WRCラリーフィンランドのフィニッシュ後に行われたイベントカンファレンスの内容(抜粋)。WRC伝統の高速グラベルラリーで2度目の勝利をマークしたトヨタのエルフィン・エバンス。自然体の走りでタイムが出たという言葉に、勢いをつかんだ自信を感じさせた。
●WRCイベント後記者会見 出席者
1位ドライバー:エルフィン・エバンス=EE(トヨタ・ガズーレーシングWRT)
1位コ・ドライバー:スコット・マーティン=SM(トヨタ・ガズーレーシングWRT)
2位ドライバー:ティエリ・ヌービル=TN(ヒョンデ・シェル・モビスWRT)
3位ドライバー:勝田貴元=TK(トヨタ・ガズーレーシングWRT)
豊田章男=AT(トヨタ・ガズーレーシングWRT、チーム代表)
Q:エルフィン、ラリーフィンランドでの2勝目は、どのドライバーでも望む特別なものだ。かなり疲れはあると思うが、それを除いてラリーを終えていまの気分は
EE:そうだね、長い一日が続いたので疲れは貯まったけど、素晴らしい週末だったし、マシンのフィーリングもすごく良かった。あのようなタイムが、かなり自然に出せた。もちろん、ここで2度目の勝利を飾れたのは最高の気分だ。もちろん、チームはこのユバスキラを拠点としていて、第二の母国ラリーのようなものだから、チームのためにもまたここで勝ててうれしいよ。
Q:おっしゃる通り、限界まで攻めることなくステージを走り切ると、あのようなタイムが出ていた。このことは、かなり満足できるのでは
EE: そうだね、フィーリングは良かった。実は、2021年に勝った時のフィーリングと似ている。あの時の方がリスクは高かったけれどね。21年は、激しい三つ巴の戦いで、たぶんオジエとクレイグとだったと思うけれど、最後まで過酷な戦いが続いた。でも、今回も同じくらいマシンのフィーリングは良かったし、それがタイムにつながったのはとても良かった。
Q:土曜日はステージウインを連発して、一日を終えてリードは30秒以上になっていた。最終日は抑えに入ったか、それともその勢いのまま維持し続けたか
EE: パイラの2回目(SS16)の後、少し限界よりも緩めたと思う。あのステージでいい走りができたので、もう、少しリスクを抑えてもいい頃だと決めた。その後は、いいリズムで走ることを続け、無茶はし過ぎないけれど、いいレベルで集中を保つこと、そしてもちろんいい走りをすることに努めた。少し速度を遅めにしたところで危ない場面がいくつかあって、それが少し悪化していったので(苦笑)抑えるのは良くないと思った。
Q:選手権争いではティエリーと3ポイント差でこの週末を迎えた。ここで最大ポイントを獲得できて、今の戦況をどう感じているか
EE:首位のカッレとはまだ大差がついているし、今の彼には勢いがあることも分かっているが、自分たちもタイトルを目指して挑むために戦っている。自分たちがそれを目指すのは自然なことだ。もちろん、トンネルを抜けて今は、この週末を迎える前よりも光が差してきている。今回、カッレに起きたことは残念だった。すごく不運だったと思う。あのような速い場所であのようになることは、見たことがない。クルーが無事でよかった。でも、選手権争いでは、また行方が分からなくなったので、もちろんシーズンの終わりまで戦いを続けることを楽しみにしている。
Q:コ・ドライバーのスコット、金曜日はリタイアが相次いで少し盛り下がってしまうかもしれないと思われたが、首位以下は激しい争いになり、見応えがあった。自分の席から見て、あの戦況と、土曜日にいいリードを築けたのはどのような感じだったか
SM:とてもトリッキーなコンディションだった。ドライで天気がよくコンディションが安定している時のフィンランドは、高速でジャンプやクレストが多くトリッキーで、ペースノートも重要で正確でなくてはならない。だから、天気が常に変化して、ウエットになるのかドライになるのかハッキリしない時は、本当にチャレンジング。リタイアが多かったのは、そうした理由だからじゃないかな。いかにトリッキーだったということが分かるし、そのコンディションにうまく対応したドライバーたちは見事だった。それに、いい戦いだった。
