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©WoRDA
ラリーの競技者であるドライバー、コ・ドライバーで構成される世界ラリードライバー連盟(World Rally Drivers Alliance=WoRDA)が、競技の情報露出のなかでドライバー、コ・ドライバーの不適切と言われる言動についての制裁が必要以上に高まっていることに対しての声明を発表した。
技術の発達により、近年のWRCは有料配信サービスRally.TVによって全ステージがライブ配信されるようになり、競技走行が身近に見られるようになったことは、ファン層の拡大にもつながっていると思われる。このライブ配信では、ステージフィニッシュのタイムコントロールでは同サービスのレポーターがトップ勢のドライバーに対しフィニッシュ直後のコメントを求め、その映像も伝えられている。
2月13日〜16日に開催されたWRC第2戦ラリースウェーデンでは、ヒョンデのアドリアン・フルモーがパワーステージフィニッシュ後のRally.TVのインタビューで不適切な発言をしたことが2025年FIA国際競技規定12項2.1.lに抵触するとして、主催者はフルモーに対して1万ユーロ(約150万円)の罰金、さらに追加で2万ユーロ(約300万円)の罰金が12カ月の執行猶予つきで科された。
2025年FIA国際競技規定12項2.1は、「以下の違反があった場合は、本規定に違反したものとみなされる」と明記しており、「以下」についての規定として12項2.1.lでは「いかなる不祥事」とだけ明記されている。
WoRDAのメンバーは、それぞれ自身のSNSでもこの声明を投稿している。
(以下、声明全文)
世界ラリードライバー連盟
「ドライバーの不祥事」に関する世界ラリードライバー連盟の声明
WoRDAのラリードライバーとコ・ドライバーは、GPDA(*編集部注:F1ドライバー連盟)の仲間に刺激を受け、ともに自分たちの意見を表明し、明瞭さを求め、より明るい未来に向けて協力しあうことを表明します。
何よりも伝えたいこととして、どのスポーツとも同じように、競技者は審判の決定に従わなければなりません。この原則を尊重することに、何の疑問もありません。
自分たちは、みんながフルタイムのプロフェッショナルではないかもしれませんが、それでも同じ情熱を持って同じ極限状態に立ち向かいます。うっそうとした森を抜けようと、真夜中に凍結した道路を疾走しようと、危険な砂利道の埃の中を走ろうと、我々はコンディションと戦い、時間と戦い、自分自身の限界に挑みます。
私たちの役割は、競技の枠を超えて広がっています。 今の時代、ラリードライバーとコ・ドライバーは、アスリートであるだけでなく、エンターテイナーであり、コンテンツ・クリエイターでもあり、常にメディアに登場する存在となっています。スペクテイターのスマートフォンからWRCの公式カメラまで、競技前、競技中、競技後、夜明けから夕暮れまで、私たちはどんな時でも撮影に応えることが期待されています。
WoRDAは、FIA会長を含むすべての利害関係者と建設的な方法で協力し、すべての人の利益のためにこの優れたスポーツを振興し、向上させるという責任とコミットメントが我々にあることを常に認識しています。
しかしながら、この数カ月、「隔絶された場所での、意図的ではない、些細な言葉の過ち」に対して課される制裁の厳しさが驚くほど増しており、受け入れがたいレベルに達しています。
私たちは次のことを強く信じています:
・ 一般的な口語表現は、本物の侮辱や攻撃行為と同等に見なされたり判断されることはない。
・ 英語が母国語ではない者は、その意味や含意を十分に理解せずに用語を使用したり、繰り返したりすることはありえる。
・アドレナリンが極端に分泌されたその数秒後に、感情を完璧かつ体系的にコントロールすることを期待するのは、非現実的なことです。
ラリーは極限の競技です。アスリートにとっての危険度、集中力の強さ、日数の長さ、すべてが限界に達しています。
このようななかで、何らかのペナルティを課すことの妥当性や有効性には疑問が残ります。しかも、その法外な罰金は、ラリーにおける平均的な収入や予算とは大きく不釣り合いです。
私たちはまた、このような過大な金額がファンの心に与える一般的な印象や、この業界が金銭を重要視しない業界であることを示唆してしまうことを懸念しています。これはまた、罰金で得たお金はどこに行くのかという根本的な問題をも提起しています。透明性の欠如は懸念を増幅させ、制度への信頼を損なうだけです。
こうした罰則にまつわるネガティブな印象が、いかなる言葉の過失の影響よりもはるかに大きいことは間違いありません。我々は、FIA会長とWoRDA会員が直接コミュニケーションをとり、相互に合意できる早急な解決策を見出すことを求めます。
WoRDAの競技ドライバー、コ・ドライバーのメンバー
Sébastien OGIER
Kalle ROVANPERÄ
Ott TÄNAK
Thierry NEUVILLE
Martijn WYDAEGHE
Jonne HALTTUNEN
Martin JÄRVEOJA
Vincent LANDAIS
Adrien FOURMAUX
Alexandre CORIA
Elfyn EVANS
Scott MARTIN
Grégoire MUNSTER
Louis LOUKA
Takamoto KATSUTA
Aaron JOHNSTON
Mārtins SESKS
Francis RENĀRS
Sami PAJARI
Marko SALMINEN
Josh MCERLEAN
Eoin TREACY
Cándido CARRERA
Gus GREENSMITH
Jonas ANDERSSON
Yohan ROSSEL
Arnaud DUNAND
Oliver SOLBERG
Elliott EDMONDSON
Léo ROSSEL
Guillaume MERCOIRET
Dani SORDO
Julien INGRASSIA
人間としてあることは、すべてのスポーツの中心です。安全、行動、尊敬、そして真の物であること、これが私たちが守るべき価値観です。