WRCサファリのフィニッシュ後に行われたイベントカンファレンスの内容(抜粋)。初の表彰台で会見に登場した勝田は、ラリーウイーク序盤から体調不良に悩まされていたことを明かし、それを乗り越えて勝ち獲った結果について周囲への感謝を述べた。
●WRC イベント後記者会見 出席者
セバスチャン・オジエ=SO(トヨタ・ガズーレーシングWRT)
勝田貴元=TK(トヨタ・ガズーレーシングWRT)
オィット・タナック=OT(ヒュンダイ・モータースポーツ)
ヤリ‐マティ・ラトバラ=JML(トヨタ・ガズーレーシングWRTチーム代表)
Q:セバスチャン、ジェットコースターのような週末を経ての優勝、おめでとうございます。あなたとジュリアンの笑顔がすべてを語っていますが、フィニッシュした時の気持ちを聞かせてください。
SO:正直なところホッとしたよ。最終ステージはすごくチャレンジングだった。ライン上に岩があるのかないのか、どんなコンディションになるのか、まったく分からないままコースに向かっていた。このステージだけは無理をしないで、なんとしてもフィニッシュしたかった。すごくクレイジーな週末で、誰もが面白い週末になると予想していたし、実際そのとおりになった。たくさんのことが起きた。まず、かなり早い段階でトラブルに見舞われたし、その後は素晴らしい仕事をして、トップにだんだんと近づいていった。表彰台に近づけるとは予想していたけど、優勝できるとまでは思っていなかった。
Q:予想以上に厳しいチャレンジだったのか、それともこうなると思っていましたか。
SO:想像もつかなかった。いつもと違う、何かしらタフなことになるとは思っていた。それに、これまで経験したことのない状況な物事に直面しなければならなかった。簡単にはいかない。全体的には今週末の流れには満足している。このラリーに向けて準備するのは大変だったよ。チームも素晴らしいマシンを用意してくれた。今週末はトヨタが活躍したね。トヨタが築いてきたマイルストーンに、さらに一石を追加できたと思う。
Q:タカモト、初のWRC表彰台へようこそ。この場にいることをどう感じていますか。
TK:すごくうれしい。厳しく長い週末を終えただけに特別な気持ちです。週の初めは体調が悪く、食当たりもあって、体調を崩してしまった。でも今はここにいる。僕のまわりのすべての人々が助けて、支えてくれたからこそ、ここにいることができる。この場所に立たせてくれたみなさんに感謝しています。
Q:体調が悪いなかでの挑戦は、より厳しいものだったのではないですか。あまり喜ばしい状況ではないですね。
TK:レッキの日は起き上がれないほどだった。フィジオやスタッフが治してくれた。ラリー中はトラブルもなく、100%集中し、大きな問題も起きなかった。
Q:最終日は最適なタイヤチョイスができませんでした。フレッシュコンパウンドのソフトタイヤが足りなかった。悔しくなかったですか。
TK:もちろんセブと同じような選択肢があるに越したことはないけれど、最後の2日間は、自分のやったことで、タイヤのダメージは大きくなってしまった。この点はセブから学ばなくてはならない。彼はいつもすごくうまくタイヤをマネージメントしているんだ。これはラリーにとっては最も重要な要素のひとつだ。
Q:オィット、サファリラリーへの挑戦について教えてください。今日のパワーステージではポイントを獲得したので、その意味ではうまくいったと言えるのではないでしょうか。
OT:金曜日と日曜日は、サファリで期待される挑戦という意味では、すごくよかったと思う。ドライバーを楽しませてくれたし、この挑戦を心から楽しんだよ。 ひとつのイベントの中にちょっとしたスパイスが加わるというのは、カレンダーの中でも珍しいことだ。だからこそかなり面白かった。すごく楽しかったよ。
Q:土曜日の夕方には嵐に見舞われ、ドライバー側のフロントガラスが曇ってタイムロスしたのは残念でしたね。すごく悔しかったのではないですか。
OT:時にはどうしようもない状況もあるけれど、土曜日はかなりスムーズな1日だった。慎重になり、リスクを冒さず、問題なくフィニッシュすることを念頭においていた。全体的にはスムーズでドラマのない日だったと思う。
Q:このラリーはWRCのカレンダーに固定されるべきだと思いますか。
OT:土曜日のようであれば、もう少しチャレンジングになってもいいと思うけれど、金曜日や日曜日はかなりチャレンジングだった。サファリのための枠はあると思う。
Q:ヤリ‐マティ、シーズン4度目のトヨタの1-2フィニッシュでした。予想どおり要求が高いイベントでしたか。
JML:レッキを行った時点で、昔のサファリラリーのようだと実感した。唯一の違いはステージが短く、クローズドコースになったことだ。このイベントでは、これまで数々のドラマがあり、たくさんのことが起きていた。ドライバーにとってはチャレンジであり冒険でもある。自分がドライブしたかったと思うほどだ。ラリーの神髄に触れ、最後にはラリーで優勝し、タカモトは自身初の表彰台となる2位に入ったことを、本当にうれしく思う。金曜日の時点では、1台くらいは表彰台に上がれるかなと思っていたが、最終的には耐久性と一貫性、そしてドライバーたちの決して諦めないという姿勢が功を奏したのだと思う。
Q:次はエストニア、超高速ラリーですね。どんな計画を立てているのですか。何か変更がされるのでしょうか。
