WRC第10戦ドイツは競技最終日を終え、トヨタのオィット・タナックが今シーズン5勝目を獲得した。2位にはクリス・ミーク、3位はヤリ‐マティ・ラトバラが入り、トヨタが表彰台を独占する結果となった。トヨタ車がWRCの表彰台を独占したのは復帰後初。歴史としては86年コートジボワール、93年サファリに続く3回目(93年サファリは1-2-3-4位)となる。
競技最終日はSS16〜SS19の4SS、79.50kmで争われた。河岸段丘を縫うように走るSSと、ハイスピードセクションでのリズムを作り出すことがポイントとなる。この日のスタート時点で、トヨタの3番手を走るラトバラと4番手につけるヒュンダイのダニ・ソルドとの差は29秒とやや開いている。
オープニングのSS16を獲ったのはティエリー・ヌービル。ソルドがSS2番手で続き、ラトバラとの差を16.1秒にまで縮めることに成功する。続くSS17ではラトバラがベストタイムで逃げを打つが、ソルドも再びSS2番手タイムを刻んで逃がさない。この時点でふたりの総合タイム差は16.5秒となっている。SS16の再走となるSS18では再びヌービル・ソルドが1-2フィニッシュ。最終SSを残してラトバラとソルドの総合タイム差は9.8秒となった。
そして迎えた最終パワーステージ。11.69kmのステージは2度目の走行ということで、一部では路肩の泥が掻き出されグリップが大きく変化しており、油断のできない状況となっている。上位陣はリバースオーダーでスタート。暫定SSベストをたたき出したのはヌービル。ラトバラはソルドを上まわるタイムを刻み3位以上を確定、ミークもリスクを避けたドライビングできっちりと順位を守ってフィニッシュしてみせた。そしてトリを務めるタナックも危なげないドライビングを見せ8番手タイムでフィニッシュ、自身にとって通算11回目となる勝利を獲得した。ミークにとっては今季初、ラトバラにとっては前戦フィンランドに続く今季2度目の表彰台だ。
タナック、ミーク、ラトバラというトヨタのトップ3に続いて、4位にソルド、5位にヌービルとヒュンダイ勢が入った。この日は終始ヒュンダイのアンドレアス・ミケルセンとシトロエンのエサペッカ・ラッピが激しい6番手争いを繰り広げており、SSごとに順位を入れ替える展開となっていたが、最終的に4秒差でラッピに軍配が上がり、6位フィニッシュを果たしている。
勝田貴元はこの日もリスクを避けたドライビングに徹し、無事にすべてのステージを走り切りフィニッシュ。WRCトップカテゴリーとしては2006年の新井敏弘以来のドライバーズポイント獲得となった(WRCドライバーズポイント獲得は2008年の田口勝彦以来)。
勝田は「とにかく完走して経験を積むことが目的でしたので、うれしく思います。サポートしてくれたチームのみんなに感謝しています。また、今日は母の誕生日でもあるので、おめでとうと言いたいですね」とフィニッシュ後のインタビューに笑顔で応えた。
今回優勝したタナックは、チャンピオンシップで2番手のヌービルに35点差と一気に優位に立つことに。同時にTOYOTA GAZOO Racingも、マニュファクチャラーズポイントで首位のヒュンダイに8点差と迫ることとなった。WRC第11戦の舞台はグラベルラリーのトルコ。9月12〜15日に南部マルマリスを起点に行われる。
追記:最終SSフィニッシュ後、ソルドとラッピに最終TC遅着のペナルティが与えられ、ヌービルが4位、オジエが7位に浮上した。
WRCドイツ TC19Cペナルティ後暫定結果
1. O.タナック(トヨタ・ヤリスWRC) 3:15:29.8
2. K.ミーク(トヨタ・ヤリスWRC) +20.8
3. J-M.ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC) +36.0
4. T.ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC) +58.5
5. D.ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC) +1:16.6
6. A.ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC) +1:46.2
7. S.オジエ(シトロエンC3 WRC) +1:56.3
8. E.ラッピ(シトロエンC3 WRC) +2:02.2
9. G.グリーンスミス(フォード・フィエスタWRC) +6:22.2
10. 勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC) +8:19.2