4月26日(木)から29日(日)にかけて、アルゼンチンのヴィラ・カルロスパスを拠点に開催されるWRC第5戦ラリーアルゼンチン。大御所WRCメディア、マーティン・ホームズによるラリー直前のWRCチーム近況をお届けしよう。
■シトロエン
コルシカではテクニカル面でのトラブルはなく、R5マシン(C3 R5が実戦デビュー)に発生したブレーキトラブルは原因が特定できており、解決策も見つかっている。
アルゼンチンでは今季初めて、WRカー3台体制でのエントリーとなる。プレイベントテストはポルトガルで5日間(クリス・ミークとクレイグ・ブリーンが2日ずつ、カリッド・アルカシミが1日)行った。
ミークはメキシコで自身が使用したマシン、ブリーンはメキシコのローブ車、アルカシミはスウェーデンのオストベルグ車を使用。3台とも通常のグラベルスペックでアルゼンチンに空輸された。
今回シトロエンに試練となりそうなのは、高い標高(2000m程度)と、先行車が走行した後に地面から崩れた石が露出すること。
一方、アダプタは、マッズ・オストベルグがポルトガルとサルディニアでC3 WRCをドライブすることを発表。シトロエン・レーシングがSNSを通じて伝えている。
■ヒュンダイ
コルシカでは苦戦を強いられたヒュンダイ・モータースポーツは、ドイツ戦、スペイン戦のプリペアとして特別にターマックテストを計画した。ポルトガルのアマランテ近郊で3日間に渡って行われ、3人のドライバーが1日ずつ走行。パッドンではなくソルドが参加している。それぞれがコルシカで使用したマシンを空輸して使った。
アルゼンチンでの試練となるのは、予想しにくい天候(高地では霧の可能性もある)。サービスの度にステージで受けるダメージの修復が常に必要になることと、6週間の間にWRCが3戦続く真っただ中の遠征イベントは、ロジスティック面でもかなり緊張を強いられる。
ヒュンダイ・モータースポーツは、過去2年間、アルゼンチンを制しており、昨年はティエリー・ヌービル、2016年は今回は欠場となるヘイデン・パッドンが自身初勝利を飾っている。
■Mスポーツ・フォード
チームにとっての朗報は、メキシコでのアクシデントによる負傷でコルシカを欠場していたダニエル・バリット(エルフィン・エバンスのコ・ドライバー)が復帰することだ。
コルシカでブライアン・ブフィエ車に発生したエンジントラブルは、現在も調査中。私の記憶では、MスポーツのWRカーでエンジントラブルが発生したのは、これが初めてだ。
アルゼンチン向けのプレイベントテストはポルトガルで行われ、各ドライバーが1日ずつ走行。セバスチャン・オジエはメキシコで使用したシャシーNo.87、エバンスはコルシカで使用したシャシーNo.8、テーム・スニネンはシャシーNo.4(ブフィエがコルシカで使用)を駆る。いずれも通常のラフグラベルスペックとなっている。この3台に加え、チリのアルベルト・ヘラー(ペドロの弟)用にR5マシンがヨーロッパから空輸された。その他にMスポーツからエントリーしているR5マシンは、メキシコから直接アルゼンチンに移送されている。
R5マシンのエンジンは、人工気候室などを含む重要な開発が行われた。アルゼンチンはMスポーツにとって、相性の悪いイベント。2002年以降勝利がなく、現在のMスポーツ・フォードのドライバーには、アルゼンチンでの優勝経験を持つ者はいないが、昨年はエバンスが0.7秒の僅差で勝利を逃していることは記憶に新しい。
■トヨタ
コルシカで序盤、パフォーマンスが奮わなかった理由については、グリップが予想よりも低かったことを挙げている。セットアップが合っていなかった。
アルゼンチン向けには3人のドライバー全員が、サルディニアで5日間のテストを行っている。アルゼンチンで使用するヤリスWRCは、3台ともメキシコで使用したマシンで、ヨーロッパから空輸された。サスペンションはラフグラベルに対応するように準備されている他、川渡りは悪天候になると途端に深くなる可能性もあるので、その対策も施されている。
アルゼンチンで優勝経験があるのは、ヤリ−マティ・ラトバラのみ(2014年)だが、トヨタ・ガズーレーシングWRTのディレクター、トミ・マキネンは、1996‐1998年に3連覇を果たしている。トヨタがアルゼンチンで勝利を飾ってから、24年が経過している。エサペッカ・ラッピにとっては、これが初めてのアルゼンチン参戦となる。
(Martin Holmes)