今季初の本格ターマックラリーとなるクロアチアは、WRC単独タイヤサプライヤーのピレリにとって、Cinturato RWB WRCを実戦に投入する初めての機会となる。この新しいウエット用タイヤは、2021〜2022年シーズンで使用されたCinturato RWBの改良版で、ラリー1専用に開発されたもの。ほかのカテゴリーには、これまで使用してきたタイヤを継続して供給する。グラベル、ターマックタイヤに続いてCinturato RWB WRCをデビューさせることで、重量増とトルクアップを特徴とするハイブリッドのラリー1マシン向けのピレリの2022年モデルの改良が完了したことになる。
クロアチアの首都ザグレブ周辺のコースは数多くの落とし穴があり、ドライバー陣もその事実を承知している。その主な特徴は
・路面の種類にバラつきがあり、ステージごとにグリップに大きな差が出ることもある
・舗装路面に凹凸や風雨にさらされた区間がある
・高速でありながら狭い道が多く、道路の性質として通過後に路面が悪化する可能性がある
・断続的と同時に大量の雨が降ることがある
WRCクロアチアで使用されるタイヤ
P Zero RA WRC: ピレリのターマックタイヤは2種類のコンパウンドが用意される。クロアチア向けには、ハードコンパウンド仕様(P Zero RA WRC HA)が主な選択肢となり、摩耗の激しいドライな路面や長いステージに向いている。よりスリッパリーな性質の舗装や、雨、夜の霧などでウエットになった場合は、ソフトコンパウンド仕様(P Zero RA WRC SA)が選択肢となる。
P Zero RA: ラリー2、ラリー3マシン向けのラインナップで、WRC2、WRC3、JWRCに供給される。サイズとコンパウンドが異なり(ラリー2用はRA5A、ラリー3用はRA5)、いずれも昨年のラリースペインで実戦デビュー。クロアチアではこれが主な選択肢となる。ソフトコンパウンド仕様は、ラリー2用はRA7+B、ラリー3用はRA7+ for Rally3となる。P Zero RAには、ラリー1マシンが装着するタイヤの特徴の多くが流用されている。
Cinturato RWB: 4WDマシンのカテゴリーに投入されるウエット、ヘビーウエット用のレインタイヤ。新タイヤCinturato RWB WRCはラリー1マシンにのみ供給され、ラリー2マシンはRWBバージョンを使用、ラリー3マシンはRW1Cコンパウンドを使用する。
規定によりラリー1マシンの各ドライバーが今回のラリー中に使用できるタイヤの本数は28本までで、これはシェイクダウン用の4本を含む数。P Zero RA WRC HAの配給は28本、P Zero RA WRC SAは18本、ウエット用Cinturato RWBは12本。WRC2、WRC3、ジュニアWRC部門のマシンが使用できるのは、26本まで。配給はハードが26本、ソフトが18本、ウエットが12本となる。
テレンツィオ・テストーニ(ピレリ・ラリーアクティビティマネージャー)
「まず最初に、ピレリのラリーチームは、クレイグ・ブリーンに起きた悲劇に対して、あらためて深い哀悼の意を表します。ピレリ・スタードライバー・プログラムで育った友人でありチャンピオンを私たち全員から奪ってしまうという、人間的にもスポーツにとっても悲劇です。
クロアチアの道路は、同じレグでも路面やコンディションが大きく変化するため、タイヤマネージメントが重要なポイントになることは、ここ数年、ドライバーたちが実感していること。各クルーにとってはグリップの追求が真のチャレンジとなるが、それに加えて、昨年同様、天候という未知の要素が加わり、想定していた計画が狂ってしまうこともある。ウエットコンディションを含め、あらゆるニーズに対応したタイヤを用意しており、適切な組み合わせを選択することが勝利への鍵となる」