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全日本ラリー久万高原:シュコダ・ファビアR5のヘイキ・コバライネン/北川紗衣が全SS制覇で今季3勝目

©Jun Uruno / JN-1クラス首位を走るヘイキ・コバライネン/北川紗衣(シュコダ・ファビアR5)

2023年シーズン全日本ラリー選手権第4戦「久万高原ラリー」が、5月5日(金・祝)~7日(日)にかけて愛媛県・久万高原町を拠点に開催され、トップカテゴリーのJN-1クラスは、シュコダ・ファビアR5をドライブしたヘイキ・コバライネン/北川紗衣が勝利を飾った。2位にはトヨタGRヤリス・ラリー2の勝田範彦/木村裕介、3位にスバルWRX STIをドライブする鎌田卓麻/松本優一が入っている。

唐津から約3週間のインターバルを経て、全日本ラリー選手権の舞台は唯一の四国開催となる久万高原へ。今回、久万高原としては実に2019年以来、4年ぶりとなる有観客開催を実現した。「ハイランドパークみかわ」に設置されたサービスパークは無料開放され、駐車場への事前申し込みを行った限定約100台で来場したファンが、セレモニアルスタートやサービスの作業風景を楽しんだ。

久万高原の舗装ステージは、標高1000m前後の高地に設定。林道区間は木々に覆われており、路面上には滑りやすい苔も残っている。エスケープゾーンも少ないため、ひとつのミスが命取りになる可能性も。また、荒れたアスファルトはタイヤへの攻撃性が高く、天候の変化も激しいことから、タイヤマネージメントも勝負の鍵になる。

■レグ1

久々の有観客開催。天候のすぐれないなかファンが鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI)のスタートを見送る。 / Naoki Kobayashi


5月6日(土曜日)のラリー初日は「ハイランドパークみかわ」に置かれたサービスパークを拠点に、12.41kmの「美川リバース(SS1/SS3)」と5.86kmの「柳井川(SS2/SS4)」をループする4SS、36.54km。

朝から時おり雨がパラつき、ドライからハーフウエットへと変化した午前中。前半がドライ、中盤から後半がハーフウエットとなったSS1において、JN-1クラスでベストタイムを刻んだのは、ターマック2連勝中のヘイキ・コバライネンだった。12.41kmのステージで、勝田範彦を1kmあたり1秒以上も引き離す、18.6秒差の一番時計。3番手タイムの鎌田卓麻に24.1秒差、5番手タイムの眞貝知志/安藤裕一(トヨタGRヤリスGR4ラリーDAT)に25.9秒差と、このステージだけでライバルを大きく引き離している。

コバライネンはSS2でも、勝田に9.6秒差のベスト。午前中を終えて、早くもクラス2番手の勝田に28.2秒ものアドバンテージを握る。38.3秒差のクラス3番手に鎌田。SS1で6番手タイムに沈んだ福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)は、このステージを12.8秒差の3番手タイムでまとめ、眞貝を捉えてクラス4番手に順位を上げた。新井敏弘/保井隆宏(スバルWRX STI)は、ドライとウエットを組み合わせたタイヤが路面に合わず51.7秒差のクラス6番手に沈んでいる。

雨がさらに強まり、本格的なウエット路面となった午後のセクション、コバライネンはSS3でも勝田に21.0秒差をつける圧巻のベスト。続くSS4も眞貝に11.0秒差のベストタイムを並べ、終わってみればこの日行われたすべてのステージを制してみせた。クラス2番手につける勝田との差は1分2秒5に広がっており、豪雨が予報される最終日に向けて、安全圏ともいえるアドバンテージを手にした。

JN-1クラス首位のヘイキ・コバライネン / Naoki Kobayashi


「コンディションが変わるなかで、1日をとおして良いタイヤチョイスができた。午後は雨が少し強くなったけど、グリップレベルもいいし、自信を持ってドライブできている。明日に向けて良いアドバンテージを握ることができたね。明日のコンディションはミスが許されないけど、現時点ではラリーをエンジョイできている」と、コバライネンは笑顔で振り返った。

