■レグ2
ラリー2日目は、前日のリピートとなる「Onikubo Rev(3.56km)」と、WRCラリージャパンでも使用されたルートの一部を走行する「Nukata(9.96km)」の2本を、県営新城総合公園でのサービスとショートステージ(SS9)を挟んでリピートする、27.64km。
JN-1クラスは、初日にヘイキ・コバライネン/北川紗衣(シュコダ・ファビアR5)が圧倒的なリードを構築。午後から雨の予報がでているなか、コバライネンは「不安定なコンディションだが、良いアドバンテージを持ってスタートできる」と語ってサービスを後にした。
ドライとなったSS7 Onikubo Rev 1では、コバライネンが余裕のベストタイムをマーク。1.2秒差の2番手タイムは、初日にタイヤのマッチングで苦しんだ鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI)。4.6秒差の3番手タイムで新井敏弘、5.8秒差の4番手タイムで新井大輝/金岡基成(プジョー208ラリー4)が続く。
多くのクルーが勝負になるとスタート前に指摘していた、この日最長の9.96kmを走るSS8Nukata 1。コバライネンはSS2番手タイムの新井大輝に20.0秒差という、圧倒的なベストタイムをたたき出す。クラス2番手につける福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)にこのステージだけで、21.8秒も差をつけた。セカンドベストの新井大輝は、ペースの上がらない新井敏弘/保井隆宏(スバルWRX STI)をとらえて3番手に順位を上げた。
サービスを挟んだ午後のセクション、予報どおり雨が降り始め、コンディションはウエットに。すでに安全圏のリードを持っているコバライネンはSS9とSS10でもきっちり一番時計を刻む。雨を予想してタイヤを温存していた鎌田は、SS10でコバライネンに0.7秒差にまで迫ると、新井敏弘を捕らえて4番手に浮上。さらに鎌田はSS11で最後の最後にコバライネンを上まわり、ついに今大会初のベストタイムを奪取。新井大輝が2輪駆動には不利なウエットコンディションに苦しむなか、鎌田が最後の最後で3位表彰台を獲得した。
雨に見舞われたSS10では、JN-1 OPクラスながらも総合4番手につけていた勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリス・ラリー2)が、ステージ終盤でクラッシュ。フロントにダメージを負って、ラリー続行を断念している。「ラリーを通じて少しずつドライビングにも慣れてきたのですが、ウエットコンディションで予想と異なる挙動に対応し切れず、クラッシュしてしまいました」と、勝田は肩を落とした。
午後のセクション、クレバーにペースをコントロールしたコバライネンは、2位の福永に大差をつけてシーズン初勝利。全日本選手権連覇に向けて、上々のシーズン滑り出しとなった。福永は最終ステージでパンクを喫しており、薄氷の2位表彰台。スバル勢最上位の鎌田には11.6秒届かなかったが、二輪駆動ながらも表彰台圏内にまで迫った新井大輝が4位。5位は勝田のGRヤリス・ラリー2同様、今回がデビュー戦のGRヤリスDATで走り切った眞貝知志/安藤裕一。初日表彰台圏内を走りながらも、ウエット路面で大きくペースを落とした新井敏弘は6位に終わった。
「2日間をとおして、とてもいいラリーが戦えたよ。シーズンオフの期間に、チームがファビアR5のセッティングを進めてくれたこと、そしてダンロップの新しいタイヤが素晴らしい性能を発揮してくれた。特に初日は自信を持って攻めることができたね。今シーズンはJN-1クラス2連覇を目指しているけど、ノリさん(勝田範彦)のトヨタGRヤリス・ラリー2がかなり強敵になりそうだ」と、コバライネンはチームへの感謝を語った。一方、待望のニューマシン投入にも関わらず、コバライネンの先行を許した福永は「午前中は逆転を狙ってウエットセッティングで走りましたが、ドライになりましたね。最後にパンクも喫しました。次こそはなんとかヘイキに迫りたいです」と、次戦での挽回を誓う。ウエットで抜群のスピードを披露し、3位に滑り込んだ鎌田は「予報どおり雨になってくれて、3位までポジションを上げることができました。今回、あらためて軽量化も含めてJP4マシンのポテンシャルを実感することができました。ニューマシンがすごく楽しみになっています」と、振り返っている。
