東京大学海外ヒストリックラリープロジェクト「Team MUSASHI」が、参戦イベント変更の報告を兼ねた中間報告会を開催した。会場にはホンダ学園と東京大学のTeam MUSASHIメンバーのほか、レストアに協力した車両オーナー、エンジニア、ドライバーなどが集まり、同プロジェクトにとって全く新しいSSラリー挑戦に向けて気持ちをひとつにした。
まず、今回初投入となるSB1シビックの板金、塗装などを担当したホンダ学園の阿部さんがレストア作業について報告した。「古い車両ということでレストアのためのパーツがない中で、全国のシビックオーナーさまにご協力頂きました。特に、板金、塗装に関してはボディ自体の劣化も含めての対応が必要で、問題がないよう先生たちのダブルチェックも受けながらの作業となりました」と、このラリープロジェクトが普段の勉強では学べない貴重な経験となっているという。
東京大学側は基本的にすべて学生が中心となってレストアし、様々な関係者の協力を得て進めている。SB1シビック1号車を担当した川田さんは、「11月にミッショントラブルに陥り、5速を抜いてホンダ学園に持ち込み5速の修理を済ませましたが、未だに原因は不明」とまだまだ問題解決までは時間がかかりそうな様子だ。
浜松に眠っていたサーキット仕様車両と札幌の車両を合わせて1台にしたSB1シビック2号車は「キャブレター交換時にラジエター液がエンジンに入ってしまったり、燃料タンク内がサビついていたためにフィルターが詰まってしまったりと、トラブルをひとつひとつ解決していきました。ロールバーはオリジナルボックスさんの協力で作成しています」と担当の矢島さんが進捗を語る。
学生たち自身も知識や技術を学ぶために努力している。今回は、ネッツ富山の協力で整備合宿などを体験。TE27レビン担当の小林さんは「キャブレターやトランスミッションに実際に手で触れながら仕組みを理解できたのが貴重でした」と意義ある体験だったと語る。この車両は、2013年に使用した車両のパーツを2014年に移植して作成したものだが、「クラッチディスクのダンパーが破損してしまって、東京モーターショーのパレードランでは止まってしまいました」などのハプニングも経験。そのたびに少しずつ、学生自身も成長しているようだ。
江本隆司氏からレンタルしているもう1台のTE27レビンは、ステアリングやロールバーなどの装備を新たに整備。エンジンに課題を抱えていたが、担当の森山さんは、「バキューム進角を復元したり、ディストリビューターの調整による点火時期の調整、キャブレターの分解・洗浄などを行って、暖気と高回転維持で巡航することでだいぶ調子が良くなりました」と、さすがは工学部らしいメンテナンスでマシン性能を取り戻したケースを報告した。
そしてA73ランサー担当の鵜殿さんは、「プロペラシャフトがかなり劣化しているという問題を抱えて、公道走行も難しい状況。パーツ自体はもう入手困難だったのですが、イベントで出会った方に貸していただいてなんとかなりました。ただ、車検時に排気もれで3回もかかってしまい、『こういうクルマは世に出したい』と言ってくれた車検員の方からも、『なんでちゃんと直さないんだ』とお叱りを受けたりして凹みました」といったエピソードも紹介。「ヒストリックカーイベントなどに参加して走行距離を稼いでいますが、おかげでいろいろな問題点も見えてきたので、ひとつひとつ解決していきます」と今後の整備にも意欲を見せる。
最後にリーダーの春日さんが、今回の参戦イベント変更について報告。タルガ・バンビーナ、タルガ・タスマニアを選んだ理由については、「モンテカルロ参戦中止をご連絡した際に、車両のオーナーさんやメカニックの方から『次はどうする?』という前向きな言葉をいただき、オセアニアでのラリーについてもご提案いただきました。以前に出場したスペインなどのヨーロッパのラリーもあったのですが、ヨーロッパ全体がテロの危険性を持っているので、影響が少ないオセアニアに決定しました」と経緯を説明。ただし、「両方ともSSラリーなので、装備はまだまだ変更しなければなりません。一番の問題はロールケージ。現在はボルト止めタイプですが、頑丈な溶接タイプにこれから交換していきます。タイヤについてはすでにヒストリック用にスタッドレスなどをご提供いただいてしまったので、SSラリー用は購入することになります。一番の問題はロジスティックスで、オセアニアへの輸送についてはまだこれから相談という段階です。当初の予定から大幅に変更されたことで、資金面でもかなり厳しい状況ですので、ぜひ様々なかたちで新たなスポンサーの方にもご協力いただきたいです」とコメントした。
過去にない規模の変更と、過去最大の5台というレストアを進めている今年のTeam MUSASHI。多くの人々の思いを乗せて、初戦のタルガ・バンビーナは3月5日にスタートする。
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