危機的な経済状態によってユーロ圏から離脱する可能性も高まるなか、ギリシアは今年も世界ラリー選手権を迎えた。サービスパークが置かれるのは首都アテネの西側に位置するビーチリゾート、ルートラキ。今年のコースは前回と重なる部分も多いが、いくつか新しいステージも加えられた。SSの数は22本、その合計距離は409.47kmと長い。FIA会長ジャン・トッドが推進するWRC長距離化政策が、各イベントに支持されていることの表れだ。
5月24日の予選セッションで注目を集めたのはフォードのヤリ‐マティ・ラトバラだった。ラトバラはスキーのトレーニング中に転倒して左の鎖骨を骨折。第5戦アルゼンチンを欠場するも、精力的にリハビリを続けてひと月少々で実戦への復帰を果たすことに成功した。
「普通に生活している限り痛みはまったく感じない。腕も自由自在にまわすことができる。WRカーのドライブも、主要な操作系は右腕で行うからまったく問題ない。ただし、HANSがちょうど鎖骨の部分にあたるから、そこにパッドを装着して力を分散させるようにしている。普段の90%くらいまでは回復した」
そのラトバラは予選セッションでチームメイトのペター・ソルベルグに続く2番手タイムをマーク。ソルベルグは予選参加メンバーの中で最後尾となる13番手スタートを選択し、ラトバラはそのひとつ前の12番手をセレクト。予選3位、シトロエンのセバスチャン・ローブは11番目の出走順を選ぶなど後方から順当にポジションは埋まっていった。
18時28分にSS1がスタート。全長25.24kmのSS1でトップタイムをマークしたのはラトバラだった。2位ローブに2.8秒、3位ヒルボネンに7.1秒をつけた会心の走りにラトバラは「肩の痛みはまったくない。この調子ならば明日からも全力で戦えそうだね」と、満足げな笑みを浮かべた。