WRC第3戦ヨルダンラリーにおいて、セバスチャン・ローブは9ステージでトップタイムをたたき出し優勝を手にした。しかしながら最終日はいたずらな戦略合戦が選手権に影を落とす結果となった。と言うのは、デイ1の最終日にデイ2での出走順位を有利にするため、ペター・ソルベルグとダニ・ソルドの両者が故意にスローダウンしており、デイ2でも同じようなことが行なわれていたのだ。
最終日、ローブの出走順は1番手であり“路面の清掃役”を担う予定だった。しかしセバスチャン・オジエが2度もペナルティを受けたため、実際のローブの出走順は2番手となった。フォードも同じような戦略を採り、ヤリ‐マティ・ラトバラを手助けするため、ミッコ・ヒルボネンに3番手を走らせるよう巧みに工作した。
ラリー後にローブは、最終日にオジエが自分よりも先に出走したことに驚いた、と話している。
「フォードが順位操作をしてくるだろうとは思っていたが、まさか自分もそうなるとは考えもしなかった。でもチームの戦略なんだろうな。どちらも出走順を変更するために操作したんだ。僕らはこの件に関して議論を重ねたけれど、今後どうすればいいのかは結論が出なかった。オジエもミッコも“ゲーム”に翻弄されたかたちになってしまった。解決策を見つけなければならない。
確かにこのチームの戦略で、少しラクにレースできたことは認める。事実ラトバラと比べれば不利な出走順ではあったけれど、そんな配慮は本当にいらなかった。あんなマネをせずとも自力で勝つことはできたと思う。これは過信ではなくね。
結果としてヨルダンというタフなラリーで優勝できてうれしいよ。3戦中2戦を制して、25ポイントのギャップを築いた。だから次のトルコではリラックスして臨めるだろう」
一方、シトロエンのチーム代表オリビエ・ケネルは、オジエの最初のペナルティは電気的な問題が生じたためであって、戦略ではないと主張している。しかし結果としてオジエが表彰台獲得チャンスを逃してしまったことに変わりはない。
「その件について聞かれるのは20回目くらいになるよ。オジエは電気系統に問題が発生して5分のロスとなった。これがすべてさ。オジエが最初に走ることになったから、彼に路面の状態をチェックするように頼んだ。ローブの1位を守るため、そうやって彼に頼むのは不自然なことはないだろう?」とケネルは話す。
「オジエはやるべきことをやってくれたよ。彼はどうしてもチャンピオンになりたいと切望しているわけではないんだ。でも今回トップと堂々と渡り合い、能力の高さを証明してみせてくれたよ」
いくらか表現をぼやかしながら、シトロエンジュニアチームのマネージャー、ブノワ・ノジエはこのように語った。
オジエの結果は1位から10分26秒4遅れの6位。結局彼に科されたペナルティは8分50秒にもなった。
「こんなレギュレーションは受け入れられない。けれども参戦マニュファクチャラーはふたつしかなくて、僕はまだ若手だ。だからチームの命令は絶対なんだよ。でもラウンドを重ねるごとに、力をつけてきていることを証明できたと思う。うまく走れたし、速かった、そしてノーミス。僕にとってはいい週末だったよ」とオジエは述べている。