トヨタ・オーストラリアは、GRヤリスをベースとしたAP4ラリーマシンを発表。2021年にニール・ベイツ率いるニール・ベイツ・モータースポーツ(NBM)が、トヨタ・ガズーレーシング・オーストラリアとしてオーストラリアラリー選手権に参戦する。
今回のGRヤリスAP4は、国内タイトルを4回獲得しているオーストラリア屈指のベテランラリードライバー、ニール・ベイツ率いるNBMとのコラボレーションにより開発された。ベイツは、TGRオーストラリア・ラリーチームのマネージメントも務めている。NBMはトヨタから長年支援を受けるオーストラリアのトヨタワークスチームだが、今回のプロジェクトでは初めて、製品プランニング&開発部門(Product Planning and Development division = PP&D)がラリーマシンの設計に深く関わった。
新型GRヤリスをベースとしたGRヤリスAP4の外観は、メルボルンにあるPP&D内で設計、製造、組み立てが行われた。トヨタ・オーストラリアのチーフデザイナー、ニック・ホジョスによれば、このGRヤリスAP4の作業は有能なデザイン・製造チーム、トヨタの先進的なデザイン設備の奥深さが存分に発揮されているという。
「トヨタのプロダクトデザインにいるメンバーは、誰もがモータースポーツに情熱を持っており、今回のようなプロジェクトに関わるチャンスがあれば、我々はすぐに飛びつく」とホジョス。
「このプロジェクトに関われて本当に素晴らしかったし、ベースマシンは量産車の時点で非常にエキサイティング。GRヤリスは、まさにラリーのために生まれたモデルだ。我々はみんな、熱心にモータースポーツ活動を続けており、長年に渡ってTGRオーストラリアを見守ってきたが、我々が誇るスキルと技術をチームを活用してサポートすることで、特別な何かを生み出せないかと考えた」
「どんなモータースポーツのプログラムでも、我々は常に上を目指して限界までプッシュし、チームの成長につなげている。だから、我々が参戦する時には学んだことを量産車に反映させたいと思っている」
トヨタ・オーストラリアは、2020年3月にNBMとともにGRヤリスAP4の開発を開始。新しいラリーカーのボディデザインコンセプトの作業では、VR技術を駆使してきた。その後、フロントフェンダー、フロント/リヤバンパー、リヤクオーターパネル、ボンネット、ミラーなどのコンポーネントに関して初期段階のスケッチが作成され、それをデジタルデザインによってさらに煮詰めていったという。
ホジョスによれば、AP4カテゴリーに関するすべてのレギュレーションをもとに、TGRオーストラリア・ラリーチームが求めていたものを実現するために、非常に規律のある設計プロセスを経てきたという。
「一切の妥協はないレースカー。GRの信念としてできる限りいい外観にしたいと思ってはいたが、スタイリングがいいだけのモデルではない。機能としての美を持つマシンだ」とホジョス。
一方のベイツは「自分は30年間に渡って、トヨタとモータースポーツとともにエキサイティングなキャリアを積んできた。今回のGRヤリスは、目を見張るほどのパフォーマンスと、レースへの対応力を誇っている」と語る。
「とにかくプラットフォームが素晴らしい。ルーフはカーボンファイバー、ドアはアルミ、最軽量で最もパワフルな3気筒ターボ量産エンジンを搭載し、信じられないほど広いスタンスを持ち、そして4輪駆動、文字どおりラリーのために作られたモデルだ」
「セリカGT-FOURをはじめ、数々の4WDターボのラリーマシンを作ってきたし、セリカやカローラをモディファイして4WDのラリーマシンにする作業にも多く関わってきた。だから、このマシンは最初から高いポテンシャルをもっているはずだ」
「信じられないほどクールなラリーマシンになると思うし、関わってきたチームは、ここまで途方もないほどの時間を捧げてきた。世界クラスのAP4ラリーマシンとなるこのマシンが届くのが待ち切れない」
NBMは、2021年シーズンに向けてGRヤリスAP4を2台製作する予定で、TGRオーストラリアのエースドライバー、ハリー・ベイツと、弟のルイス・ベイツがステアリングを握る。ハリーは2019年のオーストラリア選手権でタイトルを獲得、ルイスもシリーズ2位に入っている。2020年のオーストラリア選手権は新型コロナウイルスの影響でシーズンがキャンセルとなっていることから、ふたりは2021年3月にキャンベラで開幕する2021年シーズンのオーストラリア選手権を心待ちにしているという。
「GRヤリスAP4が届いて、どんなラリーマシンになるのか、この目で見る日が待ち切れない」とハリー。
「戦いの勢力図を変えるマシン。オーストラリアでこうしたマシンが登場するのは初めてだと思う。限界まで攻められるマシンだと思っているので、これで戦う日が待ち切れないよ」