WRC第4戦ラリーポルトガルの審査委員会は、ヒュンダイ・モータースポーツNからWRC2部門にエントリーしたオーレ・クリスチャン・ベイビー/ヨナス・アンダーソンに対し、2021年FIAインターナショナル・スポーティングコード(ISC)の付則S項、ラリーポルトガルのイベント規則書のFIA COVID-19備考に違反するとして、2021年5月23日〜11月22日(6カ月)の間のWRC参戦禁止という重い処分を下した。
ベイビーはラリー参戦前に新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者と濃厚接触した可能性があることを主催者に申告せず、さらに本人の陽性も発覚。その後も10日間の隔離を行わず、スペインにクルマで帰宅したという。これを受けて審査委員会は、イベントの新型コロナウイルス対策マネージャーのアンドレ・フリッペ医師、確認者として副マネージャーのギリェルメ・サクラメント同席のもと、エントリー責任者であるヒュンダイ・モータースポーツNのチーム代表のアンドレア・アダモ、マシンのプリペアとイベント中のサービスを担当していたレッドグレイのクリスト・クラーグに諮問を行った。
ベイビーは5月20日の木曜日に定期的な抗原検査を受けたところ、結果は陽性。そこでPCR検査を含む詳細な再検査が実施されたが、結果はいずれも陽性となった。ベイビーの接触者追跡が行われ、唯一の濃厚接触者はコ・ドライバーのヨナス・アンダーソンと判明。ベイビーはホテルの部屋での隔離が命じられ、コ・ドライバーも隔離する措置が採られることとなった。この件については、公衆衛生当局に報告されていたという。アンダーソンは検査の結果、陰性だった。
しかしベイビーは、新型コロナウイルスの検査で陽性反応が出た人物とWRCポルトガルの前週に接触していたことを、FIAの新型コロナウイルス対策担当者に申告していなかった。そのうえ、陽性反応が出た後もホテルで待機はしていたもののポルトガル政府が規定している10日間の隔離を行わずに、無許可でスペインにクルマで帰ったという。
審査委員会の決定書では、ベイビーのとった行動は、重大な規定違反であると厳しい言葉で追及。FIAとWRCは、ポルトガルにとってはイベントに参加するために迎えられるゲストであり、一連の行動は、こうした国の歓迎や規定に対し思い上がっていると痛烈な指摘をしている。
さらに、“WRCに参戦するすべての関係者が、参加できる状態であることを把握し、会期中もその状態を維持していること、あるいは適した状態ではないかを監視すること”はチーム首脳陣の責任であり、ヒュンダイ・モータースポーツNとサプライヤーの責務でもあるとしており、さらに別途、訓戒の処分も科されている。
ベイビーはタルガ・タスマニア(新型コロナ陽性でポルトガルを欠場したアンドレアス・ミケルセンも参戦)に参戦していたが、新型コロナ陽性とされた5月20日の前には5日間で3回検査を受けており、いずれも陰性だったいう。さらに、陽性反応が出た後はホテルで待機していたところ、主催者からの連絡でクルマを使うなら自宅に戻って自宅隔離することができるとアドバイスを受けたため、家族のいるスペインにクルマで帰宅したのだとも伝えられている。
また、今回のラリーポルトガルでは、ALMモータースポーツからエントリーしていたエストニアのゲオルグ・リンナマエ/ボロディマイヤー・コルシア組が、ベイビーと同様の内容で6カ月のWRC参戦禁止処分を受けている。