JML:昨年はパフォーマンスが足りなかった。オィットはものすごく強かったし、今年も間違いなく強いだろう。すでにテストを行っており、マシンを改善させるために準備と習熟を行っている。広い道でも狭い道でもより良く機能していると言っていいだろう。テストの結果は非常に良かった。エストニアに向けて自信を持っている。とはいえ優勝争いは厳しいものになることは分かっている。少なくとも自分たちに出来ることはすべてやった。
記者席からの質問
トム・ハワード(オートスポーツ、英国)
Q:サファリはWRCカレンダーに常設されるべきでしょうか。
SO:実際に大統領自身がポディウムでそう発表していたよね。私は「イエス」と言いたい。WRCは多様性が必要であり、今週末はそれが示せていたし、間違いなく楽しませてもらった。多くの人々が今週末のラリーを楽しんでいた。いつもとすごく違っていて、興味深い点もあった。それに地元の人々の熱意を目にして、すごくうれしかったんだ。長いコロナ禍を経て、しばらく観客を目にしていなかったので、今週はすごく楽しかった。ロードセクションでは信じられないほどの人だかりを見たんだ。
ホセ・ルイス・アブレイユ(オートスポーツ、ポルトガル)
Q:ソーシャルメディアでは、多くの人があなたを「最も幸運なドライバー」と言っています。「幸運」を手にするためにどのような努力をしているのですか。
SO:どうすれば長年にわたって幸運を手にすることができるのか、自分にも分かりません。最後まで運に恵まれていたらと願うよ。運もスポーツの一部だからね。もちろん努力や才能も必要だ。金曜日の午前中はトラブルがあったから、あまりついていたとは言えないけれど、それ以降の週末はうまくいっていた。
Q:2位で十分うれしいのか、それとも優勝できなくて残念ですか。
TK:僕はドライバーなので、やはり優勝できれば最高です。僕の人生で初めてのWRC表彰台であることを忘れてはいけません。WRCでこのポジションに立ったことはありませんでした。今はセブと戦っている時ではないと自分に言い聞かせました。将来的にはもちろん彼と戦いたい。セブと戦う前に、まだまだ学ぶこと、改善すべきことがたくさんあります。
SO:タカはとても謙虚だが、彼には大きな拍手を送りたい。今週末、彼は素晴らしいパフォーマンスを見せたからだ。今回の表彰台を共有するのに彼ほど適任なドライバーはいない。この結果を彼と一緒に喜びたいね。
Q:ポルトガルではいくつかのトラブルが発生しましたね。サルディニアで起きたことは単なる不運だったのか、それともチームが早急に対応しなければならないことでしたか。
OT:運とは関係ない物理的なことが起きたのだと推測している。それを把握することが重要だ。なぜこんなことが起きたのかを理解することが大切だ。もちろんチームは更なるパフォーマンスを引き出そうと全力で取り組んでいるし、パフォーマンスも見えている。自分たちの思い通りにいかないこともあるが、そこには対応している。
エリック・デュパン(ベルギー)
Q:ベルギー人ジャーナリストとして、ティエリー・ヌービルに起きたことはすごく残念でした。6戦中4戦で優勝したことに敬意を表します。2016年にも同じことがありました。8度目のワールドタイトルが目前に迫っていて、絶好調なのに、まだ引退を考えているのですか。もうあと何年も続けられるでしょう。
SO:8度目のタイトル……まだシーズン半ばだから、落ち着いてほしい。6戦中4勝という非常に良いシーズンスタートを切ることができた。現時点ではチャンピオンシップの競争力は非常に高くなっているので、とてもいいところに到達していると思う。すごくうれしいけれど、私にはこれとは別の人生の優先順位と、別の将来の計画がある。ラリーの結果がどうであれ、自分の気持ちが変わることはない。そうは言っても、8度目のタイトルを獲得するのに全力を尽くすつもりだ。シーズン前半としてはすごく好調だが、まだ残り半分ある。まだまだポイントを獲得しなくてはならない。この調子で続けていかなくてはならない。シーズン末を楽しみにしている。このマシンはドライブするのが最高だし、心から楽しんでいる。今の勢いを持続するようにしないといけない。
●WRC3 イベント後記者会見 出席者
オンカー・ライ=OR(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5、ケニア)
ドリュー・スタロック=DS(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5、英国)
Q:これまで参戦してきたラリーと、サファリラリーはどう違いますか。
OR:マシンの中でドリューと話し合っていたんだ。前回サファリを完走してから4年経っているが、今回は間違いなく最も厳しく、そして最高のラリーだと思う。素晴らしいイベントで、本当にタフだった。地元ドライバーとしてはこういったコンディションはこれまでに見たことがなかった。トップドライバーたちが次々とトラブルに見舞われたことは残念に思う。マシンがひしゃげてしまって、次のイベントにはそのシャシーを使えないというのも聞いた。次回はもっと入念に準備してくるだろうね。ワークスチームが勢揃いしてくれたのもうれしかったし、トップドライバーは誰もが紳士だった。特にタカモトはみんなに愛されている。彼はすごく尊敬できる人だ。彼が優勝したら良かったと思うけど、今はセブが立ちはだかっている。タカはすぐにでも優勝するだろうと思う。