■レグ2
ラリー2日目は「BIZAN(6.16km)」と、前日のSS1/SS4の逆走となる「SANPOU REVERSE(11.96km)」に、サービスパークが置かれたボートレースからつでのショートステージ「BOAT RACE(0.41km)」をリピートする6SS、37.06km。
前日から降り続いていた雨は朝の段階で上がり、サービスには日が射し始めている。初日の段階で2番手の新井大輝/金岡基成(プジョー208ラリー4)に1分近いアドバンテージを築いてスタートした首位のヘイキ・コバライネン/北川紗衣(シュコダ・ファビアR5)は、予想以上にウエットが残った路面でもペースを緩めることなく、オープニングのSS7では勝田範彦/木村裕介(トヨタ・GRヤリス・ラリー2)に7.9秒差をつけるベストタイムを刻む。
様々なセッティングを試しながら走行する勝田は、鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI)をかわし、4番手にポジションアップ。3番手タイムの福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)は、新井大輝をとらえて2番手に順位を上げている。
この日最長の11.96kmを走るSS8もコバライネンが制し、勝田が11.8秒差の2番手タイムで続く。このステージ、福永はコバライネンから24.8秒差の7番手タイムと大きくペースダウン。その後方では新井大輝が再び福永を抜き返し、2番手に立った。ギャラリーが見守るSS9は福永がコバライネンの連続ベストを止め、今回初の一番時計をマークした。
午前中のセクションを終えて、首位のコバライネンと総合2番手につける新井大輝との差は1分26秒3に拡大。コバライネンが盤石の展開で首位を独走する一方、新井と3番手福永の差が1.6秒、勝田と4番手の福永の差が3.6秒、福永と5番手につける鎌田との差が9.5秒と、2番手以下の順位は最終セクションで大きく動く可能性がある。
サービスを挟み、同じステージをリピートする午後のセクション。コバライネンは乾きつつある路面をウエットタイヤで走りながら、SS10とSS11で余裕の連続ベスト。スタートから一度も首位を譲ることなく、シーズン2勝目を飾った。ライバルの4駆勢に対して、2輪駆動のプジョー208ラリー4で2番手を守っていた新井大輝だったが、ラリー終盤にかけて尻上がりにペースを上げた勝田が、SS11で新井大輝をパス。さらにSS11のスタート前、3番手につけていた福永が駆動系のトラブルによりマシンを止めており、勝田が2位表彰台を獲得。新井大輝がこちらもシーズン初となる3位表彰台を手にした。
2分10秒1差の4位は、最終のSS12でベストタイムをマークした鎌田。初日の遅れを取り戻すことができなかった新井敏弘/保井隆宏(スバルWRX STI)が2分20秒7差の5位、眞貝知志/安藤裕一(トヨタGRヤリスDAT)は、3分2秒1差の6位で走りきっている。
完璧な展開で2連勝を飾ったコバライネンは「今回、マシンバランスの素晴らしさに助けられた。この2戦、僕らはかなり強力なパフォーマンスを見せることができたね。ただ、昨日は難しいコンディションで2度のパンクがあったし、今日も午後のセクションは、ドライ路面をウエットタイヤで走ったことで、タイヤのオーバーヒートに注意する必要があった。ここで勝てたことはうれしいし、とてもいいラリーになった」と、コバライネンはフィニッシュ後に笑顔を見せた。
ニューマシンのGRヤリス・ラリー2で初表彰台を獲得した勝田は「予想もしていなかった2位表彰台になりました。ただ、これは福永選手のリタイアがあっての結果です。とにかく『完走すれば、何かを持ち帰ることができる』と考えて走りました」と、喜びを語っている。前日の2番手から、最終的に3位へと順位を落とした新井大輝は「午後はウエットと読んでいたので、乾いた路面はかなり厳しかったんですが、とにかく表彰台に上がれて良かったです。ライバルのニューマシンたちのセットアップが決まる前に、シーズンの早い段階で表彰台に上がりたいと考えていました。今回、それが上手くいってすごくうれしいです」と、納得の表情を見せている。
