Mスポーツのエンジニアに聞く、ラリー用ホイールの重要性 – RALLYPLUS.NET ラリープラス
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Mスポーツのエンジニアに聞く、ラリー用ホイールの重要性

©Hiroyuki Takii

ラリー1車両の足元を支えるO・Z Racingのホイール。日本でも現代的なデザインをまとって復活した「ラリーレーシング」や、マルチスポークの「スーパーツーリズモWRC」がラリーファンの間で人気を博している。今回、Mスポーツのエンジニアを務めるジェイミー・マクミランに、ラリーにおけるホイールの重要性について聞いた。

Hiroyuki Takii


──O・Z RacingとMスポーツはどのような関係でしょうか?
僕は5年前からMスポーツに所属しているが、それよりもずっと前からの繋がりだ。今はトップレベルのラリー1だけでなく、ラリー2にもホイールを供給してもらっている。とても信頼性が高いし、作業しやすいホイールだ。特にギリシャやケニアなど、ラフで岩が多い、より厳しい環境ではその良さを発揮してくれる。負荷がかかっても耐久性がある。

──O・Z Racingからはどのようなサポートが提供されているのでしょうか?
こちらがアドバイスを求めれば、確実に情報を提供してくれる。例えば新しいプロジェクトがあって、新しいデザインが必要な場合などは随時相談している。主に我々のチームのデザイナーとの共同作業になるが、どのような条件を必要としているかを特定し、Mスポーツのデザイナー、そしてピレリタイヤとも協力してイベントそしてテストなどにおいて様々な情報提供を行いながら作業を進めている。だから密なコミュニケーションが重要になるし、適正なデザインと製品を得るために、多くの人に頼らなくてはならない。

──ラリー用のホイールに求められる特徴とは?
総じて言えば、それはラリーカーと同じような特徴だ。特に信頼性が重要になる。優勝するにはまずはフィニッシュしなくてはならないからだ。もちろん、どのモータースポーツでも言えることだが、ラリーでは特に重要になる。良い結果を出すには信頼できるマシンが必要で、どのようなダメージにも出来る限り耐えることができるホイールが必要だからだ。ひとつのリムにひびが入ったり、ダメージが与えられた場合には週末が台無しになってしまう可能性もある。パンクをするだけで表彰台が狙えなくなり、トップ10で満足しなければならない結果となってしまう。だから何かダメージが起こった場合、必ず調査を行い、必要な場合にはホイール改良のための要素とする。リムをできるだけ軽量化することも重要だ。リムにはレギュレーションによって最低重量があり、幅についてもエンジニアリング的なソリューションとしてどのようなサイズがベストかということを追求していく。そしてどの部分の重量を増やして、どこを軽量化していくかということも重要だ。O・Z Racingホイールは我々がリクエストしたことに応えてくれるし、コミュニケーションもきちんと取れている。

──今年のラリー1ではサスペンショントラベルがより短くなり、クルマの重量が重たくなったが、ホイールについてはどのような影響がありましたか?
最も影響したのは車両重量ではないかな。でもコーナリングにおける負荷よりは、岩に当たる衝撃や路面からのインパクトの方が重要で、ホイールのデザイン自体はマシンに対する負荷より衝撃に対する強度を重視されて作られている。昨年のフィエスタと今年のプーマを比較するとデザイン的にはあまり変わっていない。どちらかというと、ミシュランからピレリにタイヤメーカーが変わった時の方が大きな変更が必要になった。ピレリの方がサイドウォールがよりソフトで、より動きが多い作りになっている。そうするとリムの露出度が高くなったりするので、タイヤ構造自体がホイールのデザインに影響してくるんだ。だから、昨年から今年にかけて、我々は絶えずその作業を進めてきた。だからピレリタイヤに合わせた、細かいが多くのエボリューションが存在する。そして進化はいまでも続いている。

Hiroyuki Takii


──OZとは常に連絡を取り合って、製品を進化させていっているのですね。依頼はすぐに反映されるものなのでしょうか?
我々が発注する時には、一度に多くの本数を発注する。例えば開幕前などにはそうだね。だからマイナーチェンジの場合には、その次の発注時にそれが反映される。

──ラリージャパンには何本のホイールを持ってきていますか?
それはすごい質問だね! 計算してみなくちゃ……1台のマシンに対して多分60本くらいかな。週末を通じて28本のタイヤを使うことができる。だから少なくとも28本のリムがそのために使われる。さまざまなコンパウンドもあり、ターマックだと22本のソフト、12本のウェット、それで34本。それに28本を足すと1台に対して約60本というのが正しい数字だと思う。

──それはヨーロッパのラウンドとは同じ数字ですか?
同じ数字になる。長距離イベント用ホイールのセットがあり、同じ在庫を使っている。コンテナに入っていて、船便で世界中を移動する。すべてにタイヤを装着するだけでもとても手間の掛かる作業だ。どのタイヤを使うか、製品のコンディションなどを管理するだけでも大変だ。テストで再利用するためのものもあり、それらのロジスティクスを考えていかなくてはならない。

──日本ではOZホイールの人気が高く、多くのファンがいます。
ぜひ日本のファンには、OZレーシングのホイールを装着したプーマの格好いい走りを見てほしいね!
(Keiko Ito)



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