WRCは9月8〜11日、選手権屈指の難関グラベルラリー、第10戦アクロポリス・ラリーギリシャを迎える。首都アテネのオリンピックスタジアムで予定されているオープニングイベントには、6万人の集客が見込まれている。
今年で50周年を迎えたWRCにとって、選手権創設の1973年にカレンダーに含まれていたアクロポリスが今季も開催されることは、シリーズの節目にふさわしいと言える。
ルーズな路面が過酷であることは言うまでもないが、さらに高い気温、ダスト、石が並ぶツイスティな道など、ドライバー陣やチーム陣には厳しい要素がふんだんに含まれているイベントだ。ラリーの本拠地はギリシャ中部のラミアに置かれるが、競技のスタートは木曜日、首都のアテネで迎え、オリンピックスタジアムでのスーパーSSを走行する。2004年のオリンピック大会のために建てられたこのスタジアムで2台並走のステージが行われるのは、2006年以来となる。
ドライバーズ選手権で首位に立つカッレ・ロバンペラは、昨年、初めて参戦したアクロポリスで優勝を飾った。今回は、ドライバーズ選手権タイトルを確定させるチャンスを握っての参戦となる。しかし、スタート順がトップとなる金曜日は、ドライになれば路面を覆うルーズなグラベルを掃除しなくてはならず、ライバルに対して不利となる。一方で、ウエットになれば一転、アドバンテージを得ることになるかもしれない。
■エントリー状況
ハイブリッドのラリー1マシンは、12台がエントリー。トヨタはロバンペラのほか、エルフィン・エバンス、エサペッカ・ラッピ、トヨタ・ガズーレーシングWRT NGからエントリーする勝田貴元と4台のトヨタGRヤリス・ラリー1を走らせる。勝田のアクロポリス参戦は今回が初めて。ラッピは、2013年に一度、参戦している。
昨年のアクロポリスではロバンペラに続く2位でフィニッシュしているヒョンデのオィット・タナックは、ここ2戦で連勝しており、アクロポリスでも勢いをつなげたいところ。チームは、ティエリー・ヌービルに加え、ダニ・ソルドをヒョンデi20 Nラリー1のドライバーに起用している。
WRC9連覇王者のセバスチャン・ローブは、Mスポーツ・フォードから今季4度目のWRC参戦に臨む。アクロポリスでは過去3回優勝を飾っており、ラリー1マシン初のラリーとなった1月のラリーモンテカルロでも優勝を飾っている。ローブとともにフォード・プーマ・ハイブリッド・ラリー1のステアリングを握るのは、クレイグ・ブリーン、ガス・グリーンスミス、ピエール・ルイ・ルーベ、地元ギリシャのジョルダン・セルデリディス。前戦でマシンをクラッシュさせたアドリアン・フルモーは、今回は競技はスタートせず、レッキのみ参加した。
■サポートカテゴリー
ラリー2マシンで戦われるWRC2は、35台が集まった。リストの筆頭は、選手権リーダーのアンドレアス・ミケルセン(トクスポーツWRT、シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)。さらに、ヨアン・ロッセル(PHスポール、シトロエンC3ラリー2)、テーム・スニネン(ヒョンデ・モータースポーツN、ヒョンデi20 Nラリー2)が続く。トクスポーツWRTからは、ニコライ・グリアジン、クリス・イングラム、エミル・リンドホルムがWRC2ジュニアタイトルの争いにも挑む。WRC2マスターカップには、ポイントリーダーのマウロ・ミーレ、アーミン・クレマー、ジャン・ミシェル・ラオーがエントリーしている。そのほか、地元ギリシャからは、ランブロス・アサナソウラス、エマノウイル・ステファニスが登場する。
このアクロポリス戦が今季最終戦となるジュニアWRCは、サミ・パヤリ、ジョン・アームストロングが同ポイントで並ぶほか、ロベルト・ビルベスもわずか1ポイント差で続いており、フォード・フィエスタ・ラリー3でのワンメイクシリーズ決戦は熾烈な争いが予想される。このアクロポリスはダブルポイントが与えられるため、ビルベスに5ポイント差のラウリ・ヨーナにも、十分にチャンピオンのチャンスが残されている。
■ラリールート
木曜日の夜にオリンピックスタジアムでのスーパーSSで開幕を迎えた後、クルーはアテネを離れて、美しいコリントス運河の入り口に近いビーチリゾート、ルートラキで夜を過ごし、金曜日の競技に備える。
金曜日は、ラミア北部を走行。Loutrakiを2回走行するほか、1回のみ走行するステージが4本設定される。この日の最終ステージは、22.97kmのBauxitesとトリッキーな構成だが、この日は日中サービスはなく、SS5の後にタイヤフィッティングゾーンのみ設定される。
土曜日はラミア西部の3本を2回ずつ走行。ループの間にはラミアでサービスを行うが、この日はイベント最長となる150km近くのステージが設定される。WRCで使用されるのは2005年以来となるPerivoli、名門ステージのTarzanが含まれるが、Pyrgosも33.20kmとロングステージの難関だ。
最終日は2002年以来となるElatia-Rengini(1回のみの走行)を挟んで、Eleftherohoriを2回走行。2回目は、パワーステージに指定されている。
■ラリーデータ
開催日:2022年9月8〜11日
サービスパーク設置場所:ラミア
総走行距離:1189.42km
総ステージ走行距離:303.30km(SS比率25.49%)
総SS数:16
■開催選手権
WRC
WRC2
WRC3
ジュニアWRC
■マニュファクチャラーズ選手権ノミネートドライバー
[トヨタ・ガズーレーシングWRT]
カッレ・ロバンペラ(#69)
エルフィン・エバンス(#33)
エサペッカ・ラッピ(#4)
[ヒョンデ・シェル・モビスWRT]
ティエリー・ヌービル(#11)
オィット・タナック(#8)
ダニ・ソルド(#6)
[Mスポーツ・フォードWRT]
クレイグ・ブリーン(#42)
セバスチャン・ローブ(#9)
ガス・グリーンスミス(#44)
■2021年アクロポリス・ラリーギリシャ最終結果
1 K.ロバンペラ/J.ハルットゥネン(トヨタ・ヤリスWRC) 3:28:24.6
2 O.タナック/M.ヤルベオヤ(ヒョンデi20クーペWRC) +42.1
3 S.オジエ/J.イングラシア(トヨタ・ヤリスWRC) +1:11.3
■近年のウイナー
2021年 K.ロバンペラ/J.ハルットゥネン(トヨタ・ヤリスWRC)
2013年 J-M.ラトバラ/M.アンティラ(フォルクスワーゲン・ポロR WRC)
2012年 S.ローブ/ D.エレナ(シトロエンDS3 WRC)
2011年 S.オジエ/J.イングラシア(シトロエンDS3 WRC)
2009年 M.ヒルボネン/J.レーティネン(フォード・フォーカスRS WRC ’09)