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選ばれるにはワケがある。進化を続けるスティーロの取り組み

©Keiko Ito

多くのドライバーが愛用し、WRCを含むラリー界で存在感を増しているスティーロのヘルメット。WRCラリーイタリアの現場で、パオロ・ボネタッリ社長に聞いた。

──1999年の設立から、現在WRCで多くの選手がスティーロを使用するまでになった要因はなんだと考えますか?
 私たちの製品の成功は、まずコミュニケーションシステムを中心として、その周りにヘルメットをデザインしたことにある。特にラリーにおいて、クルーのパフォーマンスはクリアなコミュニケーションに左右されるからだ。スティーロの製品は、ヘルメットのシェルと一体化したマイク付きのブーム、そしてクルーにできるだけクリアなサウンドで聞いてもらえるための防音性を重視した耳当ても特徴だ。コミュニケーションシステム自体がヘルメットに組み込まれており、接続部の損傷も防止できる。
 自らイタリアのラリー選手権に出場していた創始者の経験に基づき、選手が必要とするヘルメットを作っている。安全面に配慮することは言うまでもなく、パフォーマンスを向上させるためのコミュニケーションの品質改善が、我々が最も重視している点だ。

──ラリーのヘルメットに求められる性能とはなんでしょう?
 クルーは競技に集中しなくてはならないので、ヘルメットについて考えるようであってはならない。それが最も重要なことだ。装着時の快適さ、ヘルメット内の換気、重量はできる限り軽く、通常の声で十分に聞き取れるようでなくてはならない、ペースノートが聞こえないとパフォーマンスに影響してくる。ヘルメットはとても個人的なアイテムでもあるが、同時にチームやクルーからも信頼性が求められる。

──選手から最も多く受ける要望はどのようなものですか?
それぞれの好みがあるので一概には言えないが、コミュニケーションシステムの質にこだわる選手もいる。彼らと密に調整作業を進めることで、我々も細かい点を向上できる。それ以外にも、着け心地の快適性にこだわる選手もいて、内部のパッディングなどや換気についての意見をもらうこともある。そうしたフィードバックを活用して、次世代の製品を良くすることができる。

──ラリードライバーのアドバイザーはいるのでしょうか。
 協力してもらっているラリーの選手はセバスチャン・オジエ、オィット・タナック、エルフィン・エバンスなどで、F1ではバルテリ・ボッタス、ランス・ストロールなどがいる。ラリーレイドではダカールウイナーのナッサー・アルーアティヤ、カルロス・サインツなどだ。スティーロヘルメットを使ったドライバーがダカールで18勝、WRCで19連勝したことは我が社にとっての誇りでもある。
アンバサダー全員が私たちのテクニカルコンサルタントだ。製品を提供するだけでなく、スタッフを派遣して様々なイベントで技術サービスを提供している。選手たちには最先端の技術を提供しており、その代わりに彼らからフィードバックを受けている。双方にとってメリットのある関係であることが重要だ。

──スティーロ独自の強みとはどういったことでしょうか?
 私たちはすべてのディテールにこだわっている。製品は100パーセント、イタリアで製造されている。アンバサダーたちの意見を参考にして社内でデザインされ、製造の工程はもちろん、そして最後のホモロゲーションまで、完全に統合された生産ラインを持っている。ヘルメットのシェルもすべて自社の工場で作っている。カーボンのヘルメットに関して言えば、PURO(イタリア語で「ピュア」)スーパースムーズテクノロジーという革新的な製造方法を使っている。カーボンの編みと仕上がりは最高品質で、以前よりも軽量化が可能になり、より良い品質の製品を提供できる。
 私たちの本社はベルガモにあり、弊社が所有する工場ですべてのヘルメットをシェルから作っている。研究開発部門もあり、FIAの規格を満たしているかを確認するための実験室も備えている。

──将来的な進化のポイントとしては、どのような分野が考えられますか?
 現在も様々な角度での開発に取り組んでいる。現在のモデルはすでに数年前にデザインされたものがベースとなっており、今は次世代のヘルメットのモデルデザインの最終段階に入っているところだ。アンバサダーたちから集めた情報をもとに、現在のヘルメットのどこを変えていくかを常に考えている。主なポイントは換気、軽量化、バイザー、快適性などの向上だ。

──日本国内でもユーザーが増えていますが、メーカーとして日本市場はどうみていますか?
 我々にとっては興味深い市場だ。着実に成長しているし、とても良い協力関係を誇るディストリビューターもいる。ヘルメットは勝田貴元選手にも提供している。彼はとても優れた選手だし、人柄もいい。我々はディスプレイ用のミニチュアヘルメットも作っており、まもなく勝田選手のミニヘルメットも作る予定で、それは日本でも販売されることになっている。このような市場においては、ディーラーエクスペリエンスを提供しており、ディーラーにもWRCを経験してほしいと考えているんだ。
(Keiko Ito)

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