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全日本ラリー高山:シュコダ・ファビアR5のヘイキ・コバライネン/北川紗衣が優勝、今季の舗装戦を全制覇

©Jun Uruno / JN-1クラス首位を走るヘイキ・コバライネン/北川紗衣(シュコダ・ファビアR5)

2023年シーズン全日本ラリー選手権第8戦「第50回M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2023 supported by KYB」が、10月13日(金)~15日(日)にかけて、岐阜県高山市を拠点に開催。トップカテゴリーのJN-1クラスはシュコダ・ファビアR5のヘイキ・コバライネン/北川紗衣が勝利を飾った。2位にはトヨタGRヤリスJP4-ラリー2の勝田範彦/木村裕介、3位にはシュコダ・ファビア・ラリー2 Evoの福永修/齊田美早子が入っている。

開催50回目を記念してセレモニアルスタートまで高山市街地を通過 / Naoki Kobayashi

北海道を舞台とするグラベル2戦を経て、全日本ラリー選手権はシーズン最終戦、ターマックのハイランドを迎えた。サービスパークは岐阜県高山市の「高山市位山交流広場」に置かれ、ワイドな中高速からツイスティなセクションまで、バラエティに富んだステージ構成が特徴となる。10月半ばの高山は天候が不安定であり、日曜日には雨の予報も出ている。

セレモニアルスタートの開場となったアルコピアには観戦エリアも設定された / Hiroaki Ibuki

JN-1クラスのコバライネンをはじめ、多くのクラスでタイトルが確定。最終戦高山ではJN-4クラスのドライバーとコ・ドライバー、JN-5クラスのコ・ドライバーのチャンピオンが決まる。

■レグ1
ラリー初日の10月14日は「牛牧下り(6.20km)」「あたがす(9.54km)」「アルコピア-無数河(6.08km)」の3SSを、サービスを挟んでループする6SS、43.64km。今大会では第50回目の開催を記念して、高山駅前や古い街並みの残る高山市内をリエゾンとして走行し、選手たちがラリーの開催をPRした。沿道にはラリーファンだけでなく、朝市に集まった人たちも見物に訪れ、そこかしこでラリーカーに手を振る姿が見られた。この日のコンディションはドライ。選手たちはこ午前9時20分に旧「ひだ舟山スノーリゾートアルコピア」でのセレモニアルスタートをへて、6.20kmを走るSS1へと向かった。

SS1でベストタイムを刻んだのは、グラベル2戦で思うように戦えずフラストレーションを溜めていたコバライネン。1.8秒差の2番手に勝田、8.9秒差の3番手に福永、12.5秒差の4番手には今回がニューマシンでの初ターマックを迎えた新井敏弘/保井隆宏(スバルWRX S4)、12.9秒差の5番手に丹後以来の参戦となる新井大輝/金岡基成(プジョー208ラリー4)が続く。

このまま順調にリードを広げるかと思われていたコバライネンだったが、続くSS2で燃料ポンプにトラブルが発生し、エンジンのパワーダウンに見舞われてしまう。このステージだけでベストの勝田から11.5秒も遅れたことで、9.7秒差のクラス2番手にポジションを落とすことになった。「燃圧系のトラブルだと思う。エンジンがカットオフして、パワーが出なくなってしまった……」とコバライネンは肩を落とした。

SS3は、エンジンが復活したコバライネンがベストタイムをマーク。午前中のセクションを終えて、首位の勝田とコバライネンの差は7.3秒となっている。3番手につける福永はハンドブレーキにトラブルを抱えたうえ、SS3ではオーバーシュートも喫しており、25.1秒差のクラス3番手と、優勝争いから一歩後退した。

サービスでトラブルへの応急処置を施したコバライネンは、午後の3ステージで3連続ベストをたたき出した。特にSS6では6.08kmのステージで勝田に6.2秒差をつける圧巻のタイムを刻み、SS1以来となる首位に浮上した。「燃料ポンプのトラブルに関しては、多めに燃料を搭載することで回避することができた」と、コバライネンはステージフィニッシュ後に笑顔を見せた。

