■レグ2
ラリー2日目は、「Omae Suzaka(5.48km)」と「Panorama Kadokai Long(7.67km)」を、サービスを挟んで2回ずつ走行する4SS、26.30km。距離は長くないが、前日夜半から路面が凍結しているうえ、気温が高い日中は日差しによる路面状況の大幅な変化も予想されており、クルーにとってはけっして油断のできないコンディションが広がっている。
JN-1クラスは、ラリー初日の段階で鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI)が2番手以下に12.9秒のリードを確保。「最初のループが鍵になると考えていたので、今回初めてフルアタックしました」と語った鎌田は、SS8とSS9で連続ベストをたたき出してみせる。当初の想定よりも気温が上がったことで、コンディションが不安定さを増すなか、クリーンな路面を走行できた鎌田が、先頭スタートの有利を活かしたかたちだ。
一方、逆転を狙っていた福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビアR5)は、オープニングのSS8で新井敏弘/小藤桂一(スバルWRX STI)の先行を許し、3番手にポジションダウン。続くSS9では痛恨のスピンを喫して、マシンのフロントにダメージを負ってしまう。「戻ってこられただけでもラッキーだった」と、福永はがっくりと肩を落とした。この結果、午前中のループを終えて首位鎌田と2番手新井の差は30.2秒、3番手に順位を落とした福永との差は33.3秒にまで拡大している。
サービスを挟んだ後半のセクション、マシンに応急措置を施した福永はSS10とSS11でベストタイムを並べ、新井をパスして2番手に浮上。しかし、首位の鎌田は午前中に得たアドバンテージを活かし、完璧なペースを守ってトップフィニッシュ。3年ぶりに全日本ラリー選手権トップカテゴリーでの勝利を手にした。最多ベストタイム回数を記録しながらも、福永は23.0秒差の2位。40.9秒差の3位に新井が続き、4位は次戦からコバライネンにファビアR5のステアリングを託す、牧野タイソン/北川紗衣が入った。
2020年のラリー丹後以来となる勝利を手にした鎌田は、「今回は新たにスタートした『スバル・ラリーチャレンジ』から、チーム体制を一新しての参戦になりました。いつも以上にプレッシャーを感じたラリーになりましたね。ただ、チームが素晴らしいクルマを用意してくれたので、ペースをしっかりコントロールしながら戦うことができました」と、喜びを語った。
2位に終わった福永は、「正直、勝てたラリーだというのが本音です。今回は鎌田選手のステディさが優っていましたね。ただ、以前からの課題だった未舗装路での走りには、ある程度の自信を得ることができました。ターマック以外の路面でもしっかりとタイムが出せるという、糸口をつかめた気がします。シーズンオフの間にデータを分析した結果が、ベストタイムを1番多く獲れた原因だと考えています」と、悔しさのなかにも手応えを語っている。ケガから復帰戦となった新井は「まだ腕がきちんと回らなくて、どういった状況になるのか予想がつかず、少し慎重に走ることになりました。体のコンディションが万全でない状況ですし、3位で良しとしなければならないでしょう」と、納得の表情だ。
JN-2クラスは、この日も堀田信/河西晴雄(トヨタGRヤリス)がすべてのステージで、2番手の奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス)を上まわるタイムを記録。その差を1分14秒2に広げて、久々の全日本選手権勝利を手にした。さらに大きく離れて野苅家宏一/新井正和(トヨタGRヤリス)が3位を得ている。
「久々の全日本優勝でした。ラリー中は色々とドラマがありましたが、なんとか完走したうえに、優勝もできて良かったです。走り出すまではどの程度まで行けるのか想像がついていませんでしたが、奴田原選手は一般用スタッドレスタイヤを使っていたので、今回は『Omae Suzaka』など、私に有利なコンディションが多かった印象です」と、堀田。今回は新たに立ち上げられたKAYABA Rally Teamから参戦した奴田原は、「チームが立ち上がったばかりで、経験が少ないなかで頑張ってくれました。このチームの意義はラリーをとおして人材を育てていくことにあるので、あらためてとても素晴らしい試みだと感じています」と、スタートしたばかりのチームを労った。
JN-3クラスは、唯一の参戦となった上原淳/漆戸あゆみ(トヨタ86)が、後輪駆動には厳しいウインターラリーを、大きなトラブルもなく走り切った。「あまり雪道を走ったことがなくて、スパイクタイヤを履くとこんなに違うのかと新しい発見がたくさんありました。今シーズンは86で参戦できるラリーはすべて戦うつもりです。そして、丹後あたりから新型を投入できばと考えています」と、フィニッシュ後に笑顔で語った。
スズキ・スイフトスポーツ勢のみの参戦となったJN-4クラスは、初日首位の西川真太郎/本橋貴司が、この日も素晴らしいペースを披露。SS8ではスパイクタイヤの装着が許された2輪駆動のアドバンテージを活かして、ベストの鎌田に続く、総合2番手タイムをマークした。SS9ではエンジンストールなどにも見舞われながら、この日行われた4SSすべてでベストタイム。2位の筒井克彦/古川智崇との差を1分30秒以上に拡大し、開幕戦で勝利を飾った。
「昨日以上に慎重な走りを心がけたら、SS8では新井選手も上まわるタイムを出せたことに驚いています。今回のような低μ路面で経験を積むことで、多くのことを学べたと実感しています」と、西川。2位に入った筒井は「SS8は自分としてもプッシュして、いいフィーリングで走れたんですが、タイムを見たら西川選手が総合2番手で驚きました(笑)。それ以降は、慎重に走ることに切り替えました」と、西川のスピードに脱帽の様子だった。
鶴岡雄次/山岸典将(トヨタ・ヤリス)1台のみの参戦となったJN-5クラス。自分のペースを守った鶴岡が、嬉しい全日本初参戦・初勝利を手にした。「とにかく素晴らしいコ・ドライバーとチームスタッフにサポートして頂いたので、今回の参加者で一番楽しんでいた自信があります」と、喜びを語っている。
前年のチャンピオン同士の対決となったJN-6クラス。天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア)が、ラリー2日目に海老原孝敬/遠藤 彰(ホンダ・フィット)を突き放し、JN-6クラス初参戦・初勝利を手にした。
「初めてのハイブリッドでのラリーでしたから、どの程度走るのかな……と思っていました。やはり上り坂は厳しいですが、想像以上にコーナーリング性能が高くて驚きました。今回、旧型だったんですが、次戦は新型アクアを投入して比較できたらと思っています」と、天野。この日は全ステージで天野の先行を許した海老原は「完全に天野選手に走り負けてしまいましたね。ただ、フィットは作って1ヵ月のクルマなので、さらに熟成させていきたいです」と、次戦以降の挽回を誓っている。
次戦は3月3日(金)~5日(日)にかけて、愛知県・新城市を拠点として行われる第2戦「新城ラリー2023 Supported by AICELLO」が開催される。
ラリーオブ嬬恋 結果
1 鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI) 46:24.0
2 福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビアR5) +23.0
3 新井敏弘/小藤桂一(スバルWRX STI) +40.9
4 堀田信/河西晴雄(トヨタGRヤリス) +2:39.6
5 奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス) +3:53.8
6 牧野タイソン/北川紗衣(シュコダ・ファビアR5) +4:36.5
7 西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ) +5:40.9
8 天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア) +6:34.3
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12 上原淳/漆戸あゆみ(トヨタ86) +12:27.9
14 鶴岡雄次/山岸典将(トヨタ・ヤリス) +25:45.5