大御所WRCメディア、マーティン・ホームズが、長年の経験に基づく独自の視点で切り込むMartin’s Eye。10月4日に開幕するWRCラリーGBを前に、昨年自身初のWRC優勝を地元ウエールズで飾ったエルフィン・エバンスに、母国で開催される選手権の名門イベントについて聞いた。
9月22日、英国で行われたラリーデイ、ゲストドライバーの1人に、MスポーツのWRCドライバー、エルフィン・エバンスがいた。ウェールズ・ラリーGB(10月4‐7日)が目前に迫り、準備も佳境に入る中、2017年のこのラリーの勝者に今年の展望を聞いた。英国ウエールズ在住と、不安定な天気の中で生まれ育ったエバンス。昨年のラリーGBも、ウエットでぬかるんだコンディションの中、タイヤの威力を最大限に引き出して自身初のWRC勝利を母国で飾った。そのエバンス、今年のイベントで直面する天気について、どのように予測しているのだろうか。ドライ?それともウエット?
エルフィン・エバンス(EE):正直な気持ちを言うと、自分の走行順を考えればドライになって欲しいね。でも、それは期待だけで、実際にはそうならないだろう。完全ドライのラリーGBなんて、妙な気持ちになると思うよ。先週、英国は雨続きだったが、来週の天気予報はドライだ。夏の間に雨が降って、コースサイドにはディッチができているので、道はすごく手強くなっている。だから、どうなるかな。
今年はかなりルート変更が行われているが、いいことか、それともやりにくいか。
EE:何かが変わるのは、いつでもいいものだよ。毎年毎年、同じステージに戻るラリーは、うんざりしてくる。でも、今年の金曜日のステージの性格は、これまで見てきたようなドライバー主体のコースにはならないと思う。ウエールズの北部(初日と最終日)のステージは、ステージのリズムのいい雰囲気が減っている。特に、ターマック区間は、コーナーのカットが重なればかなりダーティになるかもしれない。
占有された公道の区間を使うことについては、どう思うか。ラリーにとっていいことになると思うか。
EE:今年使用する区間の形状がそのまま使われようと、いいステージにするために工夫しようと、いいことになるポテンシャルはあると思う。ウエールズ中部のDoveyとGartheiniogを短いターマック区間でつなげて1本のロングステージにできればいいのにと思っていたが、超ロングステージがうまくいかないこともある。もちろん、メディアやファンの立場からすれば、長いステージが数本よりも、短めのステージがたくさんある方がエキサイティングに感じられるのだとは思う。でも、DoveyやGartheiniogのような性格のステージなら、ロングでも素晴らしい腕試しになると思うんだ。
昨年(2017年)を振り返って、イベントの思い出や興奮はまだ残っているか。
EE:やっと、WRC初優勝を収めることができて、本当に安心した。昨年はアルゼンチンで目前にまで迫っていたので、あんな僅差(0.7秒!)で逃したのは本当に悔しかった。もちろん、みんなとは違ったタイヤを使っていたので、一筋縄ではいかなかった。あのイベントは、タイヤマネジメントが鍵になった。土曜日の計110kmのループでは限界までタイヤを使ったが、それでも走り切った。家族や友だち、みんなのいる前で母国で優勝できたのは、もちろん最高の気分だったよ。
ここ2シーズン、Mスポーツの大黒柱といえば、チームメイトのセバスチャン・オジエの存在だ。オジエと過ごす時間はどうか。
EE:うまくやっているよ。世界選手権5連覇王者と一緒に働いていると、常に何かを学んでいる。ほぼどのラリーでも、彼から何かしら新しいことを得ているよ。それがささやかな時もあるが、どれも詳細なことでそれの積み重ねだ。彼のタイムマネージメントの手法や、取り組む姿勢とかね。彼の才能やそれまでの経験によるところもあるが、確実にチームに貢献している。
トルコでは、セバスチャンに選手権ポイントを与えるために、快く犠牲になった姿を見て感銘を受けた人も多い。
EE:難しい決断だったよ! 自分たちのラリーは金曜日にほぼ勝負が終わっていたから、心の中ではチームが最優先したいことをしなくてはならないと思っていた。残り3戦では、自分たちの選手権順位を上げるためのことが出来るようにしたいね。最終的には、自分はチームに雇われてドライブしているのだし、彼らの決定をリスペクトしなくてはならない。
最後に、来年については。
EE:分からないね。まだ何も決まっていない。Mスポーツでは、いい活動ができた。もちろん、このまま続けられたら最高だね。鍵になるドライバーがまだ決断していない、あるいは決断を発表していないので、それを待つしかないんだよ。自分にとっては、何としても続けたい。2018年は自分にとって、とても厳しいシーズンになっているので、2019年はいい流れにしたい。
(Martin Holmes)