45.5秒の3番手は、午後もコバライネンと勝田のペースから一歩遅れた福永。その後方では、新井敏弘をSS4でパスした新井大輝がクラス4番手に順位を上げた。ただ、ふたりの差は1.7秒と、最終日も僅差のバトルが続きそうだ。

JN-1クラス首位のヘイキ・コバライネン / Naoki Kobayashi

2番手の勝田に5.2秒のアドバンテージを握るコバライネンだが、「首位で初日を終えられたけど、ノリさんもクルマもかなり進化していると感じた。テストをしたことで、かなりバランスが良くなったんだと思う。明日は6本タイヤが残っているし、雨が降ったとしても問題ないはずだ」と、勝田のスピードに警戒感を隠さない。

対する勝田は「午後はプッシュしましたが、差を縮められて、アドバンテージがどんどん削られてしまいましたね。極めつけがSS6で、結構な差をつけられてしまいました。フィーリングは悪くないし、手応えは感じているんですが、もっと速くなる必要がありますね。老体に鞭を打ちますよ(笑)」と、悔しさをのぞかせている。

JN-2クラス首位の奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス) / Hiroaki Ibuki

JN-2クラスは、奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス)が全ステージでベストタイムを奪取。4つのステージにおいては、総合でもトップ3に入っており、クラス2番手につける横尾芳則/穴井謙志郎(トヨタGRヤリス)に46.5秒の大差をつけて首位を独走。3番手に川名賢/前川冨哉(トヨタGRヤリス)、4番手に小泉敏志/加勢直毅(トヨタGRヤリス)、5番手に三枝聖弥/船木一祥(スバルWRX STI)が続く。

JN-1に互するタイムで駆け抜けた奴田原は「何事もなく、順調に走ることができました。コースにはインカットした砂利が出ていましたが、荒れているとまではいきませんでしたね。明日は雨の予報が出ていますし、気をつけて走る必要がありそうです」と、慎重にコメント。2番手の横尾は「前を走る奴田原選手を追いかけてペースアップしましたが、さらに奴田原選手もペース上げてきたので、差は縮まりませんでした(笑)。それでも気持ちよく走ることができましたし、いい1日になりました」と、笑顔を見せている。

JN-3クラス首位の長﨑雅志/大矢啓太(トヨタGR86) / Jun Uruno

JN-3クラスは、今季ここまで勝利のなかった長﨑雅志/大矢啓太(トヨタGR86)がSS1でトップに立つと、SS4まで連続ベストタイムを刻み、2番手の山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)に7.2秒差をつけて初日を首位で折り返した。以下、17.4秒差の3番手に山口清司/澤田耕一(トヨタGR86)、18.2秒差の4番手に曽根崇仁/石田一輝(トヨタGR86)、20.6秒差の5番手に貝原聖也/西﨑佳代子(トヨタGR86)というオーダー。3番手の山口から5番手の貝原までは3.2秒差と、接近戦が続いている。

得意のターマックで快走を見せた長﨑だが「午前中はいい走りができたのですが、午後は巻き返されましたね。SSごとに1秒を争ういいバトルになりました。トータルで7秒くらいのアドバンテージだと思いますが、明日の天気を考えると、すぐにひっくり返されるタイム差なので、この差はないものと考えています」と、2番手の王者山本を警戒する。山本は「午後に長﨑選手との差は詰まってきたんですが、なかなかベストタイムを獲得できないのは苦しいですね。クルマの調子は悪くないので、明日の雨でどうなるか……」と、最終日に逆転を狙う。

JN-4クラス首位の内藤学武/大高徹也(スズキ・スイフトスポーツ) / Jun Uruno

JN-4クラスは、ポイントリーダーの西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)と内藤学武/大高徹也(スズキ・スイフトスポーツ)がタイトル獲得の可能性を残しており、今回のハイランドですべてが決する。「勝てば逆転できるので、それだけを考えて走ります」と語った内藤は、SS1こそ西川の先行を許したものの、SS2では6.6秒差をつけるベストを奪取。その後、SS4は西川、SS5とSS6で内藤がベストを刻む、シーソーゲームを展開。終わってみれば、内藤が西川に8.9秒差をつけて初日を折り返した。トップのふたりから大きく離れた3番手には、奥村大地/山本祐也(スズキ・スイフトスポーツ)がつけている。

