2024年のWRCは、11月21日〜24日に愛知県・岐阜県を舞台に争われる最終戦で、3タイトルすべてが決定される。マニュファクチャラーズ選手権はヒョンデとトヨタ、ドライバーズ選手権はヒョンデのティエリー・ヌービルとオィット・タナックが一騎打ちの戦いに臨む。
今季ここまで12戦を終えて、ヌービルはタナックに25ポイント差をつけており、あと6ポイント獲得すれば、タナックのリザルトに関わらず自身初タイトルに手が届く。計算上、タイトルの可能性を残しているのはこのふたりだけ。つまり、いずれにしてもヒョンデが豊田スタジアムで、チーム初となるドライバーズチャンピオン、コ・ドライバーチャンピオンを誕生させることになる。
一方、マニュファクチャラーズ選手権は、ヒョンデとトヨタの決着の行方は未知数だ。首位に立つヒョンデのリードは、わずか15ポイント。昨年のジャパンでは表彰台を独占しているトヨタが再びホームイベントで大量に得点し、ヒョンデが失速すれば帳消しになる程度のポイント差であり、最後まで目の離せない戦いとなるはずだ。
また、タイトル争いはWRC2、WRC2チャレンジャーでも残されている。WRC2部門で選手権首位に立っているオリバー・ソルベルグは、7戦のノミネート参戦をすでに消化し、今回のジャパンは不出走。タイトルの可能性を残しているサミ・パヤリは、ジャパンを2位以上でフィニッシュすれば、WRC2タイトルを手にすることができる。WRC2チャレンジャー部門でも、ニコライ・グリアジンが今季4勝目をマークしたとしても、パヤリが2位に入ればダブルタイトルを獲得する。
選手権屈指のツイスティ&ナローなターマックラリーとして知られるラリージャパンは、昨年よりも会期が遅くなっており、変わりやすい天候に早朝と日暮れ後は、気温の低下が懸念される。タイヤコンパウンドの選択も重要な要素となり、特に木に覆われたセクションが多いことから、スリッパリーなコンディションも予想されている。
4WD車両に選手権の公式タイヤを供給するピレリは、ジャパンにはP Zero RAのハードとソフトのコンパウンドに加え、豪雨に備えてCinturato RWBを用意する。第一選択肢は温暖でドライの天候向きのハードで、ソフトは冷涼で湿ったコンディション向き。ラリー1マシンがラリー中に使用できるタイヤ本数は最大28本で、鞍ケ池公園で行われるシェイクダウンには別途4本を加えることができる。
月曜日から始まったレッキ時には雨に見舞われたが、木曜日以降は晴天でドライコンディションとなる予報で、気温は6度〜18度と予想されているが、金曜日には岡崎中央総合公園で、日没後のスーパーSSも待っている。
■エントリー状況
ヒョンデ・シェル・モビスWRT:自身初のWRCタイトルまであと6ポイントに迫ったヌービルは3年連続のジャパン参戦。ヌービルのタイトルを阻止できるチャンスを残しているのは、チームメイトのタナックだ。2年前のジャパンでは、ヌービルに続いての2位でフィニッシュしているほか、今季は前戦セントラルヨーロッパでシーズン初勝利を挙げている。3台目のヒョンデi20Nラリー1ハイブリッドを託すのは、アンドレアス・ミケルセン。昨年、初参戦のジャパンでWRC2タイトル獲得を決めているが、ラリー1マシンでの参戦は初めてとなる。
トヨタ・ガズーレーシングWRT:マニュファクチャラーズタイトル連覇をかけて、セバスチャン・オジエ、昨年のジャパン覇者であるエルフィン・エバンス、地元の大声援で大きな後押しを受ける勝田貴元の布陣で、トヨタGRヤリス・ラリー1ハイブリッドで挑む。
Mスポーツ・フォードWRT:アドリアン・フルモーは、初参戦となった昨年のジャパンでは金曜日最初のステージで衝撃のクラッシュアウトを喫しているが、今季は安定してポディウムに上がっており、昨年のリベンジを狙う。グレゴワール・ミュンステールは、愛知県・岐阜県でのWRC初開催となった2022年のジャパンでWRC2部門優勝を飾っており、今季はフォード・プーマ・ラリー1ハイブリッドでの初参戦に臨む。
■サポートカテゴリー
ラリー2マシンが対象のWRC部門には、パヤリ(トヨタGRヤリス・ラリー2)、グリアジン(シトロエンC3ラリー2)、ERC三冠を誇るカエタン・カエタノビッチ(シュコダ・ファビアRSラリー2)を含む18クルーがエントリー。
ヤン・ソランス(GRヤリス・ラリー2)とガス・グリーンスミス(ファビアRSラリー2)は、今季WRC2部門勝利をマークしている。クリス・イングラムは、先月英国ラリー選手権でタイトルを獲得したカストロールカラーのGRヤリス・ラリー2で登場する。