JN-2クラスは、初日の段階で大差をつけた首位の奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス)が、目まぐるしく変わるコンディションの中、全ステージでベストタイムを奪取。SS10、SS11では2連続で総合2番手タイムも刻み、JN-2クラス2連勝を飾った。この日も自身のペースを守って、ドライビングの習熟に努めた山田啓介/藤井俊樹(トヨタGRヤリス)が、こちらも2戦連続の2位表彰台。3番手に付けていた徳尾慶太郎/枝光展義(トヨタGRヤリス)を、SS8で横尾芳則/井手上達也がパス。その後もミスなく走り切り、うれしい3位表彰台を得ている。
2連勝を飾った奴田原は「唐津はチャレンジングで面白いステージが多いので、色々と試すことができました。これまでやってこなかった、ウエットとドライのクロスパターンも試しています。僕は常にヘイキ(コバライネン)のタイムを見ていて、キロ1.5秒で抑えたいと考えて走りました」と、JN-1クラスを見て走っていることを明かした。JN-2クラスにステップアップ後、着実に進化を続けている山田は「今日はウエットタイヤ4本で走りました。午後はドライになったことで、ウエットでは厳しかったんですが、今までの総復習のつもりでフルアタックしました。タイム的にも奴田原選手から大きくは離されなかったので、自信を持てる良い1日になりました」と、収穫を語っている。シーズン初表彰台となった横尾は「乾きつつあるコンディションに対して、徳尾選手はタイヤを外していたようで、タイムを落としていました。比較的、楽に逆転することができましたね」と、笑顔を見せている。
JN-3クラスは、初日首位の山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)が、コンディションが切り替わる難しい状況でも安定したペースで走行。前戦新城に続く2連勝を飾った。初日3番手からスタートした山口清司/丸山晃助(トヨタGR86)は2.4リッターエンジンのアドバンテージを活かし、旧型スバルBRZをドライブする鈴木尚/島津雅彦との差を詰め、SS10で逆転。その後も鈴木を突き放し、最終的に17.1秒差をつけて2位でフィニッシュした。
ターマック2連勝を飾った山本は「結果としては独走になりましたね。後ろとはマージンがあったので、抑える方向で守りの走りになりました。コンディションの変化はありましたが、ウエットタイヤで無難に走りました」と、コメント。2位を得た山口は「なんとか逆転できました。2日目にコンディションが変わって、タイヤの選択がかなり難しかったです。ウエットのセットアップでずっと走りましたが、それが結果的に良かった気がします」と、笑顔を見せた。一方、3位に終わった鈴木は「最終ループで引き離されてしまいましたね。ドライ寄りのタイヤを履くべきだったと思います。400cc差はありますが、これでなんとか一泡吹かせたいです」と、挽回を誓っている。
JN-4クラスは、初日の段階で2番手以下に十分なアドバンテージを確保した西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)が、無理のないペースで首位をキープ。スノーラリーの開幕戦嬬恋に続く、シーズン2勝目を手にした。いずれもスズキ・スイフトスポーツを駆る鮫島大湖/船木佐知子と、黒原康仁/松葉謙介による2番手争いは、この日最長の11.96kmを走る「SANPOU REVERSE 1」でベストタイムを奪った黒原が、鮫島を突き放し2番手に浮上。さらに、SS9では前田宣重/勝瀬知冬(スズキ・スイフトスポーツ)が鮫島をパスし、3番手に。最終ステージまで順位を入れ替えながら続いた前田と鮫島の3番手争いは、SS12をベストで走り切った前田が、わずか0.3秒鮫島を上回って決着。前田がシーズン初表彰台を獲得している。
