開幕から11カ月近くが過ぎた2022年のWRCは、第13戦となる日本で最終戦を迎えようとしているが、白熱した戦いが予想されている。
WRCシリーズ50周年目、ハイブリッドの新規定ラリー1時代の初年となる今シーズンは、WRCのドライバーズ選手権はまだ2位が確定していないほか、WRC2タイトルもこのジャパンで決戦を迎える。日本でWRCラウンドが開催されるのは12年ぶり。待望されていたカレンダー復帰は、新型コロナウイルスの感染流行により、2年延期の末にようやく実現する。
WRCのスタードライバーやマシンを楽しみにしているのは、情熱的な日本のラリーファンだけではない。それまで北海道のグラベル路が舞台となっていたWRC日本ラウンドは今回、愛知県・岐阜県を走るツイスティなターマック路に舞台を移すため、クルーたちにも新たなチャレンジとなる。
名古屋から40kmほど南東に位置する豊田市を拠点とする今回のラリージャパンでは、これまでWRCラウンドでは一度も使われたことがないナローでテクニカルなステージが待ち受ける。山岳地帯の道は気温が低くなることや変わりやすい天気が予想されており、話題の中心となっているのはタイヤ戦略。11月10〜13日という晩秋の開催のため、スタート時間が早いステージは懸念材料となりそうだ。
ラリージャパンは、WRC50周年のシーズンの締めくくりとなるが、WRCの持続可能な現在と未来は、この第13戦で大きくクローズアップされることになる。100%化石燃料を使用しないだけでなく、ラリー1カーは電気モードのみに切り替えられるように設計されており、イベントのサービスパーク近くの指定されたハイブリッド電気自動車ゾーンでは、電気モードでの走行が義務づけられる。
ドライバーズ、コ・ドライバーズタイトルはトヨタのカッレ・ロバンペラ、ヨンネ・ハルットゥネンがそれぞれ決めているが、ドライバーズ選手権2番手は、ヒョンデのオィット・タナックとティエリー・ヌービルがまだ争いを続けている。現在、タナックは、ヌービルに21ポイント差をつけている。
WRC2タイトルは、まったく予想がつかない状況。トクスポーツWRTのアンドレアス・ミケルセンが5ポイントのリードを握って選手権首位に立っており、チームメイトのエミル・リンドホルム、ERC3冠のカエタン・カエタノビッチが同ポイントの2番手で並んでいる。しかし、ミケルセンはジャパンに出場しないため、タイトルの行方はリンドホルム、カエタノビッチの結果次第となる。
ラリージャパンでは、豊田市の太田稔彦市長が主催するサステナビリティ・フォーラムが同時に開催される。このイベントでは、地方自治体の主要メンバーが業界の専門家と会談し、モータースポーツを通じて開発されたイノベーションをどのように環境に役立てるかについて話し合うことになっている。
■エントリー状況
今回、注目を集めるのは、オィット・タナックとティエリー・ヌービル、ヒョンデのチームメイト同士によるドライバーズ選手権2位争い。ヒョンデは、i20 Nラリー1ハイブリッドのサードカーには、ダニ・ソルドを起用する。
前戦スペインでマニュファクチャラーズタイトルの獲得も決めているトヨタは、母国ラリーにロバンペラ、エルフィン・エバンス、WRCを8度制しているセバスチャン・オジエを投入。前回、日本でWRCラウンドが開催された時に勝利を収めているオジエは今回、新たなコ・ドライバーのバンサン・ランデと組んでの初めてのWRC参戦に臨む。ラリー拠点の愛知出身の勝田貴元は、アイルランド出身のアーロン・ジョンストンとともに、4台目のトヨタGRヤリス・ラリー1ハイブリッドで登場する。
Mスポーツ・フォードは、クレイグ・ブリーン、ガス・グリーンスミスのふたりが来日。ブリーンは、前戦スペインでフルタイムのWRC参戦から引退したポール・ネイグルに代わり、ジェームス・フルトンをコ・ドライバーに迎える。フォード・プーマ・ハイブリッド・ラリー1での参戦を予定していたアドリアン・フルモー、ジョルダン・セルデリディスは参戦を取り止めている。
