2022年WRC最終戦ラリージャパンでWRC2のタイトルを決めたエミル・リンドホルム/リータ・ハマライネン(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)。コ・ドライバーのハマライネンはガン闘病を乗り越えて競技に復帰し、チャンピオンに輝いた。ラリーを終えて、ハマライネンにあらためて勝利を振り返ってもらった。
──タイトル獲得、おめでとうございます。今の感想はいかがですか?
「私にとっては初めてのタイトルなので、最良の1日となりました。あまりにも素晴らしすぎて、実感がわかないほど」
──あなたは以前、ご自分がガンにかかったことを公表していらっしゃいます。そのような状況を経験し、今回のチャンピオンはより特別なものとなったのではないですか?
「病気になって健康を失うということは個人的な試練だし、その人によって受け止め方も違うものです。しかし、その経験のおかげで多くのことを学びました。確かに大変でしたが、すべてが悪いわけではありませんでした。生きているということの真価をより評価できるようになりましたし、自分がやりたいことをやる、その重要性をかみしめることができました。だから今日達成できたことが、ただただ素晴らしいのです。
2019年、私の病気が重く大変だった時には、もうここまでだと思いましたし、またラリーに戻れるほど回復できるなんて考えもしませんでした。幸運なことに、私は間違えていたのです!」
──あなたがエミルと組むことになった経緯を教えてください。
「2009年にデビューしてから多くのドライバーと組んできました。そして21年にエミルと組む機会が与えられました。私はエミルがデビューした2012年から彼のことは知っていました、彼は長年ライバルのひとりでしたからね。当時、私は女性ドライバー、ラウラ・スバントのコ・ドライバーを務めていました。また、21年のアークティックラリーにヤンネ・トゥオヒノと出場できたことも役に立ちましたし、私を育ててくれたドライバー全員に感謝しています」
──今回はタイトルがかかっていたわけですが、車内の雰囲気はいつもと違う感じでしたか?
「あくまでも、いつもと同じ感じで取り組みました。もちろん何をすべきか、どのポジションでフィニッシュすべきかは分かっていました。ワールドチャンピオンになるためには5位以上でフィニッシュすることが条件だったので、それが目標でしたし、土曜日に良いパフォーマンスを出せたことは本当に幸運でした。最終日は雨が降って、ハード4本、ウエット2本というタイヤチョイスで難しい状況でした。最後の2本でかなりタイムをロスしてしまいましたが、土曜日の結果があったから、なんとかなったのです」
──あなたがWRC2チャンピオンになる初めての女性コ・ドライバーだと思います。ラリー界において多くの女性コ・ドライバーが活躍することは、画期的なことだと思いますか?
「普通の状況であればあまりそのようなことは考えません。私はただラリーに出場しているだけで、女性であっても男性であっても関係ないと思います。でも確かに重要なことだと思います。昨年はサラ・フェルナンデス(ジャレナ・エフレンのコ・ドライバー)がERCチャンピオンになりました。私は彼女のことをよく知っていますが、とても努力家なのでタイトルを獲得して当然だと思いました。
その後、イザベル(ガルミッシュ)がセバスチャン・ローブと組んでモンテカルロで優勝しました。あれは信じられないくらい素晴らしいことだと想います。ファブリツィア・ポンス以来の歴史的な快挙だったからです。彼女たちが私にとっては『アイドル』です。もちろん、今回出場しているイルカ・ミノアもいます。ですから女性コ・ドライバーはたくさんいるのです。偉大な女性たちがとても良い結果を残しています。エンニ(マルコネン)もとても良い仕事をしていますし、女性同士で情報を共有できるのもとてもうれしいことだと思っています」
──サービスパークでも、より多くの女性が活躍しているような印象があります。
「女性が増えていますし、それはとても格好いいことだと思います。私にとって最高の瞬間は、小さな女の子が私のところに来て『あなたのようになりたいわ!』って言ってくれる時です。その子の親御さんにも『あなたはうちの娘のアイドルなんですよ!』と言われる時もそうです。彼女たちもラリーができるということを理解してくれるからです。私にとってはそれが最高のことです。私が小さな女の子や女性たちにインスピレーションを与えてあげることができればと思います。ラリーは男性だけの世界では決してありませんから」
──ラリーはモータースポーツの中で最も女性率が高い競技かもしれません。ミッシェル・ムートンと話をする機会はありましたか?
「いいえ、彼女に会えることを本当に楽しみにしています。彼女が私にとっては究極の憧れの的なので」
──本当におめでとうございました。
「ありがとうございます!」
(Keiko Ito)