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全日本ラリー唐津:勝田範彦/保井隆宏がGRヤリス・ラリー2で開幕2連勝

©Jun Uruno

2025年シーズン全日本ラリー選手権第2戦「ツール・ド・九州2025 in 唐津」が、4月11日(金)~13日(日)にかけて、佐賀県唐津市を拠点に開催された。トップカテゴリーのJN-1クラスは勝田範彦/保井隆宏(トヨタGRヤリス・ラリー2)が優勝。2位にヘイキ・コバライネン/北川紗衣(GRヤリス・ラリー2)、3位に鎌田卓麻/松本優一(シュコダ・ファビアR5)が入った。

■レグ1
開幕戦三河湾から1カ月半のインターバルを経て迎えた唐津は、唯一の九州ラウンドとして佐賀県唐津市を舞台に開催される。今年も「ボートレースからつ」の駐車場 にサービスパークが置かれるが、スペシャルステージの構成が大幅に刷新されることになった。初日は「SAGISOU(5.15km)」、「AMANOGAWA(14.45km)」、「SAYOLAKE(5.56km)」の3SSを、サービスを挟んでリピートする6SS、50.32km。「毎回のように同じステージを何度も使うよりも、変化を持たせる方が新鮮に挑むことができる」と、新井敏弘は新しいルート構成に歓迎のコメントを残している。

三河湾では初日早々に駆動系トラブルでリタイアを余儀なくされた新井大輝/立久井大輝は、唐津までのインターバルにシャシーをオーバーホール。フレッシュアップしたシュコダ・ファビアR5を持ち込んだ。また、新井敏弘/小坂典嵩は、スバルWRX VBHのリヤサスペンションに大幅な改良を施し、スピードで先行するR5/ラリー2勢に挑む。

初日は一部に濡れた箇所が残っているものの、コンディションはドライ。SS1は開幕戦で悔しいペナルティを科されたコバライネンが、勝田に0.5秒差のベストタイムを刻む。5.1秒差の3番手タイムに新井大輝、6.0秒差の4番手タイムに奴田原文雄/東駿吾(GRヤリス・ラリー2)、6.5秒差の5番手タイムに鎌田、7.2秒差の6番手タイムに福永修/齋田美早子(シュコダ・ファビアRSラリー2)。新しい足まわりに違和感を訴える新井敏弘は、このステージだけで12.5秒も遅れてしまった。

この日最長の14.45kmを走るSS2は勝田がコバライネンに3.4秒差の一番時計をマークし、トップに躍り出た。新井大輝は思うようにペースが上げられず、8.7秒差の3番手タイム。鎌田はインカムにトラブルが発生し、17.1秒差の4番手タイムとこちらも優勝争いから一歩後退している。

勝田は続くSS3でもコバライネンを0.2秒凌ぐベストを刻み、2番手のコバライネンに3.1秒差をつけて、午前のループを首位で折り返す。23.3秒差の3番手とトップの背中が遠のいた新井大輝は「これまで積み上げてきたセットアップがリセットされてしまった……」と肩を落とした。その後方、31.5秒差の4番手に鎌田、33.6秒差の5番手に奴田原、36.2秒差の6番手に福永のオーダーで続く。

サービスを挟んだ午後のセクション、「午前中は初めて走るステージも多かったし、慎重に走った」と語っていたコバライネンがSS4で勝田に3.1秒差のベストをたたき出し、同タイムで首位に並ぶ。さらにコバライネンはSS5とSS6でも勝田を上まわり、これで3連続ベストタイム。初日をトップで走り切った。コバライネンの先行を許したものの、僅差で喰らいつく勝田は2.8秒差の2番手につける。

午後もマシンバランスの悪さを訴えた新井大輝は、37.5秒差の3番手。鎌田が57.5秒差の4番手、奴田原が59.6秒差の5番手、福永が1分4秒6差の6番手。鎌田から福永は10秒差以内にひしめいており、最終日にも順位が動く可能性がある。厳しい状況が続く新井敏弘は、2分25秒0差の7番手でこの日を終えた。

