Mスポーツ・フォードのチーム代表、リチャード・ミルナーは、若手ドライバーで揃えた2021年のWRCドライバーズラインナップに関して擁護し、2021年シーズンに参戦するのとしないのとでは、大きな違いがあるのだと語った。
チームは2021年、英国のガス・グリーンスミスがフォード・フィエスタWRCでフル参戦するが、24歳のグリーンスミスがこれまでにWRカーで参戦した経験は9戦しかなく、2020年シーズンのWRカー参戦については独自の取材に対して「かなり厳しい内容」と評している。
チームメイトとなるフランスのアドリアン・フルモー(25歳)、フィンランドのテーム・スニネン(26歳)はセカンドカーをシェアする形での参戦プランとなる。スニネンはWRCでポディウムフィニッシュやステージウインをマークしているが、WRC2で活躍したフルモーはWRカーではまだ参戦した経験がない。
このラインナップは経験や実績が限定的であることを見れば、Mスポーツ・フォードはデータ上では最も実力で劣る布陣で2021年シーズンを迎えることになると言える。しかしミルナーは、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により若手ドライバーを起用する以外の選択肢はなかったことを認める一方で、自らのチームを過小評価するべきでないとも主張する。
「周囲からしてみれば、過去、我々のチームに在籍してきたチャンピオンも経験したようなドライバーを起用するのではないかと予想するところだろうが、我々はそのようにする立場にない」とミルナーは取材に答えた。
「我々は、この10カ月に余剰従業員が75人出てしまった。そのため(WRCに参戦するために)車両を売らなくてはならなかったが、昨年は車両の売れ行きが大打撃を受けた。英国のMスポーツには、120人の従業員がいる。ハッキリ言えば、彼らの給料を合わせた金額と同じ金額のドライバーを雇うのか、それとも120人を雇い続けるのか、ということ。それは、疑問に思うまでもないことだった」
さらにミルナーは「ドライバーに支払う予算はないが、我々が起用した3人をリザーブとして考えるつもりはない。彼らとともに取り組んでいきたいし、できる限り彼らを支えていきたいとも思っている。彼らのことを信じているからね。ビジネス上のあらゆる制約を考慮したうえで、2台体制でWRCに参戦できることにとても満足している。自分がファンとして語るならば、ファンなら誰もが参戦する姿を見たいと思うからね」
スニネンの参戦プログラムの拡充についても取り組みを続けているというミルナーだが、シーズンの後半には台数を増やすことも目指しているという。
「興味深いイベントがいくつかあるし、ほかのドライバーを起用できる方法も見つけられるかもしれない」とミルナー。
ミルナーは、2021年はWRCに参戦しないという可能性もあったが、Mスポーツ代表のマルコム・ウィルソンはそれを認めることはしなかっただろうと語った。
「予算を大幅にカットして、カスタマー車両の販売だけに専念すれば話は簡単だった」とミルナー。
「しかし、マルコムのWRCに対する愛情は深く、その思いは会社にとっても大きな意味を持つ。参戦しないのは楽な方法だったが、誰ひとりとしてその選択を希望しなかったので、とにかく参戦できる方法を模索することに努め、今回もそれを実現させた」
(Graham Lister)