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WRCセントラルヨーロッパ事前情報:3カ国を舞台とする独特なターマックイベント、ティエリー・ヌービルが初タイトルを決められるか

©FIA

今週開催されるWRCセントラルヨーロピアンラリーは、WRCイベントとしての開催2度目となる3カ国をまたいでの独特なターマックラリーだ。

オーストリア、チェコ、ドイツと、3つの国の多彩な舗装ステージを使うセントラルヨーロッパは独特のイベント。さらにヒョンデのティエリー・ヌービルとマルティン・ウィダグは、このオールターマックのラウンドで初のWRCタイトルを決めるチャンスが挙がっていることでも、注目が高まっている。ポイントランキング首位でセントラルヨーロッパを迎えるヌービルは、ここで2番手につけているチームメイト、オィット・タナックよりも2ポイント多く獲得、セバスチャン・オジエに10ポイント差をつけられなければ、またエルフィン・エバンスがここで勝利を逃すかエバンスが勝ってもヌービルが15ポイントを獲得すれば、ベルギー人としては初のWRCチャンピオンの座を獲得することができる。

しかし、セントラルヨーロッパには、ほかにも見どころがたくさん用意されている。9月にMスポーツ・ポーランドで開催された、WRCプロモーターの女性若手育成ドライバープログラム「Beyond Rally」のキャンプで選抜されたリシア・ボーデ(ベルギー、21歳)、スビ・ユルキアイネン(フィンランド、24歳)、クレア・シューンボルン(ドイツ、25歳)が、Mスポーツ・ポーランドからフォード・フィエスタ・ラリー3で参戦。このなかから、さらにひとりが、2025年のジュニアWRC参戦に参戦するフルサポート対象ドライバーとして選ばれる。

FIA

WRCの単独タイヤサプライヤー、ピレリは、このセントラルヨーロッパにはP Zero RAタイヤのハードとソフト、2種類のコンパウンドに加え、大雨のコンディション用にCinturato RWBを供給する。第1選択肢は冷涼で湿ったコンディション向けのソフト、ハードは温暖でドライコンディション向けのオプションとなる。ラリー1勢がイベント中に使用できるタイヤ本数は最大28本(シェイクダウン用の4本を含む)。

■エントリー状況
ヒョンデ・シェル・モビスWRT:ヌービルは、このセントラルヨーロッパで最終戦を残して初のWRCタイトル確定を目指す。タナックは29ポイント差で2番手につけており、タイトル争いの上では現実的にヌービルを倒せる唯一の存在となる。ヒョンデi20Nラリー1ハイブリッドのサードカーを駆るのは、アンドレアス・ミケルセン。6月末の第7戦ポーランド以来のWRC参戦となるが、セントラルヨーロッパは初開催の昨年、WRC2タイトルを決めた相性のいいイベントだ。

トヨタ・ガズーレーシングWRT:マニュファクチャラーズタイトル防衛のために投入するのは、セバスチャン・オジエ、エルフィン・エバンス、そして前戦チリをスキップしてこのセントラルヨーロッパで戦線に復帰する勝田貴元。サミ・パヤリは、トヨタGRヤリス・ラリー1ハイブリッドでの3度目、このマシンでのターマックラリーは初めての参戦に臨む。

Mスポーツ・フォードWRT:アドリアン・フルモーとグレゴワール・ミュンステールが、マニュファクチャラーズ選手権ポイント対象ドライバーとしてエントリー。ミュンステールは昨年のセントラルヨーロッパはラリー1マシンで参戦したが、フルモーはこの時はフォード・フィエスタ・ラリー2の参戦だった。ジョルダン・セルデリディスは、対象外ドライバーながらフォード・プーマ・ラリー1・ハイブリッドのサードカーをドライブする。

■サポートカテゴリー
WRC2タイトル争いも佳境を迎えており、ヨアン・ロッセル(シトロエンC3ラリー2)は、最終戦ラリージャパンまでタイトルの可能性を残すためには、このセントラルヨーロッパでの勝利が必須となる。チームメイトのニコライ・グリアジンも、サミ・パヤリのタイトル確定を阻止するためには、トップ2でのフィニッシュが必要となる。しかし、グリアジンが3位以下かつカエタン・カエタノビッチ(シュコダ・ファビアRSラリー2)が優勝を逃せば、タイトルはパヤリが獲得する。

