大御所WRCメディア、マーティン・ホームズが伝えるWRCポルトガル戦直前のWRCチーム近況。
シトロエン
チームは初めて、2017年スペックのマシンを4台投入する。ミーク、ブリーン、ルフェーブルはコルシカ戦で使用したのと同じマシン(WRCノミネートはこの3人)を使用。加えて、カリッド・アル‐カシミはポルトガルのテスト車(シャシー7)を使用する。
ポルトガル戦向けの事前テストは、アルゼンチン戦の前にポルトガルで行っており、ポルトガル戦の前週にサルディーニャで続きが行われた。アルゼンチンで不運に見舞われたミークは「アルゼンチンはワイルドだった。こんなことが起こる時もある。忘れるしかない」とコメント。テクニカルディレクターのローラン・フレゴシによれば、同じシャシーを使用する予定はなかったので、ミークのアルゼンチンでのクラッシュはポルトガルのプリペアには影響しないとのこと。
最近の開発作業では、ダンパーとトランスミッションのセットアップに専念。シトロエンはラリーポルトガルで過去に8勝を収めており、これはランチアと並ぶ数字だ。昨年は、クリスが予想を覆しての勝利を収めており、チームにとっては特別な思い出の残るイベントだ。
ヒュンダイ
ダニ・ソルドはコルシカで使用したマシン(001)を駆る予定だが、ヘイデン・パッドンとティエリー・ヌービルは新しいマシン(004と006)を投入する。
アルゼンチン戦では、最終的なリザルトは満足できる内容であったものの、様々な問題にも直面した。説明として興味深いのは、スチュワードとのトラブルにつながったヌービル車のドアミラー交換はなぜ必要だったのか、という件に関して、何度かの衝撃で両側のミラーが破損したため、金曜日の午後はずっとドアミラーなしで走行していたという。伝えられていたオイルブリーザーの問題は、ブリーザーの取り付け方法によるものだった。奇妙な話だ。ヌービルは土曜日の日中サービスで、破損されている可能性があるため念のためにギアボックスを交換し、チェックを行っていた。その夜には、メカニックが再び取り外したが、そのまま戻している。
ポルトガルの事前テストは、4月中旬にアマランテ地方でヌービルとソルド(アンドレアス・ミケルセンが参加したのもこの時)が行ったが、アルガニルでもテストを行い、パッドンが2日間、ソルドとヌービルが1日ずつ参加した。アルゼンチン以降、テクニカルな変更は行われていない。ポルトガル戦では2014年にソルドが、ヒュンダイ・モータースポーツに初めてのステージ勝利をもたらした思い出が残っている。
Mスポーツ
セバスチャン・オジエには新しいシャシー(No.7)を投入。WRC2では、ティーム・スニネンとファーガス・グリーンスミスは新型のフィエスタR5 Evo2を駆る一方で、エリック・カミリは旧車をコンバートした。Mスポーツ・ポーランドでも、ルーベとバタネンにR5マシンをプリペアしている。
アルゼンチンについては、予想よりもラフだったとしており、オジエ車がデイ2に突然、ドライバビリティが低下したことについての説明はなかった。オストベルグに発生したオイル漏れのトラブルは、セットアップの過程による不備だったと特定。
ポルトガルでは、新しいスペックのダンパーを投入。ポルトガルの北部にある、昔から使われているステージで5日間のテストを行い、ドライバー3人が全員参加した。
ポルトガル戦では2014年、エントリーの49%をフォード・フィエスタが占めるという快挙を果たしている。今年もWRC部門で40%、WRC2部門では実に80%でフィエスタが揃う。
好奇心をそそる思い出としては、2010年、ヤリ−マティ・ラトバラが大クラッシュを喫したマシンが、同じ年のラリーフィンランドで勝っている。これ自体は珍しくないかもしれないが、フォーカスの強靭ぶりを物語っていると言えるだろう。
トヨタ
ポルトガルでは、エサペッカ・ラッピがチームから待望の実戦デビューを果たすことが決まり、初めて3台体制でエントリーする。2台はコルシカと同じマシンを使用、もう一台は新車だ。
アルゼンチンでは、ユホ・ハンニネンのマシンに、制限時間内に修復を完了させるのが非常に難しいエリアのトラブルが発生。ラトバラ車のオーバーヒートは、ロードセクションで不正確に機能して温度が上がっていたデバイスに起因していた。
ポルトガル向けには、実戦のステージに非常に近い性格のコースで2日間のテストを実施。最近のテストでは、特製の軽量パーツが投入されている。
チーム代表のトミ・マキネンにとって、ポルトガルでの最高の思い出は2001年。最悪の天候だったが、自身100回目のWRC参戦となった節目のイベントを制した。この年は、ポルトガルのWRC戦が北部で開催された最後の年となり、以降、拠点はアルガルベに移った。
(Martin Holmes)