WRCラリースウェーデン、シェイクダウン後に行われたイベント前カンファレンスの内容(抜粋)。日本のラリーファンが待ちわびた、トヨタのマニュファクチャラーズ選手権ポイント対象のノミネートドライバーとして初めてのワークス参戦に臨む勝田貴元。これまでどおり準備もアプローチも変えず、プレッシャーは感じていないと語った。
●WRCプレイベントカンファレンス出席者
オィット・タナック=OT(Mスポーツ・フォードWRT)
勝田貴元=TK(トヨタ・ガズーレーシングWRT)
ロレンツォ・ベルテッリ=LB(トヨタ・ガズーレーシングWRT)
クレイグ・ブリーン=CB(ヒョンデ・シェル・モビスWRT)
Q:オィット、イベント前に母国エストニアのオテパアでラリーに参戦したが、いいテストができたか
OT:良かったよ。自分たちはイベント前テストは1回しか予定していなかったし、1本の道しか走れないから、あまり色々なコンディションを経験できない。でも、ラリーに参戦すれば、まあ天気は少しトリッキーだったし、雪も多すぎたかもしれないし、ちょっとチャレンジングだったが、このような環境で学べることも多い。
Q:ここのコンディションとは違っていたのか、それとも似ていた部分はあったのか
OT:かなり違っていたのは間違いないが、いいステージもあった。
Q:モンテ前よりも自信を持ってスウェーデンを迎えられたという感じか
OT:それは言いすぎかもしれないけどね! それでも、このマシンでこの路面を走るのは初めてなので、どうなるかな。
Q:シェイクダウンはナローでトリッキーだったようだが、どのように対応したか
OT:ステージ自体は、実はかなり良かった。面白い性格だったし、少しチャレンジングで湿った場所もあったりとか。だから、いいステージだったんだ。1回目の走行の方が少し面白かったが、そこからは轍が深くなった。
Q:今回の目標は。シェイクダウンのタイムは良かったようだ。ポディウムを狙えるか
OT:チャンスがあれば絶対に逃したくはないだろう。今の段階では、どんな可能性もある。自分たちがどれくらいなのか、どれくらい強く戦えるのか、ハッキリとは分からない。何本か走ってフィーリングの様子やタイムを見てから、考えるよ。
Q:昨年のジュニアWRCチャンピオン、ロベルト・ビルベスが、今回はタイトルの特典として初めてWRC2にステップアップする。昨年は彼の成長を支援して資金援助も行ったが、今回何かアドバイスは与えたか
OT:彼も自分と同じような感じじゃないかと思うよ。R5(ラリー2)ではあまり走ったことがないし、WRCで走るのは基本的には初めてだ。だから、まず自分らしく走ってみて、それから彼にどんなアドバイスが必要かを見てみる。でも今の段階で彼に必要なのは、まずは走ってみることだ。
Q:クレイグ、ヒョンデに復帰して以来、初のイベントだ。モンテではレッキに参加したが、今回は実戦に参戦だ。まず、マシンの外で観ているのはどれくらいハードだったか、そしてこの週末のチャレンジに向けて準備はできているか
CB:タフだったよ。1日の始まりは良かったよね。毎朝、ムチャクチャな時間に早起きする必要がなかった。でも、それ以外は、観ているのはしんどかったよ。でも正直、おかげで今回のラリーの準備をする時間が増えた。もちろん楽しみにしている。ジャパン以来だから、長かった。言うまでもなく、またマシンに乗るのを待ちわびていたよ。今回は、とにかくいい週末にしたい。
Q:ヒョンデに戻った感じはどうか。ハイブリッド時代になってからのチームはどう思ったか
CB:前とは違うのは当然だ。前にドライブしたi20とは、もちろん違う。規定も大きく変わった。でも正直、自信を感じているし、テストの早い段階からマシンにも快適さを感じられている。一体になっている感じがする。簡単に言えることではないし、ラリーに出て、実戦を走ってみないと、自分の競争力がどの程度なのかハッキリ分からないものだ。この週末、どこまでできるのか、ぜひ試してみたいね。今は、すべてポジティブな感じだ。
Q:雪は得意な路面だ。長い間、スウェーデンでのリザルトが自己ベストになっている。この路面は走りやすいようだ
CB:そうだね、どうしてかは自分でも分からないんだけど! 自分が育った環境ではないしね。エストニアやフィンランドに似ていても、自分が育った場所とは正反対。でも、キャリアの中で毎年、このようなタイプのイベントをたくさん走ってきたからだと思う。それができたことが幸運だったし、スポット参戦のシーズンでも、いつもこうしたラリーに一度は参戦していた。もちろん、走りやすさは感じている。ウインターラリーはほかとは違う、特別なチャレンジだ。ウインターラリーは、ひとつとして同じものはない。いつもビッグチャレンジだが、楽しんでいるよ。カレンダーで唯一のスノーラリーなので、思い切りチャンスを活かしたい。最高に楽しめると思うしね。
Q:今季はスポット参戦だが、ヒョンデではスポット参戦でいい成績を残している。今年の目標は