ポイントランキングで首位に立っているのはオリバー・ソルベルグだが、ドライバーズ選手権のノミネートイベントは最大7戦をすでに消化しており、今回獲得できるポイントは、トクスポーツWRT2のチームズ選手権ポイントのみ。

ERCを戦ってきたチェコのフィリップ・マレス(トヨタGRヤリス・ラリー2)は、母国イベントでWRC2にステップアップ。ミコ・マルチェク(ファビアRSラリー2)も、10月11日〜13日に母国ポーランドで開催されたERC最終戦ラリーシレジア(ターマック)の戦いを終えての連戦となる。

9月の第10戦アクロポリスでWRCマスターズカップのタイトルを決めたドイツ出身のアーミン・クレマー(ファビアRSラリー2)も、母国のWRCイベントに参戦。弟子にあたるドイツチャンピオン、マリヤン・グリーベルは、同じスペックのマシンでWRC2チャレンジャーに参戦する。

WRC3部門には、Beyond Rallyの3人に加え、チェコの首都プラハを拠点とするフィリップ・コーンが、ERCフィエスタ・ラリー3カップのタイトル獲得の特典として参戦する。さらにチェコの強豪ヤン・チェルニー、フランスのマッテオ・シャティロンがルノー・クリオ・ラリー3で参戦する。

■ラリールート

TOYOTA

チェコの首都プラハでスタート、ドイツの歴史的都市パッサウでフィニッシュするWRC開催2度目のセントラルヨーロッパには、計18SSのチャレンジングなターマックステージが、オーストリア、チェコ、ドイツに設定される。

競技ステージがスタートするのは、10月17日木曜日15時、プラハの中心地に近いレースコース、ベルカ・ホクラに設定されるスーパーSSから。2023年のレイアウトから唯一変更のないステージだ。さらに、Klatovyはナイト走行となる。

クラトイーでひと晩を過ごした後、金曜日はKlatovyをさらに2回走行するほか、StrasinとSumavske Hosticestageを2回ずつ走行。Sumavske Hosticestageは、26.69kmとイベント最長のステージだ。

ラリーの一行は金曜日の夜にチェコを離れてドイツに向かい、土曜日はイベント最長の123.46kmが設定される。この日はドイツのパッサウ地方バート・グリースバッハに近いカルファルメル・フォルクスフェストプラッツのサービスパークをスタートして、3SSを2回ずつ走行。Granit und Wald、Beyond Bordersは、ドイツとオーストリアを走る初登場の新ステージ。Schardinger Innviertelは、すべてオーストリア国内を走るステージだ。

最終日の日曜日は2SSを2回ずつ走行。Knaus Tabbert Am Hochwaldは初挑戦のステージ、Passauer Land(14.87km)は昨年からステージが刷新され、2回目の走行はパワーステージに指定されている。

■ラリーデータ
開催日:2024年10月17日〜20日
サービスパーク設置場所:バート・グリースバッハ
総走行距離:1584.44km
総ステージ走行距離:302.51km(SS比率19.1%)
総SS数:18

■開催選手権
WRC
WRC2
WRC3

■マニュファクチャラーズ選手権ノミネートドライバー
[トヨタ・ガズーレーシングWRT]

セバスチャン・オジエ(#17)
エルフィン・エバンス(#33)
勝田貴元(#18)

[ヒョンデ・シェル・モビスWRT]
ティエリー・ヌービル(#11)
オィット・タナック(#8)
アンドレアス・ミケルセン(#9)

[Mスポーツ・フォードWRT]
アドリアン・フルモー(#16)
グレゴワール・ミュンステール(#13)

■2023年セントラルヨーロピアンラリー最終結果
1 T.ヌービル(ヒョンデi20Nラリー1ハイブリッド) 2:52:39.9
2 K.ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1ハイブリッド) +57.6
3 O.タナック(フォード・プーマ・ハイブリッド・ラリー1) +1:52.8

■近年のWRC開催でのウイナー
2023年 T.ヌービル(ヒョンデi20Nラリー1ハイブリッド)



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