2024年シーズンWRC第13戦ラリージャパン(ターマック)は、11月22日(金)に2日目の8SSを走行し、ヒョンデのオィット・タナックが首位を走行。20.9秒差の2番手にエルフィン・エバンス(トヨタ)、1分53秒9差の3番手にアドリアン・フルモー(Mスポーツ・フォード)、1分54秒0差の4番手に勝田貴元(トヨタ)がつけている。
21日木曜日の夜、豊田スタジアムにおいてセレモニアルスタートとスーパーSSを実施。翌金曜日から、本格的なラリーが幕を開けた。この日は愛知県の豊田市と設楽町を舞台とする「イセガミズ・トンネル(23.67km)」と「イナブ/シタラ(19.38km)」、新たに設けられた「シンシロ(17.41km)」を、タイヤフィッティングゾーン(TFZ)を挟んでループ。最後に岡崎市の中央総合公園に設置された「オカザキSSS(2.54km)」を2回走行する8SS、126.00km。1日を通して走り続ける、ラリー最長の1日となる。
コンディションは前日に続き、ドライ。ただ、木々の下にはラリーウイーク前半に降った雨によるウエットが一部残った。主催者は落ち葉をブロワーするなど、路面のクリーンアップに努めたが、苔を含めて非常に滑りやすい路面となっている。シェイクダウンを終えた勝田貴元は「ラリー前に雨が降ったことで、かなり厳しいコンディションになっていました。森の中の道は相当トリッキーになるはずです」と、指摘する。
タイヤ選択は、タイトルを争うヒョンデのティエリー・ヌービルとタナックがハード2本・ソフト3本。トヨタ勢はセバスチャン・オジエとエルフィン・エバンスがハード3本・ソフト2本。初優勝への期待がかかる勝田はふたりよりスペアを1本多く積み、ハード3本・ソフト3本でサービスを後にした。
ラリー最長の23.67kmを走行するSS2。名物伊勢神トンネルを含み、昨年も多くのアクシデントが発生した難関ステージだ。約10分のディレイで先頭のヌービルからスタート、今年も早々に大きなドラマが待っていた。優勝候補のひとり、オジエがスタートから11.7km地点で左フロントをパンク。ステージ内での交換を余儀なくされ、約2分を失い、早々に優勝争いから脱落。また、期待の勝田も左リヤタイヤのスローパンクチャーでタイムロス、1分03秒9差と大きく出遅れてしまった。
ヌービルは、タナックに1.2秒差、エバンスに5.0秒差をつけてベストタイム。初日トップのフルモー(Mスポーツ・フォード)は、グリップ変化の厳しい路面を警戒し、ヌービルから46.9秒差の6番手タイム。これでタナックが、ヌービルに0.5秒差、エバンスに4.2秒差をつけてトップに浮上した。
トップ3が僅差で争う一方、多くのクルーが厳しい路面コンディションに苦しめられることになった。「ソフトで走れる路面ではなかった」と語るグレゴワール・ミュンステール(Mスポーツ・フォード)は、54.9秒差の7番手タイム。昨年、WRC2を制したアンドレアス・ミケルセン(ヒョンデ)はコースオフを喫して10秒ほどを失い、54.9秒差の8番手タイム。この結果、ニコライ・グリアジン(シトロエンC3ラリー2)が総合5番手、サミ・パヤリ(トヨタ・GRヤリス・ラリー2)が総合6番手と、WRC2勢がラリー1勢に割って入るポジションにつけている。
様々なアクシデントが起こったSS2から一転、SS3は上位クルーが順調に走行。「前のSSは、1年目も同じセクションでパンクした場所だった」と振り返ったオジエが、エバンスに1.8秒差、タナックに3.5秒差、ヌービルに4.9秒差のベストタイム。首位タナックとヌービルの差は1.9秒、その後方には2.5秒差でエバンスが迫ってきた。このステージ、6.4秒差の5番手タイムでまとめた勝田は、総合4番手のフルモーから5.1秒差の総合5番手に順位を上げている。
SS4は新城市に設けられたニューステージ。ここで総合2番手につけていたヌービルが突如パワーダウン。大きくペースを落とし、ベストのエバンスから40.8秒も遅れて、3番手にドロップした。「ターボではないはずだ、突然パワーダウンした……」とヌービル。この後はTFZとなっており、フルサービスが受けられないため、厳しい展開になりそうだ。
ベストタイムのエバンスが、ヌービルとタナックをかわして、0.7秒差でトップに浮上した。その後方ではセッティングに苦しみ、ペースの上がらないフルモーを捉えて、勝田が4番手にポジションアップ。以下、ラリー2勢をかわしたミケルセンが6番手、このステージでスピンを喫したミュンステールが7番手。オジエは8番手まで順位を戻している。