唐津と久万高原の間にテストを行ったという勝田は「クルマがかなり進化しているので、すごく乗りやすくなっています。唐津からのフィードバックも、まずまず活かせていますね。エンジニアからもドライビングに対するアドバイスをもらっているので、改善しながら走っています」と、自身のペースに集中している。

クラス2番手の勝田と、クラス3番手の鎌田の差は9.8秒。「クルマのセットアップが決まって安定して走れたので、僕としては満足です。この手の難しいコンディションになると、クルマの持っているポテンシャルとタイヤが重要になるので、そういった意味では、良いパッケージで走れています」と、鎌田は納得の表情だ。

SS3で福永をパスした眞貝は、鎌田から5.0秒差のクラス4番手。眞貝の4.3秒後方にはクラス5番手の福永が続いていおり、2番手から5番手までは僅差のため最終日に大きく順位が動く可能性がある。午前中のセクション、タイヤの選択ミスに泣いた新井敏弘は、午後もペースが上がらず1分35秒3差の総合6番手と、表彰台争いから出遅れてしまった。

JN-2クラス首位の奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス) / Jun Uruno


JN-2クラスは、奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス)と、若手の山田啓介/山本祐也(トヨタGRヤリス)が3.2秒差のバトルを展開。SS3では山田がJN-1クラスのコバライネンに20.8秒差の全体セカンドベストを刻んでおり、最終日に逆転を狙う。ふたりの優勝争いからは離されたものの、3番手の徳尾慶太郎/石田一輝(トヨタGRヤリス)と、4番手の横尾芳則/井手上達也(トヨタGRヤリス)も4.9秒差と接戦が続いている。

「山田選手がマシンにも慣れてきて、すごく速いですね。明日も油断できないです。コンディションは予想の範囲内でしたが、明日も雨のようなので、どうしたものかな……という感じです(笑)」と、奴田原は着実にスピードを増してきた山田を意識したコメント。対する山田は「クルマのセットアップが決まって、1コーナー目から『行ける』という感覚がありました。総合2番手タイムは、無理してプッシュしていないですし、自分でもなぜこんなタイムが出せたのか分からないので、動画を見て分析して自分のものにしたいです」と、手応えを語っている。

JN-3クラス首位の山本悠太/立久井和子(トヨタGR86) / Hiroaki Ibuki


JN-3クラスは山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)がSS1でベストを獲り、2番手にはベテランの曽根崇仁/澤田耕一(トヨタGR86)が続く。午後のセクションは久万高原初挑戦となる貝原聖也/西﨑佳代子(トヨタGR86)が連続ベストを刻み、曽根をパスしてクラス2番手に浮上。首位の山本に8.6秒差で初日を終えた。3番手に曽根が入り、続く4番手には山口清司/丸山晃助(トヨタGR86)、5番手に長﨑雅志/大矢啓太(トヨタGR86)と、実力者のふたりが入っている。

2連勝中の山本は「午前中はタイヤも合って、マージンを稼ぐことができました。ただ、午後は思っていたよりもタイムが伸び悩みました。最初のループよりもうまく走れた感覚があったのですが、ライバルと比べてタイムがイマイチでした」と、慎重に振り返った。僅差の総合2番手につけた貝原は「ウエットのテストがあまりできなかったので、午前中は様子を見ながらの走りになりました。午後は雨になって、逆に路面がウエットで安定したので、いいフィーリングで走れたと思います」とコメント。曽根は「明日は路面が悪くなればなるほど、自分向きの道になると考えています。貝原選手が予想以上のスピードを見せていましたね」と、貝原のスピードを警戒する。

JN-4クラス首位の古川寛/吉田賢吾(スズキ・スイフトスポーツ) / Hiroaki Ibuki


JN-4クラスは、新城を制した内藤学武/大高徹也(スズキ・スイフトスポーツ)が、クラス3番手を走行中のSS2でギヤボックストラブルから、ステージフィニッシュ後にリタイアとなってしまった。SS1とSS2で連続ベストをマークした東隆弥/藤澤進(スズキ・スイフトスポーツ)が序盤首位を快走するが、午後に入ると古川寛/吉田賢吾(スズキ・スイフトスポーツ)がスパート。フルウエットをドライセッティングで走行した東がペースを落とした一方、SS3とSS4を獲り返した古川がSS4で東に8.7秒差をつけて逆転し、初日を首位で折り返した。クラス3番手には昨年の王者、西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)、クラス4番手に兼松由奈/槻島もも(スズキ・スイフトスポーツ)がつけている。