初日首位のコバライネンは「午後はフロントグリップ重視にセッティングを変えたことで、かなり走りやすくなった。明日はウエットになりそうだけど、このペースをキープしていきたい」と、笑顔で振り返った。対する勝田は「ヘイキさんに捲られちゃいましたね。自分としても、ちょっとドライビングミスが多かったです」と、悔しさをのぞかせた。

JN-1クラス初日首位の勝田範彦/保井隆宏(GR YARIS Rally2) /Jun Uruno

JN-2クラスは、開幕戦を制した山田啓介/藤井俊樹(トヨタGRヤリス)がSS1でトップに立つと、SS3まで3連続ベストタイムを刻む。小泉敏志/村山朋香(GRヤリス)がSS4でベストをマークするが、SS5は山田が獲り返し、SS5を終えた段階で4.9秒差という僅差の首位争いが展開される。しかし、この日を締めくくるSS6で山田のマシンに駆動系トラブルが発生。ドライブシャフトが外れた状態でなんとかステージを走り切ったものの、フィニッシュ後にレグ離脱を決めた。

この結果、小泉がクラス2番手の三枝聖弥/木村裕介(スバルWRX STI)に55.2秒の大差をつけて初日を首位で折り返した。3番手に、このイベントから2024年型のGRヤリスを投入した貝原聖也/西﨑佳代子、4番手に大倉聡/豊田耕司(GRヤリスDAT)、5番手にMORIZO Challenge Cup(MCC)に参戦する大竹直生/橋本美咲(GRヤリス)がつける。

首位の小泉は「山田選手が止まったことで、トップに立ちましたね。SS5はスタートでストールしたことで2秒くらいロスしましたが、午前中よりも5秒ほどタイムを上げることができました。大きなマージンができましたが、今のセットアップでウエットを走っていないのが少し心配です。初優勝が見えてきましたが、最後まで気を抜かずに頑張ります」と、慎重にコメント。初日、トップを争うふたりから大きく遅れてしまった三枝は「自分のペースノートが合っていなくて、攻め切れない部分がありました。その部分をつめていければ、上の2台にも迫っていける実感はありました」と、振り返っている。

JN-2クラス初日首位の小泉 敏志/村山 朋香(DLドリームドライブGRヤリス)/Jun Uruno

トヨタGR86/スバルBRZによって争われるJN-3クラスは、山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)が開幕2SSで連続ベストタイムをマークし、トップに立つ。SS3では、山口清司/丸山晃助(GR86)がトップタイム。しかし、午後に入るとSS4、SS5で上原淳/漆戸あゆみ(スバルBRZ)がベストタイムを連発。SS5は、2番手タイムの山本を10秒以上引き離す渾身の走りで、ここで山本に4.1秒差の2番手に浮上する。続くSS6は山本がこの日4本目となるベストタイムでまとめ、2番手の上原に5.5秒をつけて初日を終えた。13.7秒差の3番手に山口、4番手には昨年末の「全日本フル参戦から引退」から、早くもスポット参戦を開始した曽根崇仁/小川由起(GR86)がつけている。

僅差ながら、トップで初日を終えた山本は「2ループ目は、上原選手がどんなタイヤを使っていたかは分かりませんが、自分はそのままユーズドで走りました。後半の低速コーナーで旋回がかなりキツかったので、その辺りで差をつけられてしまったのかもしれません。自分のタイムも午後は落ちていたので、それが悔しいですね。明日はウエットが残り、路面がトリッキーになると思いますが、攻め続けるしかないのです」と、上原を警戒する。対する上原は「午後も変わらないセッティングで走りました。SS4を終えた時点で『僕に全然近寄ってこないじゃないですか』と山本選手がけしかけてきたことが、僕に火をつけました(笑)。明日はウエットだったら、ひっくり返せる可能性がありますが、リスクはこっちの方が大きいでしょう」と、コメントする。