CB:正直、楽しむ気持ちを取り戻したい。自分は競技者だし、もちろん達成したいゴールはたくさんある。でも、50-50で成功のためが半分、楽しみのためが半分というところかな。だから、参戦している。自分はドライビングが大好きだし、ラリーマシンにいることのすべてが好きだ。それに、正直に言うと、昨年は思うように楽しめずに苦しんでいた。ものすごく辛くて立ち直るのが大変だったから、昨年末はヒストリックラリーに何度か参戦して、また笑顔でラリーマシンで走る気持ちを取り戻した。そのようなことには、なるべきではない。自分たちは世界で最高のラリーマシンをドライブしているのだし、1km1kmを楽しめるべきだ。テストやここまでの準備のプロセスを含めて今回はとにかく、フィーリングと楽しむ気持ちを取り戻したい。自分はここまでずっと笑顔でいられたし、それがこの週末に一番大事なことだ。
Q:タカ、ついにワークスチームにステップアップだ。ミートザクルーでは、この立場になってもアプローチに変わりはないと話していたが、自信は感じているか
TK:マシンも何もかも、フィーリングはいいです。もちろん、チームがいい仕事をしてくれているので、余計なプレッシャーは感じていません。自分も言ったとおり、準備はほかのラリーとすべて同じなので、つまらないプレッシャーなどは感じていません。
Q:ルートはどんな感じだったか。どのステージにもいい氷の地盤があったか
TK:全体として、コンディションはかなりいいと言えるのではないでしょうか。いくつかのステージだけは氷のベースが少なかったですが、どうでしょう、轍やルーズな雪もあるかもしれません。2本は、少し慎重にならなくてはいけないかもしれない。でも、それ以外は、速度域がすごく高く、あまりコーナーがありません。超高速区間は好きなので、いずれにしても問題ないです。
Q:今シーズン全体の目標は。ジャパンでは、2023年はもっと安定感を高めたいと話していたが、それ以外に今年目指していることは
TK:安定感のある走りを試みていますが、それでも多くのラリーと同様、チームメイトと比べるとペースが足りませんでした。基本的に、5、6番手のタイムだったので、コンスタントにペースを高めていくことが目標です。特に、トリッキーなコンディションの時ですね。たぶん、自分が改善できる部分を見つけるために、もう少しリスクを負うべきなのかもしれません。でも自信は感じていますし、マシンの動きも良く、自分の理解も深まっています。興味深い年になると思いますが、自分はベストを尽くします。
Q:ロレンツォ、今季は新しいマシンで、トヨタにスイッチしてGRヤリスをドライブする。まず、なぜ変更したのか
LB:自分はいつもフォードに乗っていたが、フォードにはエンジニアリングの面で独自の考え方やアプローチを持っているので、違うエンジニアリングのアプローチや哲学をドライブすることでどのようになるかを理解したいと思った。そして、今の世界王者マニュファクチャラーのトヨタをドライブする可能性があったということももちろん理由のひとつだ。とにかく、試して経験してみたかった。人生において、新しいことに挑戦できるのであれば、挑戦してみたいと思うものだ。だから興味があったし、やってみようと言った。そしてトヨタも、この機会を与えてくれた。だから、とてもハッピーだよ。
Q:マシンのフィーリングはどうか
LB:外から見ると、このマシンはとても機敏に見えるので、もっとナーバスなのではと恐れていた。フォードのマシンは見るからに安定感があって、扱いやすくドライブがしやすい。実際そうだからね。でも、トヨタも、機敏でありながら、こんなにドライブしやすいとは思っていなかった。これが、一番の感想だ。
Q:昨年の参戦はニュージーランドだけだった。今年は、ほかのイベントでも会えるだろうか。どのラリーに参戦したいか
LB:少なくとも、あと一戦には参戦したい。できるかどうか分からないので、ギリギリまで決まらないと思うが、自分の仕事がどれくらい忙しくなるか次第だ。でも、なんとか今年、あと一戦に出たいと思っている。もちろん、雪のスウェーデンは自分のお気に入りのコンディションなので、このイベントは好きだ。
Q:ここまで見た感じで、何がスイートスポットで、どのスタート順がベストだと思うか
OT:雪が多ければ、基本的にはかなりラクだ。走行順は後ろの方がいい。もし凍っているなら、早い方がいい。ステージごとに違う。雪の多いステージもあれば、凍ったステージもある。
CB:同感だね。ステージごとにかなり違う。例えば金曜日のループは、1本は完璧なコンディションで最高の氷だが、次の1本はあまりいい感じではなく雪に深い轍ができている。常に変化していくと思う。
Q:タカ、コンディションの面で一番タフなステージはどれか
TK:難しいですね。自分としては、SS2とSS5は、コンディションがかなりトリッキーと言えると思います。でもSS10も、2回目の走行でタイヤにかなり厳しくなるかもしれない。それ以外はなんとも。ストレートがたくさんあるところが、自分は好きです。
Q:ロレンツォ、ステージでもループでも、デイでも、一番難しくなりそうと思うところは
LB:自分が言うのもなんだけれど、ステージが修復されるのかどうか、見てみないと分からない。でも、間違いなくパワーステージは、金曜日の夕方、土曜日、日曜日と走行する部分があるので、トリッキーになると思う。路面修復が入るかどうか次第だと思う。