古川は「舗装の走り方が迷子になっていましたが、データ解析も踏まえてセットアップを変えたことで、今回はいい感じで走れています。まだひっくり返せないと思っていたのですが、明日も天候とタイヤに気を揉む展開になりそうです」と、笑顔を見せた。一方の東は「ドライタイヤで行ったのですが、周りがウエットだったので、ひっくり返されてしまいました。SS3は遜色ないタイムが出せたのですが、SS4は水溜りもあったので、ちょっと離されてしまいましたね」と、悔しさをのぞかせている。

JN-5クラス首位の大倉聡/豊田耕司(トヨタGRヤリスRS) / Jun Uruno


JN-5クラスは、ドライとウエットが混在する難しいコンディションとなったSS1でベストをマークした河本拓哉/有川大輔(マツダ・デミオ)が序盤ラリーをリード。その後、SS2からSS4まで連続ベストを刻んだ大倉聡/豊田耕司(トヨタGRヤリスRS)が、SS4で河本を1.3秒差ながらも上まわり、初日首位に立った。14.6秒差のクラス3番手に吉原將大/小藤桂一(トヨタ・ヤリスCVT)。コンディションとセットアップが噛み合わなかったと振り返った小川剛/梶山剛(トヨタ・ヤリス)は、54.1秒差のクラス4番手と大きく遅れている。

僅差の首位につけた大倉は「ドライセットで行ったSS1で、安全マージンを取りすぎました。サービスでウエットセットにしてもらったことで、その後は運良くキャッチアップできましたね。河本選手がすごく速くて差がほとんどないので、明日も頑張って走る必要がありそうです」と、河本のスピードを警戒。対する河本は「大倉選手はやっぱりすごいですね。僕自身は、思った以上に2ループ目もタイムが出せて良かったです。明日はフレッシュタイヤの目処がないので、このまま踏ん張る感じです」と、大倉のスピードに脱帽の様子だ。

JN-6クラス首位の天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクアGRスポーツ) / Hiroaki Ibuki


JN-6クラスは、開幕3連勝中の天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクアGRスポーツ)が、SS3以外の3ステージでベストタイムをたたき出し、2番手の海老原孝敬/蔭山恵(ホンダ・フィット・ハイブリッドRS)に12.1秒差をつけて初日トップに立った。ふたりから大きく遅れたクラス3番手には、難しいコンディション下で自身のペースを守った清水和夫/山本磨美(トヨタ・ヤリス・ハイブリッド)がつけている。

安定の首位にも天野は「バッテリーの使い方のいい勉強になりました。SS3はアタックをしかけたわりに、タイムが11秒もダウンしていて、海老原選手にも負けている。乗っている方としては20秒くらいアップした感覚だったのですが……。上りはバッテリーがなくなってしまってキツいのですが、下りであれば、回生ブレーキを使って充電されるので大きいですね」と、冷静に分析。“打倒天野”に奮闘する海老原は「午後はウエットに合わせてセッティングを変えたことで、すごくいい感じになりました。明日も雨に合わせたセッティングにして、天野選手に挑みたいですね」と、最終日に逆転を狙っている。

久万高原ラリー レグ1結果
1 ヘイキ・コバライネン/北川紗衣(シュコダ・ファビアR5)27:44.8
2 勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリス・ラリー2) +1:02.5
3 鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI) +1:12.3
4 奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス) +1:16.3
5 眞貝知志/安藤裕一(トヨタGRヤリスGR4ラリーDAT) +1:17.3
6 山田啓介/山本祐也(トヨタGRヤリス) +1:19.5
7 福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo) +1:21.6
8 新井敏弘/保井隆宏(スバルWRX STI) +1:35.3


13 山本悠太/立久井和子(トヨタGR86) +2:54.7
17 古川寛/吉田賢吾(スズキ・スイフトスポーツ) +3:16.5
24 大倉聡/豊田耕司(トヨタGRヤリスRS) +4:09.5
30 天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクアGRスポーツ) +5:37.7

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