サポートトラックの競技参加予定(WRC+ERC):13
走行距離:1万1648km(+スウェーデンまでのフェリー)
一戦で販売されるアイテムの平均数:152
一戦でこのトラックのパーツを購入するチームの平均数:11
これはシュコダ・モータースポーツ・カスタマープログラムのサービストラックが2022年シーズンに予定している稼働状況を表す数字だ。
現在WRC2や地域ラリー選手権、各国国内選手権を席巻しているシュコダ・ファビア・ラリー2 Evoや、FIA公認取得が待たれるファビアRSラリー2など、ラリー2マシンの製作に絶大な支持を誇るシュコダ・モータースポーツ。現在はワークスチームとしての参戦活動は行わず、カスタマープログラムに専念している。この部門は昨年から独自の体制を整えるプロジェクトを開始しており、ラリー現場に部品を満載したサービストラックを持ち込み、直接、スペアパーツを販売する取り組みを始めた。シュコダ・モータースポーツでスペアパーツの受け渡しや補充を担当するカテジナ・ハーロバが、このトラックについて詳細を紹介している。
Q:シュコダモータースポーツのスペアパーツトラックのアイデアはどのように生まれたのか
最初に思いついたのは、お客様をサポートするための何か新しいサービスを提供することでした。スペアパーツを満載したラリーアシスタントトラックを現場に帯同させるというアイデアは、ラリー2マシンを製作するほかのメーカーにはないもので、この点でも独特だと言えます。このトラックは、WRCのヨーロッパラウンドとERCの一部に持ち込んでいます。シュコダのカスタマーは、これらのラリーで自分たちに足りないパーツをこのトラックから購入することができます。これによって、リタイアせずに競技を継続できたケースも多くあります。
Q:シュコダがファクトリーチームを運営してきた豊富な経験は、このプロジェクトの立ち上げに役立ったか
間違いなくそうだと言えます。トラックの装備に関しては、ファクトリーチームの競技参戦での経験が特に活かされています。もちろん、部品の在庫はファクトリーチームのものと同じ内容ではありませんが、このトラックでは、シュコダ・ファビア・ラリー2が競技で主に必要となる重要なパーツに重点を置いています。バンパー、フェンダー、ブレーキパッド、ディスクなどの消耗品も需要が高いと言えるでしょう。また、カスタマーの要望に応じたパーツを継続的に提供しているので、もしトラックにパーツがないようなことがあれば、それを確認し、次のラリーには用意しておくようにします。一方で、長期間需要がない部品は、提供対象から外すようにするなど、常に最適化を図っています。
Q:今年は何戦のラリーに帯同するのか
我々が参加を予定しているのはWRC10戦、ERC3戦です。たとえばポルトガルとサルディニアのイベントは会期が近いので、ロジスティック面では苦労する部分も多いです。しかし、この点でも、我々のロジスティックグループやスタッフの経験につながります。
Q:初めてこのトラックをラリーに持ち込んだ時のカスタマーからの反応はどうだったか
初めて持ち込んだのは、昨年のラリークロアチアでした。最初の時点から、この新しいプロジェクトはカスタマーに大きな興味を持ってもらいました。カスタマーのみなさんにとって、ラリー中に現場ですぐパーツが手に入ることの利便性に加え、重い部品を宅配便で送るコストと時間をかけなくても自分のストック用のパーツをそこで入手できるのだということにすぐに気づいてくれたのだと思います。
ほかにも利点はあります。フロントガラスのようなリスクの高い壊れやすいパーツは、このトラックから購入することで、貨物輸送業者による輸送中の破損リスクを減らすことができます。我々でさえ、こうした部品を発送する際には特殊な梱包を行いますが、それでも輸送中の破損のリスクを完全に排除することはできません。一方で我々のトラック輸送はこうしたリスクを排除しており、これがカスタマーのみなさんにご利用いただいている理由のひとつと言えるでしょう。この点については、可能な限り対応するように努めています。トラックにスペースがあれば、個別に注文を受けてラリー現場で受け渡しを行うことも可能です。
Q:トラックからパーツを購入する場合、価格に違いはあるのか
変わりません。トラックからの購入の際も、工場の倉庫に発注する場合と同価格で販売しています。
Q:実際にトラックで部品を買う際は、どのような流れになるのか
このトラックはラリー現場では常に、このプロジェクトのパートナーでもあるトクスポーツWRTチームのサービステントの隣に停めています。カスタマーは、メールやWhatsAppのアプリを使ってオンラインでパーツを注文することが可能で、我々は注文された内容を準備し、チームの代表者がトラックで商品を受け取るという流れです。
Q:トラックには何人のスタッフがいるのか
ラリーの開催地によりますが、1〜2名のクルーで運営しています。スタッフは、マシンやパーツの知識を備えた経験豊富なメカニックが担当しています。加えて、一般的なカスタマーサポートを担当する営業部のスタッフが帯同することもあり、トラックのパーツを購入したいお客様に対応します。時には、サービスの直前や最中に“これがなければラリーが続行できなくなる”という重要な部品が必要になる場面もありますが、こうした場合もスタッフは迅速に対応しなくてはなりません。
Q:このトラックの主な利益はなんだと考えているか
このプロジェクトの主な効果は、スペアパーツの販売量を増やすことではなく、我々のカスタマーへのアプローチを拡大することだと考えています。技術的なサポートだけでなく、ほかのメーカーにはないラリー現場での我々独自のアドバンテージをお客様に提供することができますし、このようなサービスやアプローチは、お客様から好評価をいただいています。今では、このトラックはサービスパークに定着し、チームもその存在を受け入れてくれています。
例えば、最近開催されたラリーでは、19クルーがシュコダ・ファビア・ラリー2で参戦しましたが、16チームが大会中にトラックで部品を購入しています。今年のWRCクロアチアでは、日本のクルー(福永修/齊田美早子)が、我々のトラックからパーツを購入できたおかげでイベントをフィニッシュすることができたと、SNSで感謝のコメントを投稿してくれました。できるだけ多くのマシンがラリーをフィニッシュできるようにすること、まさにこれこそが我々のゴールなので、本当にうれしかったですね。