WRCラリーチリのフィニッシュ後に行われたイベントカンファレンスの内容(抜粋)。毎日のように路面の性格が異なり、タイヤ選択が大きな鍵を握ることとなった今回のチリ。ルートのほとんどが新しい設定であることも困難を加え、圧勝を飾ったオィット・タナックにとっても、想像して選択が合っていることを祈るしかなかったと本音を吐露した。
●WRCイベント後記者会見 出席者
1位ドライバー:オィット・タナック=OT(Mスポーツ・フォードWRT)
1位コ・ドライバー:マルティン・ヤルベオヤ=MJ(Mスポーツ・フォードWRT)
2位ドライバー:ティエリ・ヌービル=TN(ヒョンデ・シェル・モビスWRT)
3位ドライバー:エルフィン・エバンス=EE(トヨタ・ガズーレーシングWRT)
リチャード・ミルナー=RM(Mスポーツ・フォードWRT、チーム代表)
Q:オィット、チリで今季2勝目をマーク。信じられないような週末だったが、クルーにもチームにもタフな試練だったようだ。どのように評価するか
OT: このようなイベントはほかに記憶がない。毎年、何かしら対応を余儀なくされるイベントはあるが、今回は週末を通してそのような感じで、まったく違うアプローチが必要になった。土曜日の午前は走行順がよく、ほかのチームはタイヤでかなりいい選択をしたようだったから、そこに対応しなくてはならなかった。
Q:金曜日と土曜日のタイヤ選択は、想像するしかないと言っていたが、その他にも努力はあったのでは
OT: トム・ファウラーが、タイヤ戦略にどれだけ多くのスタッフが取り組んでいるかを語った文章を読んでいたかな。でも、今回、彼らのチームではうまく機能せず、どんな感じだったかを思い出そうとしていた自分たちがうまくいった。とにかく祈ったし、結果的には路面はすごく固かったから、あとは気温だけだったが、まずまずだった。まったく新しいラリーのような感じになったので、道の経験はないから、やっぱり自分でいろいろ考えることになったんだ。
Q:リチャード、今回は素晴らしい流れになったし、オィット、マルティン、チームがいいパフォーマンスを見せた
RM: 今回の成果には満足していいと思う。スウェーデン以来、このようなリザルトを収めるためにプッシュしてきたので、チームが祝福できるようになって本当にうれしい。優勝を持ち帰るまで長かったので本当に特別だし、チームも懸命にオィットとマルティンを支えたが、最終的にオィットが本領を発揮して、首位を守り切った。金曜日に素晴らしいプッシュを見せた。土曜日の走行順のためには、それが鍵になると分かっていたからね。だから、最高の順番で土曜日を迎えられたのは最高だった。ステージは非常にトリッキーで、犠牲がたくさん出た。年明け、我々が必死にチームに採り入れようとしていたものがようやく実を結んだので、満足していいと思う。
Q:ティエリーもタイヤについて言及しており、ヒョンデは安全モードのアプローチを取って、土曜日は(ハード)3・(ソフト)3を選んだが、それがうまくいった
TN: ここでタイヤを試すのはものすごくトリッキーだし、選択肢はいろいろあったが、自分的には、あの日の走行順も考えて3・3にした。いいチョイスだと思ったが、最初のステージの10kmあたりでパンクしてしまい、そこからこのループはタイヤをマネージメントしなくてはならなくなった。基本的にはうまくできたが、この週末はタイヤの選択が難しく、ものすごく話し合った。ステージもタイヤのマネージメントをするのが難しかった。ステージの途中でタイヤがなくなってしまった感じがするのに、終わってみるとまだ全然OKだったり。かなりチャレンジングだった。
Q:オィット、週末を通してステージの素晴らしさや、たくさんの観客が集まっていることを賞賛するコメントをする場面がたくさんあった。ステージはどのように素晴らしくてチャレンジングだったと思うか
OT: こんなにしっかりした路面のイベントがあるのは、いいことだと思う。1ループ目も2ループ目も、道は苦労なくドライブすることができた。もちろん、今回はタイヤをマネージメントしなくてはならなかったが、それ以外は、純粋にドライバーの腕が試された。道の性格はものすごくトリッキーで、金曜日だけでも高速でナローで、ブラインドクレストがたくさんあって、道がどっちに続くのか分からない時さえあったから、本当にノートを頼りに走らなくてはならなかった。
Q: マルティン、ドライバー目線からの試練ばかり話題になるが、コ・ドライバーとしても、まったく新しいステージではノートも新たに作らなくてはならず、忙しい一週間だったのでは
MJ: まったくだよ。特に、自分のドライバーは1ループ目から正確なノートがほしいから、とにかくノートがたくさん。何か修正が入るとかなり緊張が走るが、でも自分たちはそれをやり遂げた。
Q:タフなシーズンになっているだけに、今日、フィニッシュラインを越えて勝利を決めたのは素晴らしい気分だったのでは
MJ: そうだね、かなりタフなシーズンになっているのは確かだ。ここ6、7戦は、いい気分で帰ることができなかったが、今回は最高の気分で帰って祝うことができる。
Q:エルフィン、今回のイベントについてとポディウムフィニッシュを決めたことにどれだけ満足しているか
EE: タフな週末だったのは明らかだし、金曜日はいい滑り出しができたと思う。午後はかなり難しくなり、まだ砂利がたくさん残っていた。土曜日はタイヤ選択も誤ってしまい、優勝のチャンスが途絶えてしまったような感じだ。その後は、できる限りいい順位を守ることに専念した。残念ながら、最終日にリタイアがあったおかげでポディウム圏内に上がることができたが、もっと悪い結果もあり得た。それでも、まだ選手権争いも続いている。差を詰められたのはほんのわずかだが、まだ終わっていない。
Q:この週末は、チームがマニュファクチャラーズタイトルを決めた。最終2本目までは決められそうにはなかったが、あのステージで一転した。トヨタは今季も素晴らしいシーズンを送っており、満足しているのでは
EE: 現場にいるスタッフもファクトリーにいるスタッフも、チーム全体が必死に頑張ってきたので、努力が報われた。素晴らしいチームだし、タイトルにふさわしい。その一員であることを誇りに思う。
Q:再びティエリーに。最終日はテーム(スニネン)との2位争いで素晴らしいペースを見せた。どれくらいリスクを負っていたのか
TM: チャンスがあれば言うまでもなく攻めるのはいつものこと。今日はそのチャンスがあった。エルフィンも10秒しか離れていなかったし、そのギャップよりも前との差の方が大きかったから、とにかくプッシュするしかないと思っていた。エルフィンもスイッチが入ると信じられないほど速くなることは分かっていたしね。とにかくタイヤのことを考えていた。午後はすごく摩耗が激しくなると分かっていたから午前は賭けだったが、なんとかうまくいき、パワーステージでもポイントを獲れた。それには満足しているが、テームのことは残念に思う。ラリー1マシンでの経験が少ないのに、今回、本当に素晴らしい走りをしていた。でも、過酷なラリーになることはみんな分かっていたので、これもゲームだ。
Q:リチャード、今季残り2戦はターマックになり、新規イベントも待っている。どのような展開を期待しているか
RM: このふたりが、またいい走りをしてくれること。彼らもそうしたいと思っている。新規イベントはみんなにとってチャレンジングになるし、天気も鍵になるだろう。ジャパンもまったく違うトリッキーなイベントだしね。今回とアプローチは変わらず、どこまでできるかというところだが、今季の残りイベントでもいいリザルトが残せたらうれしいね。