WRCにタイヤを単独供給するピレリは、今週開幕する第7戦ラリーエストニアにも、スコーピオンの新グラベルタイヤ、KXを供給する。今シーズンのグラベル連戦は、このエストニアから高速ステージが舞台となるが、WRC開催3年目のこのラリーは、ドライビングにもタイヤ戦略にもミスが許されない。
今回のエストニアに設定される合計313.84km、24本のSSはスムーズグラベルの路面で、きわめてテクニカルになることも多く、大きなクレストやロングジャンプも登場する。平均速度も高いため、このようなコンディションでは、クルーたちはマシンのセットアップ同様にタイヤマネージメントにも多くの注意を払わなくてはならない。2ループ目の走行は、コンディションがさらにバンピーになる要素も加わり、よりトリッキーになる。
Scorpion KX WRC:ピレリはラリー1マシン用のグラベルラリータイヤにふたつのコンパウンドを用意。いずれも2022シーズンにアップデートを行い構造を強化し、重量とトルクが増えた最新のラリー1マシンに合わせた設計となっている。エストニアでは、スリッパリーなコンディションが多い中で最適なグリップを供給するソフトのSAが主な選択肢となる。気温が低い場合、または湿ったコンディションになった場合の選択肢として、ソフトのSAが用意される。より摩耗の激しい路面では耐久性を高めたハードのHAが代替の選択肢となる。
Scorpion K:WRC2とWRCのグラベルタイヤも、ハードとソフトの2種類のコンパウンドを用意。いずれも、KXの特徴の多くが流用されている。エストニアでは、ラリー2マシンにはK6B(ソフト)とK4B(ハード)、WRC3にはそれぞれK6(ソフト)、K4(ハード)を供給する。
テレンツィオ・テストーニ(ピレリ・ラリーアクティビティマネージャー)
「エストニアは世界選手権のカレンダーに定着しつつあり、ドライバー、マシン、そしてタイヤにとって、どれだけチャレンジングなイベントかも理解している。我々のグラベルタイヤは、ここまで3つの非常にチャレンジングなイベントを経験しており、ポルトガルで経験した未曾有の事態のような過酷なコンディションの中でも信頼性、パフォーマンス、耐久性を示してきた。特にスコーピオンのソフトコンパウンドは、ここまでケニアでしか使われていないが、さまざまな状況に対応できる、万能なタイヤであることを証明した。エストニアラリーでは、ほかのグラベル路面とは異なる試練が待ち構えているが、過酷であることに変わりはない」
ピレリが今回のエストニアに持ち込むタイヤの本数は約1700本。そのうちおよそ500本がラリー1マシン用となる。
ラリー1マシンの各ドライバーがラリー中に使用できるタイヤ本数は、シェイクダウンも含めて最大28本。2022年のグラベルラリーでの新しい規定により、ドライバーは従来の本数に加え、シェイクダウン前に、下記の通常の割り当てに加え、追加でいずれかのコンパウンド4本を選ぶことができる。
Scorpion KX WRC SA:24本
Scorpion KX WRC HA:8本
ピレリは、WRC2、WRC3を含むそのほかの4WDマシンにも計1200本のタイヤを供給する。ドライバーが使用できる最大本数は26本(シェイクダウンを含み、追加で4本を選ぶことができる)
Scorpion K6B(WRC3はK6):22本
Scorpion K4B(WRC3はK4):8本
ぴれりはさらに、このラリーエストニアが今季第4戦となるジュニアWRCにも単独供給を行っている。
Scorpion K6:22本
Scorpion K4:6本
今回のエストニアラリーで、最もステージ走行距離が長くなるのは、金曜日で8SS・139.18kmが設定され、4SSを2ループする。この日は、イベント最長のステージ、Peipsaare(24.35km)も設定される。
エストニアラリーの見どころは、AlakulaやOtepaaのステージのようにロングジャンプが多いことであり、要注意の要素のひとつでもある。特に2回目の走行になると、ステージはきわめてチャレンジングになる。土曜日のMaekulaには、スキーリゾートのKekkoseのセクションが復活する。