【Martin’s eye】グラベルグランプリのフィンランド、速さとの葛藤 – RALLYPLUS.NET ラリープラス
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【Martin’s eye】グラベルグランプリのフィンランド、速さとの葛藤

©CITROEN / @World

大御所WRCメディア、マーティン・ホームズが、長年の経験に基づく独自の視点で切り込むMartin’s eye。今回は、伝統的に速度が高く「グラベルのグランプリ」とも称されるラリーフィンランド、2017年規定のWRカーでの初の大会で懸念される速度問題について、イベントのクラーク・オブ・ザ・コース、カイ・タルキアイネンからのコメントとともに考察する。


WRカーがよりパワフルになった2017年、ラリーフィンランドの速度はFIAが懸念するほど高くなり過ぎるのかどうか、注目を集めている。

今年のスウェーデンでは、オィット・タナックが初めて平均時速137.8kmでステージを勝利したことを受けて、ラリースチュワードが即座に対応し再走を見送る決断を下している。同様のことは、2014年のラリーポーランドでも起きており、この時はマッズ・オストベルグが、平均時速129.3kmでステージを勝利している。昨年のフィンランドの覇者、クリス・ミークのイベント全体の平均速度は、現在よりもパワーが劣る2016年スペックのマシンでありながら、126.6kmだった。今年のフィンランドで、ステージキャンセルが続出する可能性はないのだろうか。イベントのクラーク・オブ・ザ・コース、カイ・タルキアイネンに、新規定マシンで走るラリーフィンランドのステージは、速度が高過ぎると感じるのか、考えを聞いた。

カイ・タルキアイネン(=KT): 私が考えるに、いつの時代でも、ラリーとは人々が可能な限り速く走る競技であった。我々は、FIAセーフティ委員のミシェル・ムートンと、2017年に予定しているルートのいくつかのセクションで予想される速度について、様々な問題を既に話し合ってきた。我々がルートに大きな変更を行わなくてはならないかどうかは、FIAが将来に向けてどんなポリシーを持っているか次第だった。

我々は適した道を選んでラリーエリアを設定している。遅い道を見つけるのは、簡単のように聞こえる。遅い道もあるが、たいていがソフトなので荒れやすく、距離も短いことが多い上に、他の道とうまくつなげられないことがほとんどだ。つまり、ショートのステージを検討しなくてはならないということになる。それに、短い道はコース脇のスペースもあまりないので、観客や観客用の駐車場のスペースを確保することが非常に難しい。我々にとっては、(遅い道を見つけるというのは)まったく理想的な解決方法ではなく、将来への影響も気になるところだ。

Martin Holmes Rallying

マーティン・ホームズ(=MH): ステージの平均速度を下げることが課題なのだとすれば、シケインを作る方法はどうなのか。

KT: 私は、あまりシケインを作りたくはない。ドライバーやチームからも話を聞いたが、どちらもシケインはあまり好きではないようだ。シケインのようなもので、代わりになるものがないか考えている。チームとは、ラダーをベースとした、視覚的なシケインについても話した。そこでは、マシンは制限速度までスピードを落とさなくてはならないが、走行はそのまま続けられる。F1でのピットストップのアクセス路のようなものだ。

彼らは、この方法をどこかで試したいと思っている。あちこちにシケインを作るのは理想的な解決策ではないことに彼らは気付いているからだ。困難な上に費用もかかるし、マシンを壊すことにもなる。誰もができる限り速く走ろうとするのだから、何かモノがあればヒットもする。FIAとも話をしたが、彼らもこの問題に関しての最終的な解決方法としては、シケインを考えていない。

MH: 昨年は、ハルジュの市街地ステージで、堅牢なトラクターをシケイン代わりに置いていた。あのステージは、ラリーの中で最も速度が低いステージだった。

KT: あれが不必要な危険要素だったとは、考えていない。あれは、我々が作ったシケインの中で、初めて誰もヒットしなかったものなんだ! みんなそれをリスペクトしてペースダウンし、それを避けて走行した。目的を果たしたんだ。F1でのビアンキのアクシデントについてはみんな心配しているが、あの場合は、あるべきではないところにあった物にマシンがヒットした。ハルジュの場合は、そこにトラクターがあることをみんなが把握していた。


シケインはステージの特定区間で速度を低下させるだけなので、平均ステージ速度統計は完全なセキュリティの実態を示さないという懸念に対応するものにはならない。FIAはパワフルなラリーマシンの探求に全力を尽くしたが、ラリーが安全を維持するためにどのように調整するかについては、納得のいく解は得られていない。そして今、新しい状況に対応するための対応を迫られている。
(Martin Holmes)



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