2勝目を飾った西川は「前回は不甲斐ないラリーだったのですが、今回はなんとか自分の走りができました。デイ1でタイムが稼げたので、雨が降っても大丈夫なように、ウエットセットとウエットタイヤの組み合わせで走りました。ただ、午後のセクションは自分の悪い癖が出てしまったので、次戦ではなんとかしたいです」と、優勝にも反省のコメント。前日の3番手から2位に順位を上げた黒原だったが「2位に入れたので、最低限の目標はクリアできたと思います。1位を狙っていましたが、最後に西川選手に引き離されてしまいましたね」と、悔しさをのぞかせている。SS11の段階で3.2秒差あった鮫島との差を最終のスラロームステージで逆転した前田は「ジムカーナの練習をしてきましたが、今回はできすぎです。コ・ドライバーのおかげですね」と、喜びを語っている。
JN-5クラスは、初日トップの大倉聡/豊田耕司(トヨタ・GRヤリスRS)が3本のベストを含み、大きなミスなくまとめ、待望のシーズン初勝利。2位には松倉拓郎/山田真記子(トヨタ・ヤリス)。SS9で吉原將大/小藤桂一(トヨタ・ヤリスCVT)を逆転した小川剛/梶山剛(トヨタ・ヤリス)が、3位を得た。
大倉は「結果ほど、簡単な展開ではなかったです。最後までプッシュしましたし、薄氷を踏むような厳しいラリーになりました」と、待望のシーズン初勝利にも厳しいコメント。2位の松倉は「ウエットが残った最初のループは、滑る路面で上手く走ることができました。ただ、ドライアップした午後は厳しかったです。SANPOU REVERSE 2では、タイヤが持たず、軽くコースオフしたんですが、なんとか戻ってこられて良かったです」と、安堵の表情を見せた。前日の4番手から3位に順位を上げた小川は「半年ぶりのラリー参戦だったので、なんとか表彰台に上がれて良かったです。次戦以降全戦に出る予定。ただ、トップとはちょっと差がありますね」と、今後に向けて語っている。
JN-6クラスは、初日首位の天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア)が、林道ステージで5連続ベストをマーク。2位の海老原孝敬/遠藤彰(ホンダ・フィット・ハイブリッドRS)との差を1分12秒6に拡大し、シーズン3連勝を飾った。モータージャーナリストの清水和夫/山本磨美(トヨタ・ヤリス・ハイブリッド)が、シーズン初となる3位表彰台を獲得している。
盤石の強さを見せた天野は「このクルマが苦手な路面がよく分かってきました。唐津で得たデータは今後に活かせると思っています。次戦以降はセットアップを煮詰めて、今回苦手だった場所もしっかり走れるようにしたいですね。クルマ的にはまだまだ進化しそうです」と、さらなるスピードアップを宣言。海老原は「天野選手に置いていかれてしまいました。次戦に向けてしっかり対策したいです」と、打倒天野を誓う。3位表彰台を得た清水は「同じ唐津のステージでも、色々と微妙に違っていました。経験がないと、どこまで攻めていいのか分からない。タイヤのマッチングも含めて、いい勉強になました」と、収穫を語っている。
ツール・ド・九州2023 in 唐津 最終結果
1 ヘイキ・コバライネン/北川紗衣(シュコダ・ファビアR5) 1:06:45.1
2 勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリス・ラリー2) +1:55.5
3 新井大輝/金岡基成(プジョー208ラリー4) +2:01.2
4 鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI) +2:10.1
5 奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス) +2:11.7
6 新井敏弘/保井隆宏(スバルWRX STI) +2:20.7
7 眞貝知志/安藤裕一(トヨタGRヤリスDAT) +3:02.1
8 柳澤宏至/竹下紀子(トヨタGRヤリス) +3:17.0
14 山本悠太/立久井和子(トヨタGR86) +6:13.6
16 西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ) +6:33.5
19 大倉聡/豊田耕司(トヨタGRヤリスRS) +7:11.6
32 天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア) +8:46.0