えなくて大変でした。彼がコールするノートがすべて。英語でなんと表現すればいいか分からないけど、とにかくひどいステージだったのでビッグチャレンジだった。
Q:コ・ドライバーのアーロン・ジョンストンにとっては、初めてのWRCでのポディウムとなった。最終ステージでは、これが彼の初ポディウムになることは考えていたか
TK:彼が初めてポディウムに上がれて本当にうれしく思います。素晴らしい仕事をしてくれているので。このラリーだけでなく、どのラリーでもものすごくしっかり準備してくれているので、いいリザルトで恩返しをしたかった。残念ながらここ数戦は上位に食い込める速さを出せていなかったし、ポルトガルでは目前でポディウムを逃してしまったので、やっと彼にいい思い出を残してあげることができて、少しホッとしましたし、とてもうれしい。彼はとてもいいコ・ドライバーだし、この調子で続けてさらに上を目指せるようになりたいと思います。
Q:キャリア2度目のポディウムフィニッシュを果たしたが、このほかにポディウムを狙っているイベントはどこか
TK:次のエストニアと、フィンランドは母国ラリーのようなものなので、できる限りプッシュしていくが、もちろんリスクも多い。でも、このようなリスクは好きなので楽しんでいこうと思うし、同時にプッシュする。彼(エバンス)は昨年、フィンランドで勝っているし、ふたりともめちゃめちゃ速いので、できる限り彼らに食いついていきたいが、間違いなく楽しくなると思う。
Q:1-2-3-4と素晴らしいリザルト。30年前にトヨタが達成したことを再現してみせた。このイベントで圧勝を飾った気分は
JM:何よりもまず、チームとドライバーを心から誇らしいと言いたい。ドライバーたちは、まさにこのラリーで求められる走りで素晴らしい仕事をしてくれた。ここでは最速である必要はなく、賢明な走りをしなくてはならない。このリザルトを達成するのがどれほど難しいことなのかは、お分かりだと思う。前回、それが実現したのは29年も前のこと、このサファリだった。サファリラリーはマシンにとって試練の場。自分たちのマシンが最強であることを証明できたと思う。これまでの苦労が本当に報われた。
Q:今回のラリーに向けて準備は大変だったかと思う。サルディニアから、今回のラリーに向けて、実質3、4日しか作業はなかったと思うが迅速にマシンを準備するのはどれほど難しかったか
JM:エルフィンも言ったように、チームはトラブルを抱えていて思うようなパフォーマンスができていなかったので、このイベントの前にテストを行うことがとても重要だった。このイベントを強く戦うために、シェイクダウンの間でも学んだり改良して変更しなくてはならないことがあった。一番は、エンジニアたちが、トラブルが起きないようにするために、いい対応をしてくれたことだ。
Q:昨年20年ぶりにカレンダーに戻ってきたサファリと今回を比べて、どう感じたか。
JM:昨年よりも格段に難しくなったのは、ドライバーたちのコメントや映像から見ても分かる。ソフトなグラベル、ハードなグラベル、石、泥、雨と、雪以外はすべてそろっていて、本当にタフなステージだったが、このコンディションに対応しなくてはならない。選手権には多彩なイベントが必要だし、唯一言えることは、フェシュフェシュのセクションは、ドライバーにとっても本当に大変だった。フロントバンパーでフェシュフェシュの砂がボンネットやフロントガラスに巻き上がって、前が見えなくなってしまうんだ。