2020年のWRC開幕戦ラリーモンテカルロに姿を現した各ワークスチームのマシンをチェックするシリーズ。第1回目はトヨタ・ヤリスWRC。
まずは外装から細かくチェックしていく。
外装
外観上の違いはスポンサーロゴがいくつか変更になった程度。エアロパーツの形状に変更はない。フロントバンパー前面まで回り込む左右のカナードは2枚ずつ装備され、走行風はダウンフォースを生み出しつつ左右のフロントフェンダーへと導かれる。バンパー部分の遮風板はSS走行時には取り外される。
ヤリスWRCの全長は3ワークスのなかで最も短い4085mm。ステアリングの位置から、ドライバーの着座位置がいかに車両の後方寄りになっているかが良く分かる。
登場当初は大きな話題を呼んだヤリスWRCのリヤビュー。大型ウイングもさることながら、リヤフェンダー/バンパー後端の造形は空力への力の入れようを示すものだ。ディフューザー後端は高く持ち上げられ、両端を除いたバーチカルフィンは3車のうち最も少ない4枚となっている。
いくつものエアロデバイスが取り付けられたフロントセクション。ボンネット上に設けられたふたつの排熱口は車両のセンター寄りに位置している。排熱口を左右に取り付け、ボディサイドに流すようにしているヒュンダイ、Mスポーツとは異なる考え方のようだ。
現在では3車ともが採用するタイプのミラーに先鞭をつけたのはヤリスWRCだ。ステーに整流板の効果を持たせ、ボディサイドの気流を導く。白い線が入っているのはカッレ・ロバンペラのマシン。セバスチャン・オジエは黒のまま、エルフィン・エバンスは赤い線が入っている。
複雑な形状をもつフロントフェンダー。上部はエンジンルーム内から、下部はホイールアーチ内からのエア抜きを行う。Aピラーにとりつけられたウイングレットが下部に負圧を作り出すことで、熱気を引き抜く効果を高めている。
ヤリスWRCの象徴とも言える大型リヤウイング。デザインは昨年の第11戦トルコで投入したもの(詳細はこちらのニュースを参照)と同じで、大型のバーチカルフィンと、短くなった左右のウイングレットが特徴だ。
メインエレメントおよびウイングレットは後端がガーニーフラップ状になっており、ダウンフォースの増加を狙っていることが分かる。
下から覗くと、左右のウイングレット下面は後部に向かってはね上げられる構造となっており、気流のスピードを上げる狙いがあるものと思われる。
リヤフェンダー後端のスリットは写真の14枚パターンのほか、数を減らしたものもホモロゲートされている。コンディションによってはカバーでまったく塞いでしまうことも。カーナンバー右のマークはスタッドタイヤの装着/未装着を表すもの。
リヤフェンダーの造形はボディから垂直に張り出したもの。リヤフェンダーの前面で湾曲したボディサイドに沿って流れるエアをはね上げ、ウイングレットに当てている。
ボンネット上に6つ、バンパーの左右にひとつずつ搭載されるランプはナイトステージ用。通常のヘッドライト同様PIAA製を使用している。軽量化のためカバーはついておらず、フレームとランプがむき出し状態。
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