JN-3クラス初日首位の山本悠太/立久井和子(SammyK-oneルブロスYHGR86)/Jun Uruno

スズキ・スイフトスポーツによって争われるJN-4クラスは、これまで二度の全日本タイトル獲得経験を持つ高橋悟志/箕作裕子、全日本で2勝を記録している筒井克彦/本橋貴司、地元九州勢の黒原康仁/松葉謙介による三つ巴の戦いとなった。SS1で筒井、SS2で黒原、SS3で高橋と午前はステージウインを分けあったが、ここで首位に立ったのは黒原。SS5は前田宜重/勝瀬知冬がベストタイムをマークし、その後のSS5、SS6は高橋がベストを並べこの日最多ベストを刻んだが、首位で折り返したのは黒原。高橋に3.0秒差をつけて、全日本初優勝に向けて弾みをつけた。15.9秒差の3番手に筒井、4番手には鮫島大湖/船木佐知子(スズキ・スイフトスポーツ)がつけている。

高橋の追い上げをしのぎ切り首位で折り返した黒原だが「なんとかトップを守りましたね。ただ、午後は欲張りすぎて無理をしてしまった印象です。SS5ではオーバースピードで溝に落ちたりもしました。最後も頑張りましたが、あまりタイムが伸びていなかったです」と、反省のコメント。2ループ目にタイムアップを果たした高橋は「午後は問題なく走れましたね。タイム差を縮められて良かったです。セッティングだけでなく、少し自分のドライビングを変えました。意識を変えるだけで、こんなに変わるんだと驚いています。明日は1本目から気合いを入れて走ります」と、最終日に逆転を誓う。

JN-4クラス初日首位の黒原康仁/松葉謙介(itzz YH TCSR AN スイフト)/RALLYPLUS

JN-5クラスは、河本拓哉/有川大輔(マツダ・デミオ)が初日に行われた6SS中4SSでベストタイムを重ね、ベテランの小川剛/山本祐也(トヨタ・ヤリス)に32.2秒、前回のリタイアもあり「絶対完走」を掲げて走る中溝悠太/佐々木裕一(ヤリス)に35.8秒の大差をつけて、初日を首位で折り返した。

ドライコンディションで素晴らしい走りを披露した河本は「今日はいい走りができましたね。100%近くで走っていますが、しっかりとコントロールできています。マシンの調子もすごく良くて、頑張らなくてもタイムが出る印象です。明日はウエットで今日のようにはいかないと思うので、このリードを使って無理せずいきたいです」と、自信をのぞかせた。腰痛を抱えたまま走ったという小川は「一週間前にぎっくり腰をやってしまい、ブロック注射を打って走っています。なんとか労りながら最後まで走り切れましたし、なんとかおじさんパワーで、2位まで上げることができました(笑)」と、安堵の表情を見せている。

JN-5クラス初日首位の河本拓哉/有川大輔(DL CUSCO WM TWR OTS TAKATAデミオ)/Jun Uruno

今シーズンから従来のJN-6に代わり「駆動方式を問わず、気筒容積が2500cc以下のAE車両」という新たな環境対応クラスへと変更されたJN-Xクラス。初日、SS3を終えてモータージャーナリストの清水和夫/山本磨美(トヨタ・ヤリス)が首位に立つが、今シーズンは舗装ラウンドでトヨタRAV4 PHEVをドライブする天野智之/井上裕紀子が、SS5で清水を逆転。2番手の清水に10.9秒差をつけて初日をトップで終えた。3番手には海老原孝敬/蔭山恵(ホンダ・フィット)が続いている。

序盤は清水の先行を許しながら、しっかりと首位で折り返した天野は「ウエットとなりそうな最終日に向けて、10秒ちょっとのアドバンテージでは厳しそうです。車重があるのでウエットや低μ路は本当にキツい。場合によっては、通過するのも難しい路面もあるはずです。午後、ドライアップした路面でタイヤが持つかですね。運次第、タイヤ次第です」と、冷静に分析。天野の逆転を許した清水は「午後、天野選手にドンと負けてしまったのは、向こうがタイヤを変えたことが大きいでしょう。それでも以前を考えると、ずいぶんと差が縮まった気がします。ペースノートもばっちりです」と、自身の成長を語る。

JN-Xクラス初日首位の天野智之/井上裕紀子(TRT・DL・RAV4 PHEV)/Jun Uruno

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