今季、Mスポーツ・フォードからフォード・フィエスタWRCでシリーズフル参戦に挑んでいる若手、ガス・グリーンスミスのコ・ドライバーに抜擢されたベテランのクリス・パターソンは、これまでグリーンスミスの相棒を務めてきたエリオット・エドモンソンについて「素晴らしい才能を持っている」と太鼓判を押した。
WRC参戦136回、ポディウムに12回上がっているパターソンがWRCの第一線で参戦するのは、2018年10月のラリースペイン以来。4月22〜25日に開催されるWRC第3戦クロアチアラリーから、グリーンスミスのパートナーを務める。
現在24歳のグリーンスミスは、2015年からエドモンソン(現在26歳)と初めてコンビを組み、2019年のモンテカルロラリーではWRC2プロ部門で優勝を飾っている。しかし、2021年はWRカーでの初めてのフル参戦に挑むこれまでとはレベルの違うチャレンジとなり、経験豊富なパターソンの起用が決断された。
「2年間の契約を持っているだけの幸運がない限りは、シーズンごとのドライビングでキャリアを積んでいくしかない」とグリーンスミスは独自の取材に答えた。
「エリオットは何も悪いことはしていない。相応のコ・ドライバーだ。しかし、経験の面だけはどうすることもできない。クリスは経験が豊富だし、自分が成長できるようにするためには、クリスのようなコ・ドライバーと組む必要がある。エリオットと自分は、今でもいい友人同士だ。今回の判断の理由も理解している。自分がもっと経験を積んだら、またいつかいい仕事ができるかもしれない。でも、今は自分自身が成長できるようにすることに専念しなくてはならない」
「最初のステージを除けば、(アークティック・ラリーフィンランドでの)自分たちの速さは、テーム(スニネン)とかなり近かった。もっとミスを減らさなくてはならない。自分がいい方向に進んでいない時には、何かを変えなくてはならない。だから、クリスにお願いした」
グリーンスミスは、クロアチアでのパターソンとのWRC初参戦前に練習参戦をする計画を立てていることを明かしたが、パターソンとの彼の関係はすでに馴染み始めていると語った。
「すぐに、彼には高いリスペクトを感じた。彼が行うことすべてだけでなく、パーソナルの面でも、彼が自分に話しかけてくれたり、相談する方法の面でもだ。彼が現役を引退する前に乗ってもらうことは、自分個人としてもとてもいい気分だ。彼が、自分たちはいいところまでいけると強く信じてくれていることは明らかだし、自分も強くそう信じている。完全なパフォーマンスを出すためには、あとひとつだけパズルをはめるだけだ」
一方のパターソンは、今回の抜擢についての質問に答えている。
なぜ、グリーンスミスと組むことに決めたのか。彼にポテンシャルを感じなければ、組まなかったはずだと思うが。
「もちろん、話し合いをする前に、彼のことをよく調べたよ。彼のエンジニアや、マルコム(ウィルソン、Mスポーツ代表)と十分に話をした。ガスは、おそらく1kmあたり1秒くらいペースが不足していると思うが、この1秒を詰めるのは本当に難しい。そして、初めてWRカーでフル参戦に挑む若手にとっては、壮大な壁だ」
どんな目標を設定しているか。
「何かしらの目標を決めて、1kmあたり1秒を詰めていくことを目指す。しかし、ローマは1日にしてならず。ステップバイステップの作業だ。しかし、掲げた目標を達成するために努力していくよ」
WRカーに乗るのは久しぶりだが、不安はないか
「ドバイで、ハリ・アル‐カシミの隣に乗ってバハに何度か参戦している。参戦した10戦すべてで勝ち、選手権も制した。ラリーステージは最近はあまり走っていないが、いろいろなチームと仕事をしてきているので、何度かイベントにも出ている」
WRCに出ていなかったことは寂しかったか。
「戦うスピリットは恋しかったが、間違いなく遠征がないことは寂しくなかったね」
エリオット・エドモンソンに向けてメッセージを。
「エリオットは実にいい仕事をしていた。素晴らしい才能の持ち主だし、ラリー界での将来も有望だ。今はただ、状況を整頓する必要があり、ガスは自分のチャンスを最大限に活かさなくてはならない時期だというだけのことなんだ」
(Graham Lister)