首位で初日を走り切った内藤は「勝った負けたの展開になりましたね。結果としてリードはしていますが、まだタイム差的にも油断できない状況です。とりあえず、想定どおりに土曜日を終えられて良かったです」と、安堵の表情を見せた。対する西川は「あたがす(SS2/SS5)で大きく負けてしまったのが響きましたね。コースの特徴なのか、登りだからか、タイム差が大きくなってしまいました」と、首をひねる。

JN-5クラス首位の松倉拓郎/山田真記子(トヨタ・ヤリス) / Jun Uruno

JN-5クラスは、前戦ラリー北海道終了時点で、松倉拓郎(マツダ・デミオ)のタイトルが確定。自身初の全日本チャンピオンに続き、今回の最終戦でコ・ドライバーを務める山田真記子の王座を狙う。ラリーは、今回はトヨタ・ヤリスを駆る松倉と大倉聡/豊田耕司(トヨタGRヤリスRS)がベストタイムを獲り合う展開に。6本のステージを走行し、首位松倉と2番手につける大倉の差はわずか0.5秒だ。15.4秒差の3番手に河本拓哉/有川大輔(マツダ・デミオ)、36.3秒差の4番手にベテランの小川剛/藤田めぐみ(トヨタ・ヤリス)が続く。

大倉との接戦を繰り広げた松倉は「シビれる展開ですね。今日はコンディションの良いコーナーから悪いコーナーまでたくさんあって、最後は自分の力を振り絞り、コンマ差で勝った感じです。0.5秒差ですし、明日はコンディションがガラリと変わるので、どうなるかですね」と、コメント。僅差で追う大倉は「フルプッシュしたんですけど、1秒勝ったり負けたりの展開になりましたね。明日は雨が降るならば、土砂降りくらいになってほしいんですが……。今日に関しては、ここまで返せたのは良かったです」と、真剣な表情で振り返った。

JN-6クラスの天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア) / Hiroaki Ibuki

JN-6クラスは、開幕から7連勝中の天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア)が、今回も全SSでベストタイムを並べ、JN-5クラスに割って入るスピードを披露。53.2秒差の2番手に海老原孝敬/河西晴雄(ホンダ・フィット)、1分38秒3秒差の3番手に清水和夫/山本磨美(トヨタ・ヤリス)が続いた。

首位を独走する天野だが「今日は少しずつタイムを上げられましたし、クルマも乗りやすくなったので、良かったです。ただ、上りはやっぱりキツイですね。下りメインの『牛牧下り』は(JN-5クラスの)松倉選手や大倉選手についていけるんですが、『あたがす』は20秒以上離れてしまう」と、ターゲットはJN-5クラスのトップ争いに置いている。2番手の海老原は「僕自身は順当にタイムアップしたんですが、天野選手に行かれてしまった感じです。感触は悪くなかったんですが、やっぱり手強いですね」と、天野のスピードに脱帽の様子だ。

ハイランドマスターズ レグ1結果
1 ヘイキ・コバライネン/北川紗衣(シュコダ・ファビアR5) 30:47.1
2 勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリスJP-4ラリー2) +5.2
3 福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo) +45.5
4 奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス) +45.6
5 新井大輝/金岡基成(プジョー208ラリー4) +1:19.1
6 新井敏弘/保井隆宏(スバルWRX S4) +1:20.8
7 横尾芳則/穴井謙志郎(トヨタGRヤリス) +1:32.1
8 眞貝知志/安藤裕一(トヨタGRヤリスGR4ラリーDAT) +1:44.4


16 長﨑雅志/大矢啓太(トヨタGR86) +2:58.3
17 内藤学武/大高徹也(スズキ・スイフトスポーツ) +3:04.7
28 松倉拓郎/山田真記子(トヨタ・ヤリス) +4:38.1
33 天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア) +5:37.4

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