JN-2クラスは、初日で大きなアドバンテージを得た首位の奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス)が、難しいコンディション下でも安定したペースを発揮。すべてのステージでベストタイムを並べ、JN-2クラス初勝利を飾った。前日まで2番手につけていた三枝聖弥/船木一祥(スバルWRX STI)は、最終のSS11でクラッシュ。道を塞ぐ形でストップし、以降のクルーにはノーショナルタイムが与えられることになった。この結果、山田啓介/藤井俊樹(トヨタGRヤリス)が、JN-2クラス初参戦で2位表彰台を手にした。3位には村田康介/梅本まどか(トヨタGRヤリス)が入っている。
JN-1クラスにも割って入るタイムを刻んだ奴田原は「午後から雨が降ってきて、路面状況はかなり危なかったです。ドライブしていてもドキドキしました(笑)。今回は確実に走り切るために、危ない箇所を抑えながら走りました。実際、JN-2クラス初勝利はうれしいですね。次の唐津も着実に走りたいと思っています」と、シーズン初勝利に笑顔を見せた。三枝のリタイアにより、予想外の2位表彰台を獲得した山田は「色々なことをトライしながら走ることになりました。最終日はある程度プッシュしたことで、手応えと同時に課題も見つかっています。次の唐津も、課題を持って挑みたいです」と、さらなる成長を見据えている。
JN-3クラスは、GR86をドライブする首位の長﨑雅志/大矢啓太が、同じくGR86を駆る2番手の山本悠太/立久井和子に2.4秒差をつけてスタート。このまま僅差のバトルが続くと思われたが、SS8で長﨑が駆動系のトラブルでストップ。無念のリタイアに。「正確な原因は分かりません。純粋なマシントラブルなので、シーズン序盤の段階で出たことをよしとするしかないと思います」と、長﨑はコメントを残した。ライバルのいなくなった山本は、残されたステージも安定したペースで走り切り、シーズン初勝利を飾った。こちらも僅差となった、山口清司/丸山晃助(トヨタGR86)と上坂英正/山下恭平(トヨタ86)による2番手争いは、SS10でドライに賭けた山口を、ウエットタイヤを履いた上坂がパスし、2位表彰台を決めている。久々の復帰戦となった、曽根崇仁/石田一輝(トヨタGR86)が4位で走り切った。
「まずは勝てたことがうれしいです。ただ、ライバルの長﨑選手がリタイアしてしてからは、ペースを掴むのが難しかったです。トップを走れましたが、自分としてはまだタイム的に満足していません」と、山本は待望の勝利にも反省点を語る。最後に山口を突き放した上坂は「雨が降った2回目のOnikubo Rev(SS10)で、ウエットタイヤが効いてくれました。逆転できましたし、とてもいいラリーになりましたね」と、笑顔を見せている。一方、賭けが外れてしまった山口は「最後は天候が保つと信じて、ドライセットのままでいきました。今回は負けてしまいましたが、色々と得るものが多かったラリーになりました」と、納得の表情だ。
JN-4クラスは、初日の段階で2番手以下に大差をつけた内藤学武/大高徹也(スズキ・スイフトスポーツ)が、そのままトップフィニッシュ。2年ぶりのラリー参戦を勝利で飾った。2番手でスタートした廣嶋真/廣嶋浩(トヨタ・セリカ)はSS8でコースオフし、リタイア。ベテランの岡田孝一/石田裕一(スズキ・スイフトスポーツ)が2位、昨年王者の西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)が3位を得ている。
今回からコ・ドライバーに大高徹也を迎え、復帰戦を飾った内藤は「ラリーへの復帰を決めて、昨年の11月からコツコツと準備を進めてきました。今回、予想以上に良い成果だったので、参戦予定を増やせないか考えています」と、笑顔で喜びを語った。最終SSを前に岡田との差を9.4秒にまで詰めた西川だったが、最終SSがキャンセルとなったため、順位を上げることはできなかった。「最終ステージをキロ1秒くらい詰めることができれば、逆転の可能性もありましたね。勝ちたかったですが、仕方ないです」と、西川は悔しさをのぞかせている。
