WRC9連覇を果たし、現在は世界クロスカントリーラリー選手権に参戦中のセバスチャン・ローブが今季、世界ラリークロス選手権(世界RX)にもフル参戦にすることを発表した。スペシャルONEレーシングから同郷フランスのゲラン・シシェリとともに、ランチア・デルタEvo-eをドライブする。
サーキットレースとラリーを絶妙に融合させ、ヘッドトゥヘッド方式で争うカテゴリーのラリークロスは、2023年にフル電動化となって2シーズン目を迎える。今季はアフリカラウンドの復帰のほか、選手権史上初めてのアジアラウンドとして香港での開催も予定されている。
WRCでは通算80勝をマークしているほか、最も過酷なクロスカントリーラリーイベントとして知られるダカールラリーでは2位フィニッシュを3回達成しているローブ。ル・マン24時間やレース・オブ・チャンピオンズにも参戦し、世界ツーリングカー選手権では複数回優勝、シリーズ3位に入っている。昨年は電動オフロードシリーズのエクストリームEでチャンピオンにも輝くなど、WRCの第一線から離れてもモータースポーツに精力的に参戦を続けている。
世界ラリークロスには2016〜2018年にプジョー208WRXをドライブ。36回参戦して、数々の勝利やポディウムフィニッシュを飾っている。参戦数に対するトップ3フィニッシュ率は世界RX史上3位で、最後に参戦したシーズンは、シリーズ最強豪ヨハン・クリストファーソンの連勝を唯一食い止めたドライバーとなった。
5年ぶりとなる世界RXでは、ラリーカーの象徴的な存在で多くの人に今も愛され、ローブ同様に何度もWRCを制した名車、ランチア・デルタ・インテグラーレの精神を受け継いだクルマを駆ることになる。
「ラリーでランチア・デルタの優勝を見て育った世代なので、当然、このマシンを見せられると弱い」と語るローブは現在49歳。
「でも、初めてゲランとラリークロスに一緒に参戦することについて話した時は、この人どうかしてるよ! と思った(笑)。ところがその後、昨年の12月にマシンに乗ってみたら、そのダイナミックなところにすぐに魅了された。このプロジェクトに大きな信頼を寄せているし、世界中のサーキットで勝つのが待ち切れない」
「このチャレンジへのモチベーションがすごく高まっているし、パワーがあってレースが短いラリークロスは、電動化に理想的なカテゴリーだと思う。世界RXのマシンをドライブするのはエキサイティングだし、こうした進化をアピールする場として最適じゃないかな。コースでのショーはとにかくアメージングで、これまで以上に素晴らしい戦いや豪快なアクションが見られる。まったく新しい世代のファンを魅了する素晴らしい機会を与えてもらった」
ローブが参戦するスペシャルONEレーシングは、フリースキーで4度世界王者に輝いているシシェリが立ち上げたGCKモータースポーツから生まれたチームで、2022年にドイツのニュルブルクリンクで開催された世界RX最終戦でデルタEvo-eをデビューさせた。ローブと同様、シシェリも世界RXの参戦経験を持ち、これまでに40回以上参戦してトップ5の入賞を3回果たしている。
シシェリは「自分のチームから2台のマシンを世界RXにエントリーさせ、そのうちの1台をモータースポーツ界のレジェンドに託すことができるのは、私の夢だ」と意気込みを語る。
「スペシャルONEレーシングが一流チームになるための舞台は整った。今シーズンからは、後発のマシンが世界選手権で勝つという歴史を刻むチャンスを手にすることになる」
生まれたばかりのチーム、スペシャルONEは、クラシックなスポーツカーを環境に配慮して改造して製造・販売することを目指している。GCKパフォーマンスが設計・製造した新世代の500kW(680bhp)の電動ラリークロスマシンは、F1マシンの0-100km/h加速に相当する加速能力を持つとしており、少なくとも3シーズンの世界RX参戦をコミットしている。
今季の世界RXは、6月3〜4日に開催されるポルトガルのモンタレグレラウンドで開幕を迎える。