10月24日(木)から27日(日)にかけて、スペインのサロウを拠点に開催される2019年WRC第13戦ラリースペイン。大御所WRCメディア、マーティン・ホームズによるラリー直前のWRCチーム近況をお届けしよう。
オィット・タナックは、ドライバーズ選手権で28ポイントのリードを握ってスペイン戦を迎える。ヒュンダイのマニュファクチャラーズ選手権でのリードは、8ポイント。WRC2 Pro選手権では、シュコダ・モータースポーツがMスポーツに対して53ポイントのリードを築いており、そのMスポーツは、スペインでは1台のみのエントリーで、オーストラリアではエントリーはない。WRC2は現在、タイトル争いのチャンスを残してオーストラリアにも参戦するのは、ルーベ、ゲラ、ブラシア、アンドルフィの4人。
シトロエン
スペインのWRC戦ではこれまで、4つのモデルでのべ11勝をマークしており、現在のC3 WRCでここ2年も制している。今回は、セバスチャン・オジエとエサペッカ・ラッピの2人をエントリーする。
GB戦では、まだ改良しなくてはならないエリアは残っているがグラベルで前進しており、新しいものに関して必死の作業を続けている。
ミックス路面のスペインでのチャレンジは、初日のグラベルはドライなら砂利掃きが多く、2日目、3日目のターマックはレースサーキットのようなコース。どちらの路面でも強さを発揮しなくてはならず、瞬時に対応しなくてはならない。
テストはカタルニアで4日間行い、1日はラッピが、2日間はオジエがターマックを走行。残りの1日は、エリック・カミリのドライブでグラベルの開発を進めた。スペインに向けてテクニカル面での変更は、ディファレンシャル、ジオメトリー、ダンパーセッティングの改善を続けるが、新しいホモロゲーションの投入はない。オジエは、ラッピがエストニアラリーで使用したマシン、ラッピは自身がトルコで使用したマシンを駆る。
GB後にオジエ(2017年、2018年のスペインはいずれも2位フィニッシュ)に考えを聞くと「ドイツでペースが離れていたのは、かなり明らか。スペインはとても重要で、戦いに残る唯一のチャンス。ペースの面で、あらゆる点を少しずつ改良しなくてはならない。戦いに生き残るために、全てを尽くさなくてはならない。
なお、オーストラリア戦ではマッズ・オストベルグを起用するが、マニュファクチャラーズ選手権ポイント対象にはノミネートしない。
ヒュンダイ
セバスチャン・ローブとダニ・ソルドがラインナップに戻り、ターマックでの経験と 地の利を活かしてマニュファクチャラーズ選手権のリード拡大を狙う。ローブは、ここ9回参戦したスペインのWRC戦を全て優勝。シトロエンから参戦した昨年は、日曜日の午前に大胆なタイヤ選択を敢行して勝利を引き寄せている。ソルドは母国戦に過去18回参戦と、カルロス・サインツと並ぶ参戦記録だ。
ヌービルのスペインに対しての考えは「ここ2戦は、速さは出ている。スペインに向けてしっかり準備を整えているが、初日の走行順が3番手なのは間違いなくチャレンジング。ドライのままなら、OKのはず。オィットよりも12ポイント多く獲得して、タイトル争いへの望みをつなげたい」
チーム陣営は、金曜日の6SSを終えた後、75分間のフレキシサービスでマシンのセッティングを一変させなくてはならない。スペイン向けのテストは、GB戦の翌週にタラゴナ周辺で行い、ローブとソルドがグラベルで1日をシェア、ターマックでは各クルーが1日ずつ走行した。なお、オーストラリアには、ヌービル、ソルド、アンドレアス・ミケルセンの布陣でエントリーする予定。
Mスポーツ・フォード
ウェールズでのリザルトは期待していた内容には届かなかったが、エルフィン・エバンスのパフォーマンスは喜ばしいものだったという。エバンスはこの週末、ステージウインを7本獲得し、金曜日にパンクとサスペンションのダメージがなければ、優勝争いにも絡む事ができた。テーム・スニネンは、金曜日にはいいペースを見せていたので、スペインでも強い走りが見られると自信を見せる。ポンタス・ティデマンドはこれで、モンテカルロ、スウェーデン、トルコ、ウェールズと特色の強い4つの路面を経験。それが、日曜日の朝にいい形で発揮された。
スペインは、エバンスとスニネンの2台をエントリーで、いずれもGBで使用したマシンを駆る。テストは、バルセロナ西部のターマック路で3日間行い、2人がシェアした。オーストラリア戦には、エバンスとスニネンをエントリーする。WRC2 Proでは、ガス・グリーンスミスがGBで使用したフィエスタR5でエントリー。ペドロ・ヘラーは、ガウラブ・ギルがウェールズで使用する予定だったマシンを使う。
トヨタ
トヨタのチャレンジは、依然としてマニュファクチャラーズ選手権でヒュンダイに追いつくこと。チーム代表のトミ・マキネンは「ずいぶん前に設定したプラン通りに進めている」と語っている。
ミックス路面のスペインは、チームにとってもビッグチャレンジ。わずか1時間15分で、マシンのセッティングをグラベルからターマックに変えなくてはならない。ドライバーにとっても、ドライビングスタイルを一晩でグラベルからターマックに変えなくてはならない難しさがある。
ラリーGBでは、マニュファクチャラーズ選手権でヒュンダイとの差を詰める事に成功。トヨタは、ラリーを通してリードに立っていた。最終的に制したのはオィット・タナック、クリス・ミークも一貫性を披露し、チームに大量ポイントをもたらした。マキネンは「本当に素晴らしいリザルトだった。大きなプレッシャーがのしかかる中で、週末を通して見事な働きをしてくれた。全くミスがなかったと言っていいし、新しいリヤウイングでこれ以上飛べなくなるが、それでもオィットはとてもいいパフォーマンスを見せた」
ウェールズ後、各クルーはスペインで少なくとも1日ずつテストを実施。ヤリ−マティ・ラトバラはシャシー12、ミークは11、タナックは13(ドイツの優勝マシン)を使う。
経験の面では、ミークは2017年のスペインで勝利を飾っている。タナックは「スペインの初日は、砂利掃きをしなくてはならないので、トリッキーになるかもしれないことは承知している。それも天気次第。昨年は、雨が降りやすかったので、戦況が変わる可能性もあった。パフォーマンス面では、流れはいいし、優勝を狙えると信じている」
オーストラリアのラインナップは、通常通りの3人だ。
(Martin Holmes)