TGR WRCチャレンジプログラムの2期生、小暮ひかると山本雄紀(GRヤリス・ラリー2)は、初めてのジャパン参戦。モータースポーツ・アイルランド・ラリーアカデミーのサポートを受けるジョシュ・マクリーン(ファビアRSラリー2)も成長株の若手だ。全日本ラリー選手権の常連からは、2023年王者のヘイキ・コバライネン(GRヤリス・ラリー2)、2024年王者の新井大輝(シュコダ・ファビアR5)、強豪の勝田範彦、奴田原文雄(GRヤリス・ラリー2)、福永修(シュコダ・ファビア・ラリー2 EVO)らが登場する。
FIAの安全規定を適合させたJAF公認車両で参戦するナショナル部門では、PWRC二冠の新井敏弘(スバルWRX S4)と、1994年のWRCチャンピオン、ディディエ・オリオール(トヨタGRヤリス)の夢の対決が実現。66歳のオリオールは、2005年以来のWRC参戦に臨む。コ・ドライバーにはドゥニ・ジローデと、往年の名コンビが日本のWRCイベントに初登場することになる。
すでに今季のWRC3タイトルを決めているディエゴ・ドミンゲスは、フォード・フィエスタ・ラリー3で初のラリージャパン参戦。ジュバンニ・ロッシはルノー・クリオ・ラリー3をドライブする。
■ラリールート
愛知県・岐阜県で開催される3度目のラリージャパンは、引き続き豊田市の豊田スタジアムが拠点に、21SS・302.59kmのターマックステージが設定される。
競技は11月21日、豊田スタジアムのスーパーSSで開幕。22日の金曜日は、WRCの名所となったイベント最長の伊勢神トンネル(23.67km)を含む3SSを2ループした後、日没後に岡崎中央総合公園に設定される岡崎SSSを2回走行する。
土曜日は北部の3SSを2回ループした後、豊田スタジアムでのスーパーSS、2回目の走行で締めくくる。ここまでの2日間、日中サービスは設定されず、タイヤフィッティングゾーンのみで対応しなくてはならない。
決戦の日曜日は、豊田スタジアムでの最後の走行を挟んで、額田(20.23km)、三河湖(13.98km)を2回ずつ走行。三河湖の2回目はパワーステージに指定されている。
今年のラリージャパンには、新ステージも登場しており、新城はルートが一新、笠置山はまったくの新規ステージだ。岡崎SSSもコースを修正して、ナイト走行に。さらに三河湖は昨年とは逆方向で、WRC昇格前にテストイベントとして開催されたセントラルラリー時に使用した方向での走行に設定されている。新城はナローな道と高速区間を組み合わせ、中盤と終盤にはツイスティなセクションも入ってくる。ジムカーナコースで始まる笠置山は、高速だがワインディングな笠置山の山道へと入っていく。
■ラリーデータ
開催日:2024年11月21日〜24日
サービスパーク設置場所:愛知県・豊田スタジアム
総走行距離:1020.03km
総ステージ走行距離:302.59km(SS比率29.7%)
総SS数:21
■開催選手権
WRC
WRC2
WRC3
■マニュファクチャラーズ選手権ノミネートドライバー
[トヨタ・ガズーレーシングWRT]
セバスチャン・オジエ(#17)
エルフィン・エバンス(#33)
勝田貴元(#18)
[ヒョンデ・シェル・モビスWRT]
ティエリー・ヌービル(#11)
オィット・タナック(#8)
アンドレアス・ミケルセン(#9)
[Mスポーツ・フォードWRT]
アドリアン・フルモー(#16)
グレゴワール・ミュンステール(#13)
■2023年ラリージャパン最終結果
1 E.エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1ハイブリッド) 3:32:08.8
2 S.オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1ハイブリッド) +1:17.7
3 K.ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1ハイブリッド) +1:46.5
■近年のWRC開催でのウイナー
2023年 E.エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1ハイブリッド)
2022年 T.ヌービル(ヒョンデi20Nラリー1ハイブリッド)
2010年 S.オジエ(シトロエンC4 WRC)
2008年 M.ヒルボネン(フォード・フォーカスWRC08)
2007年 M.ヒルボネン(フォード・フォーカスWRC07)