1986年にアイルトン・セナがラリーカーをドライブした印象について、WRC.comで報じられている。
1988、1990、1991年のブラジル人F1チャンピオンがラリードライバーであったことはわずかな人々にしか知られていない。それも、わずか1日だけのことだ。
1986年、セナはロータスチームに採用されたが、このときウェールズで多様なグループのいまはもう存在しないマシンたちをドライブする機会に恵まれた。2WDのボクスホール・ノバから、グループB仕様のオースチン・ローバー・メトロ6R4、なかにはフォード・シエラRSコスワースや3.4リッター4WDのフォード・エスコートもあった。
彼はなぜラリーカーを試したのか? 「私はラリーについて何も知らない。時々テレビで見たり、雑誌の写真を見る程度だ。今回、私は誰にもラリードライビングについてあえて聞いていないんだ。自分自身でそれを見つけたいと思ってね」とセナ。
最初にドライブしたのは強大なパワーを持つシエラだった。しかし彼はほぼ1コーナーでコースアウト。「とても……意外だったよ」と冷静にコメントした。
「普通のクルマのようにコーナーに進入しただけなんだ。それは愚かだった。ラリードライバーたちが、逆ハンドルを切ってわずかにトラクションをかけ続ける……地面をクルマが噛み続けるために……理由がいま分かったよ。単に道を進もうとするだけでも、道の上にはいられない。ただ直進してしまうだろうね」
このセナの話は誇張されたものではない。彼はドライビンググローブも持たず、ロードカーと似たような経験であることを期待していた。この日の終わりには手のひらに水ぶくれができ、ルーズグラベルでのドライブでいかに多くのとばっちりを受けるかを理解していた。しかし、彼はその経験を楽しみ、25年後のキミ・ライコネンと同じように、F1と比較した場合の難しさも分かっていたようだ。
「ここ(ラリー)にはF1マシンよりも遥かにエキサイティングな要素がある。トップスピードは決して高くないが、驚異的な加速がある。F1よりも一瞬の感動が強いね。F1ではとにかくゴー! ゴー! ゴー!という感じで突っ走ってから興奮がやってくる。ラリーでは一瞬でピークに達してすぐに落ち、またピークに達して落ちるという感じだ。これは異なるアプローチなんだ」