トヨタ・ガズー・レーシングのテクニカルディレクターであるトム・ファウラーは、カッレ・ロバンペラの今シーズンの成功の一因に、WRC参戦に進むまでのアプローチがまったく新しいものである点を挙げる。
フィンランド生まれのロバンペラが、8歳からクルマを運転していたというのは有名な話。しかしファウラーによれば、現在WRCドライバーズ選手権で首位に立っているロバンペラのペースは、13年の運転歴以上のものだと言う。
「この何年もの間に、ラリーというスポーツは大きく変わった」とファウラー。
「ふたりの人間がマシンに乗り、地図を見ながらドライブし競い合うという時代は終わった。カッレがWRCにたどり着くまでのアプローチを見れば、シムレースを長くやっている人らしいやり方でラリーに取り組んでいることが分かる」
「彼のマシンの操り方が、他のドライバーと比べてズバ抜けている、ということだけが理由なのではないのではと思う。彼はただ、違う方法でドライブして戦っているのだと思う。彼がシムレースをしている時は、ただドライブするのではなく、色々なことを同時にこなしている。誰かと話したり、テキストを打ったり、いろんなことをやっている。たくさんのことができる器量を持っている。同時に、彼にとって最高のタイミングでこの新世代のマシンが登場したのだと思う」
今季、WRCのトップカテゴリーに導入されたラリー1マシンは、電気ブーストの回生と発動が加わったことで、これまで以上にドライバーが行わなくてはならないことが増えた。これが、21歳のロバンペラには合っていた。
ファウラーは「いまのカッレの戦い方で少し古風なところがあるとすれば、クルマとうまく付き合っているところだろう」と付け加えた。
「ラリーの歴史を振り返れば、たくさんのドライバーがいろいろなことで足跡を残してきた。そうしたことをカッレは、このヤリスでやっているのだと思う」