今日、タカが制した3位争いも本当に見応えがあった。土曜日はすごく接戦で、どのステージもコンマ秒差だった。エルフィンも言ったように、自分たちはマシンのフィーリングが良くて、シェイクダウンの時点から行けるというフィーリングを感じられていた。もちろん、一日一日を走り切ることも重要だったし、そうしなければならないという意識もあった。土曜日は夢のような一日だった。走り切るのもトリッキーなステージだったが、マシンのフィーリングはよく、タイムも出ていて、優勝に向けて流れができていて、確信を持てたような感じがした。エルフィンはいい走りをして、チームも素晴らしい仕事をしてくれた。アキオさんがこの場にいて、一緒に優勝を祝うことができたのも、最高だった。だから、本当に本当にハッピーだ。
Q:エルフィンは、ステージのフィニッシュでもあまり感情を見せないタイプだが、コ・ドライバーとして、ペースノートを読む以外に、ドライバーを鼓舞したり褒めたりといったことも今回はしたか
SM:あまりそんなことはしなかったけど、このイベントを1回勝つだけでもすごいことなのに2回目なんてかなりのことだ、とは言った。たぶん、まだ完全には実感していないのかもしれないけど、エルフィンは自分が言ったことに同感してくれたよ。表には見せなかったかもしれないけど、同感してくれたことは分かった。一歩前進だね。
Q:ティエリー、フィンランドで素晴らしいリザルトを収めた。このイベントではあまりポディウムには上がっていないと言っていたが、2013年に2位に入った以来だ。素晴らしいパフォーマンスを見せたことは、ちょっとした勝利ではないだろうか
TN: そうだね、今晩は絶対にお祝いするよ。もし彼ら(エバンスとマーティン)がここにいなかったら、自分が座っていたのは間違いないからね(笑)。確かに、自分にとっては正直、ちょっとした勝利のようにも感じる。特に、2戦続けてチャレンジングなラリーが続いて、どちらも2位だった。強いパフォーマンスという点では、気分はいい。特にラリーの間隔が短かったからね。チームは正しい方向に向かっていることが分かるし、進化してマシンも速くなっている。シーズンのこの先に向けてのモチべーションになる。
Q:金曜日はモチベーションが高まっていたことが分かったし、この日の終盤はペースを上げたようにも思えたが、土曜日はエルフィンが手を付けられないような速さを見せた
TN: 捉えるのは不可能だったね。何度か、めちゃくちゃハードにプッシュして追いつこうと試みたし、完璧だったと感じても、それでもエルフィンの方が少し速く、少しずつ差が広がっていった。ある段階で挑み続けるチャンスはないように感じたので、2位に収まるしかなかった。土曜日の午後からは、スピンやパンクやトラブルがあった時のためにとにかくいいリズムで走り続けると決めたのは、賢明な判断だったと思う。それでも、パワーステージでのポイントは狙っていたが、ここでもエルフィンが激走を見せて最大ポイントを獲得した。でも、悪い結果だったとも言えない。ギリシャでは走行順が3番手になるのでいいことだが、エルフィンもできる限りカッレとの差を詰めに行くだろうからね。カッレにとっても、少しプレッシャーになると思う。
Q:自分にとっても選手権争いは面白いことになってきたのでは
TN:確かにね。数戦前は数ポイント差だったり、もっと差を詰めることもできたけど、今はこれが現状。ここからイベントを楽しみにしている。ギリシャでは去年、1‐2‐3だったし、ジャパンではポディウムの真ん中に上がったし、ターマックイベントはいいペースが出せるので、もちろん楽しみにしている。でも、カッレとは36ポイント差がついている。不可能とは言わないが、難しいミッションだ。