■サポートカテゴリー
WRC2部門には、ハイレベルな17台のエントリーが揃った。カエタン・カエタノビッチ(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)とトクスポーツWRTのエミル・リンドホルム(ファビア・ラリー2 Evo)は、タイトル決戦に臨む。ヒョンデ・モータースポーツNの筆頭テーム・スニネン(ヒョンデi20 Nラリー2)は、2019年にラリージャパンのキャンディデートイベント時に参加している。オーストラリアのルーク・アネアはフォード・フィエスタ・ラリー2 MkIIで参戦。米国のショーン・ジョンストンと、PWRCタイトルを2度獲得している日本の新井敏弘はシトロエンC3ラリー2をドライブする。元F1ドライバーで、今季の全日本JN-1タイトルを獲得したヘイキ・コバライネンは、シュコダ・ファビアR5でWRCデビューに挑む。マウロ・ミーレは、WRC2マスターズカップで、今回参戦しないアーミン・クレマーのポイントを上まわることを狙う。WRCラウンドでは、開催国の強豪が世界レベルで持ち前の才能を披露し経験を積む絶好の機会となる。ラリージャパンでは、福永修(ファビアR5)、勝田範彦(トヨタGRヤリス)、新井大輝(プジョー208ラリー4)らが登場する。
■ラリールート
2022年のラリージャパンは、10日木曜日17時38分に、2.75kmのスーパーSSで開幕。金曜日朝のサービスは朝5時34分から始まり、この日は3SSを2ループする130.22 kmとイベント最長の1日となる。この日最初のステージ、Isegami’s Tunnelは、イベント最長の23.29kmが設定される。土曜日は、Nukata ForestとLake Mikawakoを2回ずつ走行。間にShinshiro Cityを1回走行する。この日は、岡崎市の乙川河川敷を走行するOkazaki Cityを2回走行して締めくくりとなる。この日のステージ走行距離は、80.48km。最終日は岐阜県にもステージが設定される。Nenoue Plateauの1回を挟んで、Asahi KougenとEna Cityを2回ずつ走行。Asahi Kougen(7.52km)の2回目の走行は、今シーズン最後のパワーステージに指定されている。
■ラリーデータ
開催日:2022年11月10日〜13日
サービスパーク設置場所:豊田スタジアム(愛知県)
総走行距離:965.25km
総ステージ走行距離:283.27km(SS比率29.35%)
総SS数:19
■開催選手権
WRC
WRC2
■マニュファクチャラーズ選手権ノミネートドライバー
[トヨタ・ガズーレーシングWRT]
カッレ・ロバンペラ (#69)
エルフィン・エバンス (#33)
セバスチャン・オジエ (#1)
[ヒョンデ・シェル・モビスWRT]
オィット・タナック(#8)
ティエリー・ヌービル(#11)
ダニ・ソルド(#6)
[Mスポーツ・フォードWRT]
クレイグ・ブリーン(#42)
ガス・グリーンスミス(#44)
■2010年ラリージャパン最終結果
1 S.オジエ/J.イングラシア(シトロエンC4 WRC) 3:10:26.4
2 P.ソルベルグ/C.パターソン(シトロエンC4 WRC) +15.7
3 J-M.ラトバラ/M.アンティラ(フォード・フォーカスRS WRC’09) +26.0
■近年のウイナー
2010年 S.オジエ(シトロエンC4 WRC)
2008年 M.ヒルボネン(フォード・フォーカスRS WRC’08)
2007年 M.ヒルボネン(フォード・フォーカスRS WRC’07)
2006年 S.ローブ(シトロエン・クサラWRC)
2016年 M.グロンホルム(プジョー307 WRC)