2023年シーズンWRC第7戦サファリ・ラリーケニア(グラベル)は、すべてのSSを終えて、トヨタのセバスチャン・オジエが2021年以来2度目のサファリ優勝を飾った。2位にはカッレ・ロバンペラ、3位にエルフィン・エバンス、4位に勝田貴元と、上位4台にトヨタ勢が並んだ。
日曜日のルートは、金曜日と同様にナイバシャ湖の北岸と南岸を舞台とし、新ステージの「Malewa(8.33km)」を含む3SSをリピートする6SS。最後に走行するSS19「Hell’s Gate(10.53km)」は、パワーステージに指定されている。総走行距離は74.38kmとけっして長くはないが、ハードな路面で戦ってきた満身創痍のラリーカーにとって、タフな状況であることに変わりはない。
オープニングのSS14、カッレ・ロバンペラがセバスチャン・オジエに8.1秒差をつけるベストタイム。首位オジエを追うロバンペラが、総合タイムの差でも8.6秒にまで迫ってきた。勝田貴元と総合3番手を争うエルフィン・エバンスはハーフスピンを喫して、約5秒をロス。このステージを3番手タイムで走った勝田との差は11.4秒に縮まっている。一方、再出走を果たしたヒョンデのエサペッカ・ラッピだったが、フィニッシュまで3km地点でまたしてもプロペラシャフトが破損。ステージを走り切ったものの、1分以上のタイムロスを強いられることになった。
SS15はオジエがハッチゲートとリヤウイングを失いながらも、ロバンペラに8.6秒差をつけるベストタイムを叩き出し、再びその差を17.2秒に戻した。エバンスは勝田に9.8秒差をつける4番手タイムで走り、こちらも21.2秒とアドバンテージを広げている。プロペラシャフトにトラブルを抱えたままのラッピは、ベストから6分以上遅れながら、なんとか前輪駆動で走行を続けている。
続くSS16、タナックがオープニングのスーパーSS以来となるベストタイムを記録。リヤウイングがないまま走行したオジエは、3番手タイムでまとめたロバンペラに3.6秒差の、5番手タイム。午前中のセクションを終えて13.6秒差と、トップを争うふたりの差はわずかながらも縮まっている。表彰台を狙う勝田はハイブリッドが機能せず、大幅にタイムロス。エバンスとの差は35.7秒にまで拡大してしまった。
ナイバシャでのサービスを挟んだ午後のセクション、SS17はロバンペラがオジエに0.6秒差のベスト。勝田はエバンスを2.7秒上回る3番手タイム。トップと2番手、3番手と4番手の差がわずかだが縮まった。SS18は勝田がエバンスに11.0秒差をつけて、今回2度目となる一番時計。最終SSを前にエバンスとの差は22.0秒となった。ロバンペラはオジエに3.8秒差をつける3番手タイムで、首位オジエとの差を9.2秒に詰めている。
そして迎えたSS19のパワーステージ。天候は曇りで前日の雨の影響はほぼなく、サンディな路面となった。まずWRC2部門から走り出したが、首位につけているカエタン・カエタノビッチは11分以上のアドバンテージを築いてこのステージをスタート。このステージも部門トップタイムをマークして、昨年に続きサファリでの部門優勝を決めた。
続いてラリー1勢がスタート。選手権争いの上でも、ボーナスポイントを狙ってのアタックが予想された。まずは、ラッピがクリーンに走り切り、5分38.9秒と基準を作る。次にスタートしたのは、選手権2番手をキープしたいヒョンデのティエリー・ヌービル。ラッピのタイムを4.9秒上回り、最終的にこのタイムが一番時計となった。Mスポーツ・フォードのピエール‐ルイ・ルーベは、23.1秒遅れのタイムとなったが、初参戦のサファリを7位でフィニッシュした。総合6番手に沈んでいるタナックは、渾身のアタックを見せるもヌービルに1秒届かず2番手タイム。ヒョンデ勢最上位のソルドは、ヌービルに10.9秒遅れの8番手タイムと慎重に走り切り、5位を固めた。
勝田は慎重に7番手タイムで走り切り、フィニッシュラインではラジエターから盛大に水漏れが発生したが、4位フィニッシュを決めた。続くエバンスは、ヌービルに7.1秒遅れの6番手タイムでポディウム圏内が確定。オジエまで9.2秒差でスタートしたロバンペラは、ヌービルに1.8秒差のタイムでオジエのフィニッシュを待つ。そのオジエは、ロバンペラに2.5秒遅れの4番手タイムと絶妙なペースコントロールでこのステージを走り切り、2度目のサファリ優勝を決めた。6.7秒差は、サファリ史上最も僅差でのリザルト。
これで最終SS終了時点での総合順位はオジエ、ロバンペラ、エバンス、勝田、ソルドというトップ5に。パワーステージはヌービル、タナック、ロバンペラ、オジエ、ラッピがトップ5に入り、ボーナスポイントを獲得した。第7戦を終えて、ドライバーズランキングはロバンペラ、ヌービルは変わらず、エバンスが3番手に浮上。オジエとタナックが同ポイントというトップ5。マニュファクチャラーズランキングはトヨタが283点、ヒョンデが241点、Mスポーツ・フォードが174点となった。
次戦は7月20日〜23日に開催される第8戦ラリーエストニア。悪路のサファリから一転、高速グラベル戦となる。WRC開催は今回が4度目で、エストニア南部にある同国第2の都市タルトゥを拠点としてラリーが開催される。22年はトヨタのロバンペラが優勝。勝田は5位でフィニッシュし、パワーステージではポイント1を獲得している。
WRCサファリ 暫定結果
1. S.オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1) 3:30:42.5
2. K.ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1) +6.7
3. E.エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1) +2:58.5
4. 勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1) +3:23.8
5. D.ソルド(ヒョンデi20 Nラリー1) +5:05.4
6. O.タナック(フォード・プーマ・ハイブリッド・ラリー1) +9:14.4
7. P-L.ルーベ(フォード・プーマ・ハイブリッド・ラリー1) +16:15.7
8. T.ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1) +24:47.0
9. K.カエタノビッチ(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo) +26:33.4
10. O.ソルベルグ(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo) +27:04.0