Q:勝田貴元さん、第2のホームラリーでのポディウム、おめでとう。ステージウインをマークして、テーム・スニネンとの激闘の末にこのポディウムを勝ち獲った今の気分は
TK:もちろん、すごくうれしいですし、テームとは本当に激しいバトルになりました。彼はとてもいい走りをしていたので、自分も土曜日の午後は攻めて攻めて、それでも数秒しか変わらなかったので楽ではありませんでしたが、幸い、最後のステージのコンディションがかなりトリッキーで、そこで差をつけることができたので、楽になったわけではありませんが、最終日の戦いに向けての負担が少し軽くなりました。大変な週末でしたが、テームはラリー1マシンではまだ2戦目なので、素晴らしい走りだったと思います。でも、自分たちもベストを尽くしたので、ここに座れてうれしいです。
Q:土曜日の最終ステージについてもう少し。ここで、差がついた
TK:トリッキーなコンディションでした。通常、このような時は自分はあまりプッシュしませんが、今回は、そこまでの何本かでコンマ数秒しか差がつかなかったので、日曜日もこのようなコンディションになれば、状況は変わらないと思いました。正直、それは避けたかったので、プッシュすることを決め、なんとかうまくいきました。ものすごく怖かった場所もありましたが、あのステージを終えてすごくハッピーでした。どの辺りだったか分かりませんが、中盤で恐ろしいセクションがありました。あの区間を抜けたら、フィニッシュを迎える前に、すでにハッピーでした。
Q:今回はユバスキラで、たくさんの応援を受けた。今回は豊田章男さんも来ている。豊田さんがいる中でチームのために第2の母国イベントでポディウムに上がることは、どれくらい重要なことか
TK:自分にとって、とても大切なことです。エストニアがとても悪いラリーになってしまい、自分はまったく速さが出せませんでした。その後、チームが必死に分析して、自分が改善できるためのことをたくさん教えてくれました。同時に、テストではカッレにも隣に乗せてもらい、彼の走り方を見せてもらったり、コツを教えてもらいました。エストニアの後、自分は自信も何もかも失いかけていたので、路面の読み方をより理解するためにとても役立ちました。だから、カッレにも心から感謝したいです。みんなにたくさん助けてもらって、その結果、自分がここにいます。だから、章男さんの前でポディウムに上がれて、本当にうれしいです。章男さんにもすごく助けてもらいましたし、もちろん家族や地元フィンランドのサポーターにもたくさん応援してもらって、感謝しています。
Q:では、チーム代表の豊田章男さん。エルフィン・エバンスが1位、タカモトがポディウム、チームをどれほど誇らしく思うか
AT:最高のリザルトです。1位、3位、そして5位。そして、ポディウムに上がったドライバーとともにチーム代表としてここに座れることを、とても光栄に思います。でも、今回一番印象的だったのは、シャンパンの香りですね。いま、酔っぱらいかけています。
Q:ここまで香りが漂ってきますよ。今回の彼らのパフォーマンスはどうだったか
AT:素晴らしかったと思います。初日は残念ながらカッレにアクシデントがあり、残念ながらマシンを直すことができず申し訳ないことをしました。でも、その後は3人のドライバー、コ・ドライバーたちが素晴らしい仕事をしてくれて、最高のリザルトを収めてくれました。特に彼らのドライビングスタイルは積極的で、彼らの表情からは自信とドライブする楽しさが感じられました。それが一番私にとっての喜びであり幸せだと思います。チームメンバー全員に心から感謝しています。
Q:チーム代表職はいかがでしたか。今後、またチーム代表に戻ることはありますか
AT:ヤリ‐マティが何と言うか次第ですね(笑)。
Q:ヤリ‐マティは、どのステージも楽しそうでした
AT:毎回、インタビューが長くなってスミマセン(笑)。でも、彼の笑顔でみなさんに元気を送っていたので許してあげてください。