■レグ2
5月7日(日曜日)に行われたラリー2日目は「ハイランドパークみかわ」に置かれたサービスパークを拠点に、5.22kmの「西谷(SS5/SS7)」と12.91kmの「松木(SS6/SS8)」をループする4SS、36.26km。いずれも、前日使用したステージを逆方向に走行する。高低差は少ないものの、どちらのステージもフィニッシュに向かって下り方向となる。ステージ内はしっかりと整備されているが、路面には苔が乗っている箇所もあるうえ、前日のインカットによる砂利が散乱するコーナーがいくつかありそうだ。
前日から降り続く雨により路面はフルウエット。スタートの段階で雨は、強く降ったり弱くなったりを繰り返している。雨が小康状態で走ったオープニングのSS5、ヘイキ・コバライネン/北川紗衣(シュコダ・ファビアR5)は勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリス・ラリー2)に1.7秒、鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI)に4.9秒差のベストタイムをマーク。コバライネンは雨が激しく打ち付けたSS6でも、勝田に6.2秒、鎌田に10.8秒差の連続ベストを刻み、盤石の状態で首位をキープする。
SS6ではクラス4番手を走行していた眞貝知志/安藤裕一(トヨタGRヤリスGR4ラリーDAT)が、エンジンのパワーダウンによりストップ。この結果、福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)がクラス4番手、新井敏弘/保井隆宏(スバルWRX STI)がクラス5番手と、ひとつずつ順位を上げた。
サービスを挟んだ午後のセクション、依然として時折強く雨がコースを打ち付けるなか、コバライネンは残された2本のステージでも連続ベストを刻み、全SSを完全制覇。右リヤホイールにダメージを負いながらも、圧倒的な強さでターマック3連勝を飾った。2位はこの日行われたすべてのSSでコバライネンに続くタイムを並べた勝田。3位には2日間をとおして安定したペースを刻んだ鎌田が入っている。
「何かに接触した感覚はなかったけど、フィニッシュしたらホイールにダメージを負っていたんだ(笑)。一切ミスもなかったし、とてもいいラリーだった。今朝は路面が乾いていることを期待して、ハードコンパウンドで走ったけど、少しアグレッシブなチョイスだったね。午後は2本のソフトコンパウンドをクロスで投入した。バランスもいいし、とてもいいフィーリングだったよ」と、コバライネンは笑顔でラリーを振り返った。
「唐津と久万高原の間に、GRヤリス・ラリー2に乗れる機会をつくってもらったことが大きかったです。フィンランドから来日したTGRのエンジニアからのアドバイスもあって、ウエットの難しい路面でしたが、しっかりプッシュもできました」と、勝田は納得の表情を見せている。
今季3度目の表彰台となる鎌田は「タイヤも良かったですし、クルマに助けられたラリーでしたね。前よりも安定してスピードを出すことができたと思います」と、コメント。今回のラリーで、初めてタイヤへのカットを導入した福永は試行錯誤もありながら、2分29秒5差のクラス4位。タイヤと路面のマッチングに苦しんだ新井敏弘は、2分51秒1差のクラス5位に入っている。
JN-2クラスは、スタートから首位をキープしていた奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス)が、SS6のギャップでオイルパンにダメージを負ってしまう。ステージを走り切った奴田原は、サービスでマシンを修復したものの、依然としてエンジンのパワーダウンに悩まされており、SS7でSS6に続くベストタイムを刻んだ山田啓介/山本祐也(トヨタGRヤリス)がついに首位に立った。
山田は最終SSもベストでまとめ、自身初となるJN-2クラス優勝を獲得。昨年、全日本ラリー選手権にデビューし、今年から4WDターボマシンにステップアップした山田は「めちゃくちゃうれしいです。最高です。今日の最初の3本はペースを少し上げて、大きなミスをしないように、ノート、マシン、チームを信じて走りました。最終SSを前に奴田原選手とは2.2秒差で、途中でスピンしかけてしまってダメだと思ったのですが、そこからコ・ドライバーとふたりで気持ちを入れ替えて、すべてを賭けるつもりでフルアタックをしました」と、フィニッシュ後に喜びを語った。
2位に終わった奴田原は「午前中のトラブルは解決したんですが、エンジンが吹けないのは解決できなかったです。山田選手は本当に速かったので、うかうかしていられないですね」と、山田のスピードを讃えた。
徳尾慶太郎/石田一輝(トヨタGRヤリス)、三枝聖弥/鮫島大湖(スバルWRX STI)、横尾芳則/木村悟士(トヨタGRヤリス)による僅差の3番手争いは、最終SSで三枝を逆転した横尾が3位表彰台を手にした。今回でKYBチームからの参戦がひと区切りとなる横尾は3位表彰台に「とりあえずギリギリの仕事はできました(笑)。丹後は別のドライバーにバトンタッチします」と、安堵の表情で語っている。
JN-3クラスは、初日2番手につけていた貝原聖也/西﨑佳代子(トヨタGR86)が、SS6のスタートから6km地点の右コーナーでアウト側にはらみ側溝にスタック。マシンにダメージはなかったものの、そこから脱出できずリタイアに終わった。首位スタートの山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)は、午前中のSS5とSS6でベストを刻むと、午後は安全なペースでしっかり走り切り、新城、唐津に続く3連勝。貝原のリタイアでポジションを戻した曽根崇仁/澤田耕一(トヨタGR86)が2位表彰台。3位に山口清司/丸山晃助(トヨタGR86)、4位に長﨑雅志/大矢啓太(トヨタGR86)が入った。