稲武どんぐり工房に設定されたTFZを挟んだ、午後のセクション。ステージ上空には雲が立ち込めており、通り雨もあったが、路面を濡らすまでには至っていない。タイヤはトヨタ勢はエバンスとオジエがハードとソフトを3本ずつ、雨を予想した勝田はハード2本・ソフト4本。ヒョンデ勢はタナックがハード3本・ソフト2本、ヌービルがハード1本・ソフト4本を選んでいる。
SS5、タナックがエバンスに14.4秒差をつける圧倒的なベストをたたき出し、首位を奪取。総合2番手に順位を落としたエバンスだが「かなりスリッパリーだったね。このステージでは、タイヤが合わないのは分かっていた」と、納得の表情。ただ、首位のタナックとエバンスの差は13.7秒と小さくない。
SS4でパワーダウンに見舞われたヌービルは、TFZでは修理がかなわず、ペースを落としたまま走行。このステージだけで2分30秒以上も失い、大きくポジションを落とした。これで勝田が3番手、フルモーが4番手、オジエが5番手と、それぞれ順位を上げた。また、6番手を走行していたミケルセンは、スタートから12km地点の右コーナーでコースオフを喫して、立木に激突。ステージを塞ぐ形でストップし、ミケルセン以降の出走順で影響を受けたクルーにはノーショナルタイムが与えられた。
SS6はタナックが連続ベスト。当面のライバルとなるエバンスを6.7秒引き離し、その差を20.4秒にまで拡大した。最初の走行により汚れた路面を警戒したエバンスは「いいフィーリングで走れなかった。このステージはオィットの方がうまく走った」と、肩を落とす。雨を期待し、ソフトを選んだ勝田だったが路面はドライのままとなり、10.4秒差の4番手タイム。タナックから3.9秒差のセカンドベストを刻んだオジエはミュンステールをかわし、5番手に順位を上げた。
林道ステージを締めくくるSS7、日没を迎え、後方スタートは厳しい視界のもとで走行を強いられることになった。エバンスがタナックに0.4秒差のベストタイムをマークし、その差を20.0秒とした。
「まったく路面が見えなかった……」と語った勝田はエバンスから15.8秒も遅れた7番手タイムに沈み、0.8秒差ながらもフルモーに3番手の座を奪われてしまう。
この日の最後は、岡崎中央総合公園に設けられた2.54kmの特設コースを2回走行する。コースがライトアップされるなか、SS8は勝田がベスト。SS9はエバンス、フルモー、勝田が同タイムで並んだ。すべてのステージを終えて、首位タナックとエバンスの差は20.9秒差。「今日はビッグステージ(イセガミズ・トンネル)も問題なく走れたね。明日もニューステージが1本ある。また新たなチャレンジが待っているよ」と、タナックは落ち着いた表情で語る。総合3番手は、勝田をわずか0.1秒上まわったフルモー。総合5番手にオジエ、総合6番手にミュンステールが続いた。午後を通してパワーを失ったまま走ったヌービルは、首位のタナックから7分41秒3も遅れ、15番手に沈んでいる。
競技3日目はSS10〜SS16の7SS、SS走行距離は103.87km。オープニングのSS10は、10月23日の8時05分にスタートする。
WRCラリージャパン SS8後暫定結果
1. O.タナック(ヒョンデi20Nラリー1) 1:26:17.6
2. E.エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1) +20.9
3. A.フルモー(フォード・プーマ・ハイブリッド・ラリー1) +1:53.9
4. 勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1) +1:54.0
5. S.オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1) +2:15.6
6. G.ミュンステール(フォード・プーマ・ハイブリッド・ラリー1) +2:37.4
7. N.グリアジン(シトロエンC3ラリー2) +3:43.6
8. S.パヤリ(トヨタGRヤリス・ラリー2) +4:57.1
9. J.マカリアン(シュコダ・ファビアRSラリー2) +5:55.7
10. 新井大輝(シュコダ・ファビアR5) +5:57.4