【Martin’s Eye】ついに実戦登場のポロGTI R5、WRC2プロシリーズにも食指か – RALLYPLUS.NET ラリープラス
現地速報がすぐわかる! バックナンバーが読み放題。ラリプラLINE限定コンテンツ配信中

【Martin’s Eye】ついに実戦登場のポロGTI R5、WRC2プロシリーズにも食指か

©Volkswagen

大御所WRCメディア、マーティン・ホームズが、長年の経験に基づく独自の視点で切り込むMartin’s Eye。WRCスペインで待望の実戦デビューを果たしたフォルクスワーゲン・ポロGTI R5。ワークス参戦はスペイン戦のみとしてきたが、10月上旬に発表されたWRC2プロシリーズの誕生によって、その流れが変わる可能性もあることを聞きつけた。


フォルクスワーゲン最新のラリープロジェクト、ポロGTI R5が9月1日にFIA公認を取得し、ついにWRCスペインで実戦に登場。鮮烈デビューを飾った。FIAが公認したR5モデルはこれで7台目。全長はこれまでのR5モデルの中で最大で、ホイールベースもR5の規定をほぼいっぱい使っている。1万kmに及ぶテストを消化し、WRCスペインではファクトリーから2台をエントリーしたが、フォルクスワーゲン・モータースポーツによる参戦はこの1回限りとなり、今後はモデルを販売した先のカスタマーチームやプライベーターが参戦に使用することになる。これまでは、ワークスのテストカーが2台、ホモロゲーション作業のためのサードカーが1台あったが、テストカーとして設計された1台がオーストリアでアクシデントによりダメージを受けたため、風洞作業は急ピッチで行わざるをえなくなった。

フォルクスワーゲンと、既に3年に渡ってR5を走らせている傘下のシュコダは、緊密に連携をとってきた。両車の設計で共通する最も大きな部分は、ベースエンジンが同じであるということ。プロジェクトリーダーのジェラルド・ジャン・デ・ジョンは「プロジェクトの初期段階から、シュコダとはいい連携を取ってきた。彼らは非常に助けになってくれたので、知識を共有し、エンジン面についても最適化できる機会もあった。これにより、我々の作業も全くの白紙状態から始める必要はなかったが、しかし、ポロGTI R5はただシュコダのバッジを付け替えたわけではない。我々は、我々自身のマシンを開発した」と語る。

Martin Holmes Rallying

フォルクスワーゲン自体も、WRCプロジェクトの経験を活かしており、それは特にサスペンションワークに顕著に見られる。
「長さを定めるのは難しかったが、ダンパーやサスペンションについてWRC時代に学んだことを、最善の形でR5に使っている。シュコダ同様、我々もZFザックスの供給を受けている。彼らとは常に良好な関係を保ってきたが、R5規定の中での作業は選択肢がとても限られているので、WRカーよりもビッグチャレンジになった。使用できるコンポーネンツが限られている中で、サスペンションの運動学を活かせる設計をするのは、かなりの挑戦だった」

Martin Holmes Rallying

Martin Holmes Rallying

極めてハイレベルなドライバーが使うマシンとして特化されているWRカーに対し、R5マシンは全く性質が異なる。
「R5マシンは、幅広いドライバーの能力に対応できなくてはならない。このため、プロジェクトのかなり早い段階で、多くのテストドライバーと作業をしたいと決めた。その中には、ディエテル・デッピンの他、エリック・カミリ、ライムンド・バウムシュラッガー、ポンタス・ティデマンド、ペター・ソルベルグ、マーカス・グロンホルムらがいる。おかげで、ひとりのドライバーから、他のドライバーに比較的容易にセッティングを変更できるようにするための開発を進めることができた」

初実戦となったWRCスペインに選ばれたドライバーは、ペター・ソルベルグとエリック・カミリだった。
「ポンタス・ティデマンドを違うブランドの2種類のR5マシンで参戦させることは、フォルクスワーゲンにもシュコダにも、利益がないだろうと判断した。2人のドライバーはとても対応力があると思うし、満足のいく選択だ」

Volkswagen

今年中に供給されるポロGTI R5は15台のみで、2019年には30−40台が予定されているという。フォルクスワーゲンは、商業面的には、シュコダや他のチームほどカスタマーカーを量産することは目指していないが、オファーの内容はシュコダと同じにならざるを得ない。
「価格設定の面では、ヒュンダイ、フォード、シトロエン、そしてもし参入するとすればプロトンと同じような設定にしなくてはならない。FIAが価格の上限を設定しており、ベースカーが19万ユーロ。それに、希望すればアップグレードも行える」

シュコダとともに作業と行う上での信念については「シュコダはラリー界において、カスタマープロジェクトでの経験も、ホモロゲーション面で発生するトラブルを解決する経験も、我々より格段に豊富だ。100%モータースポーツ目的のWRカーに比べ、R5のホモロゲーション作業はさらに難しい。現状、オフィシャルチームとしての計画はない。プライベーターやカスタマーに、我々のマシンで成功を収めるチャンスを広げたいからだ。だから、フォルクスワーゲン・モータースポーツとしてWRC2に参戦するプランは一切なかったが、ここにきてWRC2プロという、ワークスチームに絞った新しいシリーズが誕生した。フォルクスワーゲンとしては、FIAからシリーズの詳細が発表されるまでは、何の判断も行うことはできない」

WRCスペインで、ポロGTI R5は見事な滑り出しを見せた。カミリはシェイクダウンでWRC2のベストタイムをたたき出した後、バルセロナで行われた開幕スーパーSSでも部門トップタイムをマーク。その後、7SSに渡ってWRC2部門のリードに立った。グラベル路面の金曜日は、カミリ、ソルベルグが合わせて3本のステージウインを獲得したのだ。
(Martin Holmes)



ラリプラメンバーズ2024募集中!!