GCKモータースポーツは、11月12〜13日にドイツのニュルブルクリンクサーキットで開催される世界ラリークロス選手権のダブルヘッダー大会に、開発を進めていたランチア・デルタEVO-e RXを実戦デビューさせることを発表した。着手を発表してから1年、ついにランチア・デルタ・インテグラーレをベースとしたラリークロスマシンが、フル電動時代初年の最終戦で実戦に臨む。
ランチア・デルタは1980年代末から1990年代にかけてWRCを席巻し、6つのマニュファクチャラーズタイトルと4つのドライバーズタイトルを獲得した名車。80年代生まれのGCK(グリーン・コープ・コネクション)の創設者兼社長のゲラン・シシェリは、同じフランス出身のディディエ・オリオールがドライブするこのグループAマシンから大いに刺激を受けていた。2020年にシシェリがGCKにレトロフィット部門を立ち上げた時、ジョルジェット・ジウジアーロがデザインしたこの象徴的な存在であるモデルが選ばれたのは、自然の流れだった。
こうして生まれたのが、昨年のニュルブルクリンクでシシェリが世界RXの関係者に発表したランチア・デルタ・インテグラーレのGCK エクスクルーシブ-eレトロフィットの量産車、ランチア・デルタEVO-e。現在はホモロゲーションの最終段階にあり、まもなく生産開始の予定だという。
競技仕様のランチア・デルタEVO-e RXは、フランス中部のイッソワールにあるGCKパフォーマンスのワークショップで、特注の工具と設備を使って一から設計・製造。その工程には、シャシーを完成させるだけでも1200時間以上を費やしたという。
過去の栄光と未来のテクノロジーを巧みに融合させたボディはチューブラー構造で500kW(680bhp相当)を発生するふたつの最新鋭電気モーターを搭載し、電動化となってもパフォーマンスは保証される。
フリーライディングで世界チャンピオンに4度輝きラリークロスの経験も豊富なシシェリは、1年前にニュルブルクリンクで世界RXのダブルヘッダー大会にルノー・メガーヌRSで参戦し、2日目のファイナルで5位フィニッシュを果たしている。今回のデルタEVO-e RXのデビュー戦では、2023年のフルシーズン参戦に向けての準備としてステアリングを握る。
「世界RXの参戦は1年ぶり。またこの舞台に戻ることにワクワクしている」とシシェリは意気込みを見せる。
「ひとつ確かなことは、この超スペクタクルなシリーズで、我々のデルタEVO-e RXは現代のマシンたちの中でも群を抜く存在になるだろうということだ」
「9カ月にわたって見事な仕事をしてくれたGCKパフォーマンスのみんなを賞賛しなくてはならない。製作のクオリティと仕上がりのレベルは、いずれも素晴らしいもの。このランチアは、間違いなく多くの人々に感動を与えるだろう。もちろん、マシンを理解し競争力をつけるには多少の時間はかかるだろう。しかし、今はただ、サーキットに出たいという気持ちでいっぱいだ!」