チームメイトの山田がJN-2クラスを制したことで、山本が所属するK-oneチームは2クラスを制覇。自身もターマック3連勝を飾った山本は「無事に勝つことができました。唐津に引き続き天気が読めないラリーでしたが、1日目にタイヤ選択が当たってマージンを稼ぐことができましたね。そのまま2日目も逃げ切って、作戦どおりといった感じです」と、喜びのコメント。2位に入ったベテランの曽根は「SS1で離されてしまったことが、最後まで響きましたね。最終日はコンディションも悪かったですし、フィニッシュに帰ってくるのが第一目標だったので良かったです。丹後はドライで走りたいですね(笑)」と、笑顔で振り返った。山口は6.2秒差で長﨑を抑え切っての3位に「最後は楽しく走ろうと思って頑張りました。長﨑選手が追い上げてきましたが、なんとか逃げ切れました」と、振り返っている。
JN-4クラスは、初日首位の古川寛/吉田賢吾(スズキ・スイフトスポーツ)を、オープニングのSS5で東隆弥/藤澤進(スズキ・スイフトスポーツ)がパス。続くSS6では、古川がスタートから10.35km地点の左コーナーで左リヤを側溝に落としてリタイアとなった。これで楽になった東は危なげなく首位をキープし、うれしい全日本ラリー選手権初勝利。優勝争いに加わることができなかった王者の西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)が2位。岡田孝一/石田裕一(スズキ・スイフトスポーツ)の追い上げを抑え切った兼松由奈/槻島もも(スズキ・スイフトスポーツ)が3位を得ている。
待望の全日本初勝利を手にした東は「今日の1ループ目は連続ベストで、2番手以下との差を広げることができました。午後は安全にふりつつペースを落としすぎないように気をつけて走りました。次は丹後になりますが、地元近畿のラリーですし、ここも絶対に勝ちにいきたいです」と、丹後での連勝に意気込み。難しいコンディションでの試行錯誤が続いた西川は「今回は離されてしまいましたね。自分でも何が悪いのか見つけられたので、次回は優勝できるように頑張るのみです」と、次戦での挽回を誓う。3位表彰台を得た兼松は「タナボタ的に3番手まで順位を上げたのですが、後ろの岡田選手に追いつかれないように頑張りました。全然ペースを上げられなくて厳しかったです」とラリーを振り返っている。
JN-5クラスは、初日首位の大倉聡/豊田耕司(トヨタGRヤリスRS)が、オープニングのSS5でギャップを越えた際にドライブシャフトを破損。なんとかSS5は走り切ったものの、SS6を前にマシンを止めた。これで河本拓哉/有川大輔(マツダ・デミオ)が首位に浮上。SS6を終えて吉原將大/小藤桂一(トヨタ・ヤリスCVT)が21.3秒差のクラス2番手で続く。河本との差を詰めたい吉原だったが、SS7でマシントラブルによりペースダウンを余儀なくされ、クラス6番手まで順位を落としてしまう。河本は最終SSもベストでまとめて、自身初となる全日本ラリー選手権優勝。2位には小川剛/梶山剛(トヨタ・ヤリス)、3位には木内秀柾/島津雅彦(トヨタ・ヤリス)が入った。
新城では優勝を目前にしながらリタイアに終わり、リベンジを果たしたかたちの河本は「2ループ目は小川選手に追い上げられつつあったので、『勝つのは俺だ』と自分に言い聞かせて頑張りました。なぜここで勝てたのかは分かりません。あとで考えます」と、感無量の様子。大倉のトラブルもあり2位を得た小川は「生き残り作戦が成功しましたね。チームで1-2フィニッシュなので、それもうれしいです」と、河本の優勝を祝福している。
JN-6クラスは、首位の天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクアGRスポーツ)と、2番手の海老原孝敬/蔭山恵(ホンダ・フィット・ハイブリッドRS)が、2本ずつベストタイムを分け合う展開。それでも海老原との差を12.1秒から22.6秒に広げた天野が、危なげなく開幕4連勝を飾った。モータージャーナリストの清水和夫/山本磨美(トヨタ・ヤリス・ハイブリッド)は自身のペースを守り、3位表彰台を手にしている。
ハイブリッドパワートレインの難しさを語りながらも、盤石の4連勝を飾った天野は「頑張ってもタイムがついてこなかったり、まだよく分からないことが多いです。あえてエアコンを弱にしたら、逆にバッテリーの持ちが悪かったりもしました。次の丹後は夏場なのでバッテリーが少し心配です」と、気温の上がる次戦に向けて課題を指摘。海老原は「セットアップを変えたことで、最後のSSもベストを獲れましたね。ウエットのセットアップはいいフィーリングがつかめたので、次も雨であれば良い勝負ができるはずです」と、ウエット路面での収穫を語っている。
久万高原ラリー 最終結果
1 ヘイキ・コバライネン/北川紗衣(シュコダ・ファビアR5)55:36.8
2 勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリス・ラリー2) +1:28.7
3 鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI) +2:00.1
4 山田啓介/山本祐也(トヨタGRヤリス) +2:22.9
5 福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo) +2:29.5
6 奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス) +2:31.6
7 新井敏弘/保井隆宏(スバルWRX STI) +2:51.1
8 小濱勇希/竹下紀子(トヨタGRヤリス) +4:01.9
12 山本悠太/立久井和子(トヨタGR86) +5:59.4
15 東隆弥/藤澤進(スズキ・スイフトスポーツ) +6:54.6
21 河本拓哉/有川大輔(マツダ・デミオ) +9:02.7
24 天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクアGRスポーツ) +10:34.2