WRC第8戦イープル・ラリーベルギー(ターマック)を総合2位でフィニッシュし、総合優勝したティエリー・ヌービルとともにヒュンダイの1−2フィニッシュに貢献したクレイグ・ブリーンは、ヒュンダイ・モータースポーツの“政治力”によりベルギー初のWRC優勝をヌービルと争うことができなかったことを示唆した。
このベルギーでヒュンダイ勢は、序盤はブリーンとオィット・タナックが総合リードを握った後、チームで唯一ドライバーズタイトルへの望みを残しているヌービルが母国での初WRC優勝に向けてラリーを掌握するなど快進撃を見せた。
2019年にイープルラリーを制しているブリーンはヌービルのペースについていき、デイ1はヌービルに7.6秒差の2番手で終えていた。翌土曜日は最初の2SSでベストタイムをマークし、ふたりの差は3.5秒にまで縮まった。この日最初のSSでは、パンクによってSS中に一時停車していたタナックに追いついてしまい、ダストを巻き上げるタナックのマシンについていくことを余儀なくされた。
「あの時、自分が彼の後にとどまっていたことを、彼はなんて言うのだろうかと興味深かった」とブリーンは力を込めて語った。
「彼が自分の前にいた実際の時間はそれほど長くなかったが、道にダストやいろいろなものをまき散らしていった。彼は自分がやらなくてはならないことをやったまでだが、彼が自分の立場だったらどうしていたのかを知りたいね」
ブリーンはヌービルに追いつく圏内にまで迫っていたことから、クルーとチームの話し合いは午前中を通して続き、その後、その懸念が少なくなる程度にまで後退。2022年はヒュンダイから離れると見られているブリーンは、「今はチームの方針に従っているだけ」とコメントを残した。このイベント後に行われた記者会見で、この日チームオーダーがあったのかと聞かれたブリーンは、苦笑だけ返している。
チーム代表のアンドレア・アダモは、どのような話し合いがあったかについては言及しなかったが、その内容は“熱かった”と明かした。ブリーンに抑えるように指示を出したのかという問いにアダモは「彼らには、それなりの説明があったと行っておこう。チームオーダーは出していない。やんわりと提案をしたんだ」
最終的にヌービルはブリーンに30秒7差をつけて、WRCベルギーの初代ウイナーとなった。ドライバーズ選手権ではこれで、トヨタのエルフィン・エバンスの同ポイントの2番手に並び、選手権リーダーでこのイベントを5位でフィニッシュしたトヨタのセバスチャン・オジエとの差は38ポイントとなっている。
(Graham Lister)