イプシロン・ラリー4HFのデビューを発表しラリー界への復帰を表明したランチアが、2025年から立ち上げる若手向けラリーシリーズ、トロフェオ・ランチアの詳細を発表した。年間チャンピオンには2026年にERCに参戦するチャンスを与える。
新型ランチア・イプシロン・ラリー4HFと、ランチアの母国であるイタリアで初シーズンを迎える新型トロフェオ・ランチアによって、2025年は記念すべきモータースポーツとラリーへの復帰のシーズンとなるランチア。若手ドライバーを、国際格式のラリーイベントに引き上げることを目的としたこのシリーズはイタリアラリー選手権(CIAR)の5つのラリーによる6ラウンドで構成され、チャンピオンが35歳未満の場合は、2026年のヨーロッパラリー選手権(ERC)にランチアのワークスチームから参戦する特典が与えられるほか、賞金も用意。さらに各イベントにも、合計2万2500ユーロ(約360万円)以上の賞金が用意される。
各イベントのサービスパークには「ランチア・コルセHFビレッジ」も展開され、ドライバー、業界関係者、ゲスト、パートナー、そしてファンが一堂に会し、世界タイトル10冠を誇りラリーの歴史に数々の忘れがたいページを刻んできたランチアブランドに浸る空間を提供する。
ランチアは、シリーズのプロモーターとして重要な役割を果たす予定で、すでにミシュランやスパルコなどの支援を得ているほか、スポーツ、技術、ロジスティクスの面を管理するLPDイタリア、レース・イベントのスペアパーツを監督するジーノ・モータースポーツのサポートも受ける。
2025年のトロフェオ・ランチアのシリーズ登録は2500ユーロ(約40万円)で、スポット参戦を希望する参加者にはオプションも用意される。登録費用には、公式のランチア・コルセHFレーシングのレーシングスーツや選手権で使用するレーシングウェアが含まれており、いずれもスパルコによるデザイン。さらに各参戦者は、総合順位のほか、3つのカテゴリーのいずれかの対象となる。
ジュニア:25歳未満(2001年1月1日以降生まれ)のドライバー
マスター:25歳〜35歳未満(1990年1月1日〜2000年12月31日生まれ)のドライバー
エキスパート:35歳以上(1989年12月31日以前生まれ)のドライバー
各イベントで各カテゴリーのトップ3、合計9人を表彰し、下記の賞金を贈る。
ジュニア/マスターカテゴリー
優勝:5000ユーロ(約80万円)
2位:3000ユーロ(約45万円)
3位:1500ユーロ(約24万円)
エキスパートカテゴリー
優勝:2000ユーロ(約32万円)
2位:1000ユーロ(約16万円)
3位:500ユーロ(約8万円)
トロフェオ・ランチアにおけるランチアの主な目的は、才能ある若手ドライバーにプロのラリードライバーとしてのキャリアを積むチャンスを与え、成長するための真の機会を提供すること。これを達成するため、トロフェオ・ランチアは参加者に公式ドライバーとなり、ランチア・イプシロン・ラリー4HFのハンドルを握って2026年のヨーロッパ・ラリー選手権に参戦するチャンスを提供する。20万ユーロ(約3200万円)以上の価値があるこの特典は、シリーズの総合優勝者が35歳未満で、ジュニアかマスターのいずれかのカテゴリーに登録されている場合に授与される。一年の終わりには、トリノでセレモニーを開催し、3カテゴリーの勝者にはそれぞれ賞金(ジュニア/マスターに1万ユーロ、エキスパートに5000ユーロ)が贈られる。勝者はこれらの賞金を、50%が現金、50%はステランティス・レーシングショップで使用できるギフト券で受け取ることになる。
各ラリーにフィニッシュした登録ドライバーのトップ20は、トロフェオ・ランチアの総合ランキングとそれぞれのカテゴリーランキングの両ポイントを獲得するほか、ベストパフォーマー、ミキ・ステージ、Rally+とそれぞれボーナスポイントが与えられるチャンスも用意されている。これらのポイントにより、総合ランキングが変動する可能性も残されている。
ベストパフォーマーは、純粋な速さを評価するもので、各ラリーで最も多くベストタイムをマークしたドライバーに5ポイントを与える。ラリーをリタイアした場合でもこのポイントは与えられるため、リスクを負ってプッシュする気概が評価される。ミキ・ステージはランチアの輝かしい過去にちなんだもので、世界チャンピオンに2度輝いたミキ・ビアシオンが由来。ラリーの最終ステージでベストタイムをマークしたドライバーに3ポイントが与えられるため、すべてのドライバーに最後までハードプッシュを促す。Rally+は、どのドライバーもシーズン中に1回使うことの出来るジョーカーカードで、自分が選んだラリーでこれを行使することで、トップ5でフィニッシュできれば総合とカテゴリーの両方でボーナスポイントを獲得することができる。
大きな話題を呼んだランチアのラリー復帰は、新型ランチア・イプシロン・ラリー4HFが、2025年1月時点ですでに世界各地から80台という驚異的な予約注文を受けたことで数字となって表れており、トロフェオ・ランチアへの関心の高さも浮き彫りとなった。一方、競技面での公正さを維持するために、公認取得が3月1日に変更されたことにより、トロフェオ・ランチアの初戦も5月のタルガ・フローリオに延期されることになった。トロフェオ・ランチアはイタリアラリー選手権のカレンダーに併催され、5月9日のタルガから始まり、15日後にラリーデューバリイと続く。7月にはERCも併催される大一番、ラリーディローマ・キャピターレを迎える。ここでは、トロフェオラウンドは2戦分に分割され、チームとドライバー陣にとっては参戦コスト減につながる。夏の休暇を挟み、ラリーデルラツィオで再開、最終戦は名門イベント、ラリーサンレモで迎える。
シーズン開幕前にも、ランチア・コルセHFチームはラリー・レジョーネ・ピエモンテに参加し、ドライバーとファンをもてなすほか、多くのサプライズを用意している。このイベントはシリーズ争いの対象とはならないが、トリノ拠点のランチアと地元ピエモンテ州との強い結びつきを強調し、このシーズンの開幕を盛り上げる前奏曲となり、数週間後に開催されるタルガ・フローリオでトロフィーの公式デビューを飾ることになる。
ステランティスのランチアブランドCEOを務めるルカ・ナポリターノは「イプシロン・ラリー4HFとトロフェオ・ランチアによって、我々は伝説的なラリー活動の歴史を祝うと同時に未来に目を向け、若い才能が頭角を現すための絶好の機会を提供する」とシリーズの意義を語る。
「このプロジェクトは、将来のランチアHFのような市販車にフィードバックされる革新的なソリューションを開発するための、重要な技術的実験室でもある。トロフェオ・ランチアは、すべてのファンに、この歴史的な復活を体験し共有してもらうための機会なのだ」
なおランチアは、シリーズの競技規則、技術規則、登録フォームは数週間のうちに公示するとしている。
2025年トロフィオ・ランチア開催カレンダー
第1戦 5月8日〜11日 タルガ・フローリオ
第2戦 5月30日〜31日 ラリーデューバリイ
第3戦 7月4日〜5日 ラリーディローマ・キャピターレ(レグ1)
第4戦 7月6日 ラリーディローマ・キャピターレ(レグ2)
第5戦 9月13日〜14日 ラリーデルラツィオ
第6戦 10月17日〜18日 ラリーサンレモ