11月10日から開幕するWRC第13戦ラリージャパンに、シュコダ・ファビアR5で参戦するヘイキ・コバライネン。2022年は全日本ラリー選手権JN-1クラスでチャンピオンを獲得しており、自身念願のWRC初挑戦となる。11月7日からは愛知県・岐阜県にまたがるステージを舞台にレッキがスタート。2日間、ラリージャパンのステージを試走したコバライネンに話を聞いた。
──まずは、2日間レッキを行った感想から聞かせてください。
「僕にとってはいつもの日本の道で、慣れ親しんだ感じがしたよ。かなりツイスティでナローだった。ただ、いつもの全日本ラリー選手権のステージと比べると、ハイスピードセクションが少し多い。多くのドライバーが言っていたツイスティなセクションは、僕にとってはいたって普通に見えるけどね(笑)。毎回走っているステージによく似ているよ! もちろん難しいし、場所によってはダストも乗っていたり、濡れている箇所もあった。ちょっとしたミスで、マシンにダメージを与える可能性が高いステージだね」
──木々の枝がステージの路面を覆っているようですね。
「そうなんだ。日が照っていても、ずっとウエットのような感じだし、さっきも言ったように細かいダストというか砂が乗っている感じで、ものすごくスリッパリー。今年の久万高原でコースアウトした場所に似ているかもしれない。ターマックでは1回コントロールを失うと、リカバリーが本当に難しいんだ」
──インカットできないことも特徴だと、多くのクルーが話していました。
「道路の脇にはグラベルではなく、コンクリートの側溝がある。そこにホイールを入れてしまうと、そのまま出ることはできない。僕にとっては、いつもの状況だし、ここで重要なのはいかにミスをしないかなんだ。あえて大きなリスクを冒して、運良く生き延びることができれば、良いタイムを出すことができるかもしれない。どこもかなり長いステージだし、全日本とは全体の距離も違う、調子に乗って攻めていたら、どこかのコーナーで捕まってしまうだろう。だから、ここでは忍耐力が要求される」
──WRC初挑戦となりますが、いつもの全日本とは気分は違いますか?
「とても“スペシャル”な感じがするよ。確かにこの段階までは、いつもとあまり変わらないけど、木曜日にシェイクダウンに向かう段階で、さらにワクワクしてくるんじゃないかな。ずっとWRCライブでラリーを観戦してきたから、どのような雰囲気になるかはよく分かっている。トップドライバーとともにWRCに出場して、同じ世界で走ることができるなんて、本当にエキサイティングなことだよ。だからとても楽しみだし、すべての準備が整っていると感じているんだ」
──やはり、慣れた日本のラリーということが大きいのでしょうか。
「そうだね。これが、ラリーフィンランドだったら、すぐに準備ができないと思う。ラリージャパンは、僕がいつも出場しているラリーと雰囲気が似ているし、準備ができているように感じているんだろうね。とにかく、楽しもうと思っているよ。全日本ラリーのように勝てるわけではないということは、よく理解している」
──誰をベンチマークにしますか?
「全日本ラリーで同じファビアR5で参戦している、福永(修)さんかな。彼は経験豊富だし、スピードを持っている。僕のパフォーマンスとも比較しやすい。いつもであれば、僕は自分に対してかなり厳しいけど、今回のラリーは、楽しむことを自分に許しているんだ。世界を転戦しているプロのラリードライバー相手に、簡単にはいかないよ。彼らが鈴鹿でGT500マシンに乗ることを想像すれば、僕がWRCに出ることが、大変なことだって理解できるだろう(笑)? あらためて、このような機会が与えられたことに感謝している」
──最後に、今回のラリージャパンに向けて、具体的な目標を聞かせてください。
「一番の目標はラリーをフィニッシュすること。もちろんプッシュはしてみる。ただ、特に金曜日朝のSS2は、完全にニューステージで、かなり難しい。グリップがあって、マシンのフィーリングが良ければできるだけハードに頑張ってみるよ。僕らが考えるマキシマムのなかでね。ステージによっては、フルにプッシュしたという感覚を得たいし、フィニッシュが目標といってもゆっくり走るつもりはない。でも、順位についてはまったく分からないし、最後の順位に満足するつもりだ。振り返って『いいラリーだったね』と言えるようなラリーにしたいな」
(Keiko Ito)