最終日、波乱の展開となったのが、JN-5クラスだ。首位を走行していた大倉聡/豊田耕司(トヨタGRヤリスRS)がSS8で溝にはまり、10分以上のタイムロス。これで大倉は最後尾まで順位を落とし、鎌野賢志/坂井智幸(トヨタ・ヤリス)が、河本拓哉/柴田咲希(マツダ・デミオ)に3.1秒差をつけて首位に浮上する。ところが、河本もSS9でコースオフを喫してリタイア。ドライを想定し、ウエット路面でペースの上がらない首位鎌野の後方には、冨本諒/里中謙太(トヨタ・ヤリスCVT)が3.2秒差にまで迫ってきた。続くSS10でスピンを喫した鎌野を冨本が逆転、そのままトップでフィニッシュを果たした。2位に鎌野、3位には吉田知史/高田幸治(トヨタ・ヴィッツ)が入っている。
自身初の全日本選手権勝利を決めた冨本は「ウエット路面での経験がないので、最終セクションは様子を見ながら走ったことが、優勝に結びつきましたね。今回は本当にできたてのクルマで挑んで、CVTに慣れるところから始まりました。すごくいいフィーリングですし、さらに上のレベルでも勝てるように頑張りたいです」と、喜びを語っている。ウエットコンディションを前に勝利を逃してしまった鎌野は「単純に天候を読み間違え、結果タイヤ選択も間違えてしまいました」と、振り返っている。
JN-6クラスは、初日に圧倒的な強さでリードした天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア)が、SS8で痛恨のオーバーシュート。「ありえないミス」と天野は振り返り、ここだけで30秒近くをロス。これで首位天野と2番手海老原の差は3.8秒にまで縮まった。SS10では海老原がベストを刻み、その差は2.6秒差にまで接近。しかし、最終SSがキャンセルになったことで、天野が海老原を従えて開幕2連勝を飾っている。トヨタ・ヤリス・ハイブリッドでのデビュー戦となった清水和夫/山本磨美は、3位表彰台を獲得した。
ニューマシンでの初陣を飾った天野は「デビュー戦ですし完走できればいいと考えていましたから、勝ててラッキーでした。コンディションも難しかったのですが、新しいクルマでバタバタしてしまいましたね。ただ、今回は絶対やってはいけない大きなミス(ジャンクションのオーバーシュート)があったので、これは反省点です」と、ラリーを振り返った。僅差の2位に終わった海老原は「不完全燃焼でした。最後のSSで決着をつけたかったので、本当に残念です」と、悔しさをのぞかせている。3位で走り切った清水は「後続との差があったので、最後はコントロールしながら走りました。このクルマは以前のヤリスと比較すると、燃費が半分で楽しさが倍になります。本当に楽しいラリーカーです」と、笑顔を見せた。
次戦は4月14日(金)~16日(日)にかけて、佐賀県・唐津市を拠点として行われる第3戦「ツール・ド・九州2023 in 唐津」(ターマック)が開催される。
新城ラリー 結果
1 ヘイキ・コバライネン/北川紗衣(シュコダ・ファビアR5) 44:42.1
2 福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo) +1:50.1
3 鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI) +2:11.4
4 新井大輝/金岡基成(プジョー208ラリー4) 2:23.0
5 奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス) +2:34.5
6 眞貝知志/安藤裕一(トヨタGRヤリス) +3:24.1
7 新井敏弘/保井隆宏(スバルWRX STI) +3:36.8
8 小濱勇希/竹下紀子(トヨタGRヤリス) +4:20.2
9 内藤学武/大高徹也(スズキ・スイフトスポーツ) +5:35.9
11 山本悠太/立久井和子(トヨタGR86) +5:53.8
24 冨本諒/里中謙太(トヨタ・ヤリス) +9:29.6
26 天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア) +9:56.9